活動報告

国会質疑

【衆院・内閣委】性的少数者への理解促進 子ども、若者の孤立防げ

国重とおるツイッターより

『理解増進法案』と『差別禁止法案』とは、内容が違う。

いま議員間で協議されている、性的指向・性自認に関する『理解増進法案』は、「知識の着実な普及」や「相談体制の整備」「調査研究の推進」などを定めるものであって、個別の行為を「差別」として禁止する具体的な法規範性はない。

 

2023年4月29日付公明新聞より転載

28日の衆院内閣委員会で公明党の国重徹氏は、各種調査からLGBTなど性的マイノリティー(少数者)の人は孤独・孤立を感じやすい傾向があると述べ、「孤独・孤立対策、理解促進の取り組みを一層進めていく必要がある」と訴えた。

これに対し小倉将信共生社会担当相は、年末年始に試行した孤独・孤立に関わる相談ダイヤル「#9999」で性別の違和や同性愛に関する相談を受け付けたことに触れ、「引き続き、悩む人が声を上げやすい環境整備に取り組む」と述べた。

また、国重氏は性的少数者のうち、特に子どもや若者が自殺念慮を抱きやすいと指摘し、対策の必要性を主張した。

外部リンク>>衆院・内閣委員会 2023年4月28日

内閣委員会 会議録 第17号 令和5年4月28日(金曜日)

大西委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹です。

内閣委員会で審議をし、昨日の衆議院本会議で可決をされました孤独・孤立対策推進法案、この法案の基本理念の中に、望まない孤独、孤立は社会全体の課題であって、社会のあらゆる分野で推進を図っていくことが重要なんだというようなことが明確にうたわれております。

そして、孤独、孤立を感じる人は様々ですけれども、中でも性的マイノリティーの方々が孤独、孤立に陥りやすいことは各種の調査で明らかになっております。自殺総合対策大綱でも、性的マイノリティーは自殺念慮の割合等が高いことが指摘をされておりますが、とりわけ、子供や若者の状況はより深刻であります。

認定NPO法人ReBitの調査によりますと、性的マイノリティーの十代の約半数が、この一年の間に自殺を考えたと回答しています。また、孤独感がしばしばある、常にあると答えた割合は十代で約三割。これは、内閣府が昨年調査をした孤独・孤立の実態把握に関する全国調査の同世代の結果と比べて、何と八・六倍も高い数値になっています。

さらに、性的マイノリティーの子供や若者は、マジョリティーの子供や若者に比べて、不登校率、これが中学校で五倍以上、高校生で十倍以上高いという、そういう結果も出ております。

また、孤独、孤立を抱えたときにまず相談するのは誰かということで、家族という人が一般的には多い一方で、性的マイノリティーの若者の場合、九割以上が、自分のセクシュアリティーについて保護者に安心して話せない、このように回答しています。また、約七割は、誰かに相談したいと思いながらも、自分の性自認から四年余り誰にも打ち明けられなかったと答えています。非常に深刻な状況です。

こうした子供たちを始めとする性的マイノリティーが孤独、孤立に陥らないように、一人じゃないんだ、ありのままの自分でいいんだと思える社会にしていく。そのためには、性的マイノリティーに関する理解促進の取組をより一層進めていくことが不可欠になります。

そこで、小倉大臣、改めて、性的マイノリティーの孤独・孤立対策の強化、また、そのための性的マイノリティーに関する理解促進に向けた取組の強化について、見解をお伺いします。

〔委員長退席、神田(憲)委員長代理着席〕

小倉国務大臣 お答えをいたします。

私も当事者の方々に実際にお会いいたしまして、御意見を伺いますと、委員御指摘のとおり、家族に理解されず誰にも相談できない、心が許せる人間関係がつくれず孤独といった事例ですとか、あるいは、性的マイノリティーの方は自殺におけるハイリスク層であるといった切実な声がございました。

まず私が担当いたします孤独・孤立対策におきましては、一つの番号からNPOなど関係団体が連携をして相談を受け付ける相談窓口、孤独・孤立相談ダイヤル、シャープ九九九九の試行を行ってございます。

これまでの試行においては、利用者が選択できる分野の一つに、「性別の違和や同性愛に関して相談したい方」を設けて試行を行い、孤独、孤立に悩む方が声を上げやすい環境整備に取り組んでおりますので、引き続き、こうした環境整備に取り組んでまいりたいと思っております。

また、理解増進の方でございます。

政府においては、性的指向、性自認について、職場や学校等を始めとして社会での理解増進に向けた啓発活動の充実、適切な相談対応や人権救済等を行っていく必要があると考えており、共生社会担当大臣といたしましても、関係府省が連携協力することにより、政府全体としてこれを取組として更に進めていけるように努力をしてまいりたいと考えております。

國重委員 今御答弁いただいたように、政府全体としてしっかり取組を進めていっていただきたいと思います。

そして、理解促進のための取組を一層進めていく、そのために今、議員間で、これに関する議員立法、性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案、いわゆる理解増進法案について議論が進められております。

仮にこの法案が成立したとするならば、今は各府省庁ばらばらで進められているこの取組というのが、内閣府の強力なリーダーシップの下に基本計画が定められて、総合的、計画的に、より一層この取組が力強く進んでいくことになります。国や自治体、そして事業者や学校にも、性的指向、性自認の多様性に関する知識の着実な普及また啓発などを行う努力義務、これが課されることになります。

この法案によって性的マイノリティーの方々が少しでも生きやすい社会を実現していくのはもちろんですけれども、この法案は決して性的マイノリティーの方々だけのものじゃないんですね。性的マイノリティーも、そのほかの方々も、共に生きやすい社会を実現していくということがこの法案の目指すべきものであります。

しかし、中には、この法案が成立することによって、性的マイノリティーの権利だけが優先されて、ほかの人たちの権利が脅かされてしまうんじゃないか、具体的には、自分は女だと主張するだけで、体が男性であったとしても女性スペースに入れるようになってしまう、それによって女性の権利が著しく害されるようになるんじゃないかというような不安の声が、例えばSNSとかそういうところで散見されます。

今日は、質問時間が限られておりますので、懸念の声が大きくて、身体的露出がされているお風呂について確認をさせていただきます。これまでの内閣委員会でも一部取り上げられておりますけれども、ちょっとこの法案との関係も含めて確認をさせていただきたいと思います。

公衆浴場、いわゆる銭湯や旅館等の宿泊施設の共同浴室について、現在それぞれ衛生等管理要領が定められておりまして、その中で男女別の定めがされています。これらは風紀の観点から混浴禁止を定めていることから、男女の別は身体的な特徴の性をもって判断することとされていると、事前に政府の方からも説明を受けております。

そこで、念のため確認をさせていただきたいんですけれども、これらの共同浴場における男女の判断基準はトランスジェンダーにも当てはまる、つまり、トランスジェンダーの場合も性自認ではなくて身体的特徴に基づいて判断することになると理解をしていますけれども、これで間違いないかどうか、答弁を求めます。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

公衆浴場や宿泊施設の共同浴場につきましては、厚生労働省が管理要領を定めております。具体的には、公衆浴場における衛生等管理要領や旅館業における衛生等管理要領になります。この中で、おおむね七歳以上の男女を混浴させないことなどと定めております。

この要領で言う男女は、風紀の観点から混浴禁止を定めている趣旨から、トランスジェンダーの方も含め、身体的な特徴の性をもって判断するものであり、公衆浴場等の営業者は、体は男性、心は女性の方が女湯に入らないようにする、こういう必要があると考えております。

実際の適用につきましては、都道府県等が条例を定めております。この条例によって、基本的にこの要領と同じような形で男女の浴室を区別し、混浴を禁止しているものと承知しております。

國重委員 トランスジェンダーの方であっても、心ではなくて身体的特徴で判断するというようなことだったと思います。

では、共同浴場において、先ほど答弁いただいたとおり、風紀の観点から心の性ではなくて身体的特徴をもって男女を区別する、このような現在行われている取扱いというのは憲法十四条に照らしても差別に当たらないと、念のため確認しますが、差別に当たらないということで間違いないかどうか、答弁を求めます。

伊佐副大臣 憲法十四条、いわゆる法の下の平等でありますが、この原則が規定されております。この趣旨としては、合理的な理由なしに区別をすることを禁止するという趣旨でございます。

つまり、合理的と認められる範囲内の区別を否定するものではないというふうに理解をしておりまして、先ほど委員御指摘の、公衆浴場における入浴者については男女を身体的な特徴の性をもって判断するというこの取扱いは、風紀の観点から合理的な区別であるというふうに考えられております。憲法第十四条に照らしても差別に当たらないものというふうに考えております。

國重委員 合理的区別であって、差別に当たらないということでした。政府として要領を出しているわけですから、憲法違反に当たるものを出すわけもないですし、これは合理的区別として、憲法十四条の差別には当たらないというような答弁をいただきました。

ただ、今議員間で協議をされている理解増進法ができることによって、体が男性のままでも女湯に入れるようになってしまう、そのように社会のルールが変わってしまうんじゃないか、男性器のある人が女湯に入るのを拒むと差別になり、許されなくなるんじゃないか、こういった懸念の声があります。

しかし、そもそも、今現在議論、協議をしている理解増進法案というのは、調査研究とか、また、知識の着実な普及を図るとか、そういった理解を促すための取組を進めるための法案なんですね。

確かに、差別は許されないという文言はあるんですけれども、これはあくまで、全ての人々がお互いに人権や尊厳を大切にしながら生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現を目指していくという立法動機であるところの、立法者の認識を表現したものにすぎません。これに具体的な法規範性があるわけではありません。これは議員立法ですから、衆議院の法制局とも様々やり取りをしていますけれども、法制局としても当然そうだというようなことで、これは認識が共有されているものであります。

ですから、この理解増進法案ができることによって、共同浴場に関するルールを変えないといけないというふうになったり、また、体が男性である人が突然女湯に入ってくるような事態、こういうものは生じません。

更に言えば、先ほど確認しましたとおり、共同浴場において身体的特徴をもって男女を区別することが差別には当たらない、このことからすると、まずは私は理解増進法を成立させるべきだと思っていますけれども、一歩これが進んで、仮に法規範性のあるいわゆる差別禁止法案が成立したとしても、そのような身体的特徴をもって共同浴場の区別をすることについては差別に当たらないことに変わりはない、そのように考えます。要は、憲法十四条の差別に当たらないんだから、差別禁止法ができたとしても、この差別禁止法で言う差別には当たらない。

法律の文言というのは厳密に作られることになっていまして、これは例えば「実務立法演習」という中にも様々書かれてありますけれども、法律の文言が同じであれば同一の意味内容であるということが法の大原則になります。

そういった観点からしますと、ちょっと繰り返しになりますけれども、仮に法規範性のあるいわゆる差別禁止法案が成立したとしても、そのような身体的特徴をもって共同浴場の区別をすることについて、差別に当たらないことに変わりはない、そのように考えますが、これに関する政府の見解をお伺いします。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

御指摘のいわゆる差別禁止法案が差別を禁止する趣旨の法案だとすれば、この法案によって差別に該当しないことは禁止されないものと考えております。

國重委員 一応、先ほどの「実務立法演習」の中の法律の文言のルールというか、それを少しここで御紹介させていただきたいと思いますけれども、法律の立案の世界では、前例踏襲主義といって、前例となる法令用語や法令表現を踏まえ、それに従って立案するということが非常に大事です、この点は厳密かつ厳格にそのようにしなければなりません、言葉を変え、自己流の勝手な用語や表現を絶対に使ってはならないのです、その用語や表現が法律ごとに異なっていると、どうしてもその解釈が分かれてしまって定まらず、したがって法律の運用ができないということになりますと。

確かに、憲法十四条の差別は、これは国が名宛て人になりまして、公権力が名宛て人になって、法律というのはまた国民が名宛て人にもなりますけれども、ただ、差別というこの意味内容、一緒であれば憲法十四条の差別に当たらない、差別禁止法ができたとしてもこれまでの取扱いは差別に当たらないというような論理的帰結になるわけであります。

その上で、仮にトランスジェンダー女性であると偽って女湯に入るようなわいせつ目的の男性がいるとすれば、それはただの犯罪者です。建造物侵入罪、また公然わいせつ罪に当たり得ますし、また、施設管理者が出ていけと言って、出ていかなければ、不退去罪にもなります。

一方で、私がトランスジェンダーの方たちからお話を伺っている限り、私もいろいろな団体とかまた個人でお話をお伺いした限り、皆さん、例えば心は女性で体が男性の方とか、そういう方というのは、そもそも銭湯とか温泉とかの女湯に入ろうと思っていないんです。自分自身が誰よりも自分の体に対してネガティブな感情を持っています。だから、それを他人に見せるなんて苦痛で耐えられないというような悲痛な声、切実な声というのが、私が聞いている限り、世の中にはいろいろな人がいるかもしれませんけれども、私が聞いている中ではこれが全てになります。

今回の法案で目指しているのは、先ほども申し上げましたとおり、共生の社会の実現です。その中には、性的マイノリティーの方々だけじゃなくて、マジョリティーの方も当然含まれます。私は、共生社会の実現のためには、様々な社会のルール、また取組を検討するに当たって、まさに多様な立場の人たちの声を聞いて、複眼的に、バランスよく進めていくということが非常に重要であって、そのようにして初めて真の共生社会が実現できるんだというふうに考えています。

このことは性的指向、性自認の分野も同じであって、これまで生きづらい思いをして社会の中でもがき苦しんできた性的マイノリティーの方々の声を聞くことはもちろんのこと、それ以外の方々の声も聞いて、混乱がなくお互いの人権を尊重し合えるように取り組んでいくことが極めて重要なことだと思っております。

小倉大臣に、これについての見解と、大臣の目指す共生社会とは何なのか、その実現のためには何が重要と考えるかについてお伺いしたいと思います。

小倉国務大臣 國重委員のお話を伺っておりまして、私もやはり、こうした議論において、当事者以外の方々の意見もしっかり聞いて、丁寧に議論を進めながら、お互いの理解の増進に努めた上で共生社会の実現を目指すべき、そういう御意見に全く同感でございます。

その上で、政府といたしましても、多様性が尊重され、性的マイノリティーの方もそれ以外の方も含め、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現を目指してまいりたいと思っております。

共生社会は、まさしく全ての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利、あるいは人間が人間らしく生きる権利で、生まれながらに持つ権利が尊重される社会であると考えております。

こうした共生社会の実現に向けまして、引き続き、性的マイノリティーの方もそれ以外の方も含めた様々な国民の声をしっかり受け止め、政府全体としても取組を進めてまいりたいと考えています。

國重委員 あらゆる人がひとしく尊重されて、ありのままに生きられる社会、その実現、簡単な道のりではないと思いますけれども、私も最大限それに向けて努力をしていくことを申し上げまして、本日の質問を終わります。

ありがとうございました。

 
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