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フリーランス 適正取引へ法整備めざす【国重徹・党内閣部会長】

2022年11月3日(木)付け公明新聞より転載

フリーランスなどの働き方を巡り、政府は「取引適正化のための法制度について検討し、早期に国会に提出する」方針を6月に閣議決定し、9月には法制度の方向性をまとめた。

新しく作る予定の法律では、発注事業者がフリーランスに業務委託する場合、委託内容や報酬額などを書面やメールなどで示すよう義務付ける。受注側から納品物などの提供を受けた日から60日以内に報酬を支払わなければならない。

また、発注側の禁止行為として、フリーランス側に責められるべき理由がなく納品物の受領を拒否したり、報酬を減額することなどを盛り込む。

こうした政府の動きは、公明党の提言を受けたものだ。公明党は2017年3月の政府への提言で、フリーランスなどの働き方を巡る有識者会議を設置して法的保護の必要性を中長期的課題として検討するよう要請。21年10月の衆院選や今年7月の参院選の公約に掲げ、国会質問などでフリーランスの取引適正化に向けた法整備を訴えている。

党内閣部会長の国重徹衆院議員は、「取引の適正化を通じてフリーランスの人が安心して働ける環境を作るため、必要な法整備の早期実現をめざし取り組みたい」と語る。

 

フリーランスが安心できる“働き方”に

会社などの組織に属さず、仕事ごとに契約を交わす「フリーランス」として働く人は近年、増加傾向にあり、462万人に上るが、報酬の支払いが遅れるといったトラブルを経験する人も少なくない。フリーランスの人が安心して働ける環境づくりへ、公明党の提言も受け、政府は、取引の適正化に向けた法整備をめざしている。

■報酬遅延し生活苦しく都内で一人暮らしをする映像クリエーターの森口正紀さん(34、仮名)は昨年、知人から映像製作会社を紹介された。経営者から報酬の額や支払日などの説明を受け、“口約束”で動画制作などを請け負った。契約書がないことは少し不安だったが、「経験を積みたい」という思いが勝り、引き受けた。

しかし、最初の月の業務を終えて迎えた報酬支払い日、口座には何も振り込まれなかった。催促の結果、入金されたのは10日後だった。以降、支払いが2カ月近く遅れる月も出てきた。もともと暮らしに余裕がない森口さんは、家賃や光熱費を払えなくなり、都外の実家に取り立ての電話が鳴るまでに至ったことから、同社との契約を解消した。

幸い、未払い分はその後、支払われたものの、森口さんは「初めての経験だった。やりたい仕事に打ち込めるフリーランスに魅力を感じているが、取引先の対応次第で経済的に不安定になるリスクを感じた」と語る。

■催促無視され、未払い続く例も

こうしたトラブルは、業種を越えて起きている。あるウェブデザイナーは、書面なしの契約で、企業のホームページをデザインしたが、約50万円の報酬が未払いのまま。催促の電話も無視され続け、弁護士に対応を頼まざるを得なくなった。

また、あるシステムエンジニアは、ウェブサイト制作を請け負い、8割程度完成したところで突然、発注側から「もう、サイトはいらなくなった」と一方的に契約取り消しを通告された。

■4割がトラブル経験(政府調査)

内閣官房が2020年5月に公表した実態調査の結果によると、取引先とのトラブルを経験したフリーランスの人は全体の約4割に上る。

具体的には、「発注の時点で報酬や業務の内容などが明示されていなかった」「報酬の支払いが遅れた」「期日に支払われなかった」といった事案が多い【表参照】。

■“口約束”の横行 背景に

トラブルの背景として、まず挙げられるのが、契約書がない“口約束”が横行している現状だ。調査結果では、トラブルを経験した人のうち、契約書面などを受け取っていない人が約3割を占め、受け取っても取引条件の明記が不十分と回答した人も含めると、6割を超える。

トラブルに直面したフリーランスの人のうち、発注側と直接交渉した人が5割いる一方、交渉せずに受け入れた人も2割いる。

フリーランスの支援活動などを行っている一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の平田麻莉代表理事は、「企業に雇われた労働者のように法律で守られておらず、相対的に弱い立場に置かれがちなフリーランスが、口約束や報酬未払いが横行し“泣き寝入り”を迫られる状況を改善するためのルールが必要だ」と話す。

 
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