活動報告

国会質疑

適正な運賃収受を促せ 物流の多重下請構造是正へ<衆院国交委で国重氏>

2023年11月11日付公明新聞より転載

10日の衆院国土交通委員会で公明党の国重徹氏は、物流業界が抱える多重下請構造に言及し、下請け運送事業者の適性な運賃収受に向けた取組を訴えた。

国重氏は、元請よりもさらに下請けの実運送事業者は、適正な運賃の目安とされる「標準的な運賃」を大きく下回る運賃を提示されるケースがあると指摘。「末端の運送事業者に運賃がどのくらい支払われ、どこで中抜きされているかを外部的に明らかにしていけば(中抜きが)抑制されていく」と力説した。その手段として下請状況を明らかにする「実運送体制管理簿」に触れ、「それぞれの運賃や下請け手数料を記載することも一つの案だ」と指摘した。

国交省側は、指摘を踏まえ、多重下請構造の是正に向けた制度を検討していく考えを示した。

外部リンク>>衆議院国土交通委員会質疑

国重氏
建設業の下請け、孫請けまで賃金が行き渡る制度に
(国交相)強く促す新たな仕組み検討する

社会のインフラ整備を担う建設業では、元請けから下請け(1次下請け)、孫請け(2次下請け)へと次々に仕事が発注される「多重下請け構造」があり、下請け契約が繰り返される中、施工に携わる人に支払われる労務費が削られる問題が起きています。

社会のインフラ整備を担う建設業では、元請けから下請け(1次下請け)、孫請け(2次下請け)へと次々に仕事が発注される「多重下請け構造」があり、下請け契約が繰り返される中、施工に携わる人に支払われる労務費が削られる問題が起きています。

衆院予算委員会で国重徹氏は、この問題を取り上げ、公共工事の設計労務単価を引き上げるとともに、「現場まで賃金が行き渡る仕組みを口頭で働き掛けるだけでなく、制度として作って進めてほしい」と主張。斉藤鉄夫国土交通相(公明党)から「国が適正な労務費の目安を示し、個々の工事で、これに沿った下請け契約が行われるよう強く促す新たな仕組みを検討したい」との答弁を引き出しました。

このテーマを参院予算委員会で伊藤孝江氏は“深掘り”。新たな仕組みが民間の発注する工事も対象となることを確認した上で、実効性の担保をただしました。斉藤国交相は「個々の請負契約に適切な労務費が計上されているか調査し、必要な是正措置を講じられるよう実施体制の整備を進める」と答えました。

 

 

第2号 令和5年11月10日(金曜日)国土交通委員会 会議録

長坂委員長 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹です。

私、初めて国土交通委員会に所属させていただきます。どうかよろしくお願いします。

物流の二〇二四年問題、大臣も所信的発言でおっしゃっていたとおり、まさに喫緊の課題です。今日は、この物流業界の課題の中でも、特に多重下請構造の問題、ここに焦点を絞って、二十分という限られた時間でありますので、質問をさせていただきたいと思います。

現場のドライバーが適正な賃金を受け取れていない、その根本的な要因の一つが多重下請構造です。もちろん、運送業界において一定の下請が必要なことは私理解をしております。全てが悪いものとは思いません。とはいえ、余りにも下請構造が多重化して、多層化して、それぞれの下請が手数料として中抜きをしていく、その結果、実運送事業者が適正な運賃を受け取れない、現場のドライバーに適正な賃金が行き渡らない、こういった状況を是正しないと運送業の未来はありません。

そこで、斉藤大臣、政府としても、多重下請構造の是正に向けて、今様々手を打たれようとしていること、承知をしておりますけれども、今後具体的にどのように施策を講じていくつもりなのか、これは確認の意味ですけれども、答弁を求めます。

斉藤国務大臣 多重下請構造の是正に向けては、政策パッケージ等に基づきまして、緊急性の高い取組から速やかに実行しております。

まず、年内を目途に、トラック運送事業者が参考とすべき標準的な運賃を見直す中で、下請に発注する際の手数料を荷主に求めることとし、その標準的な水準を示すべく検討を進めております。

さらに、今月と来月の二か月間を集中監視月間として、トラックGメンが厚生労働省の労働基準部局や中小企業庁などの関係省庁と連携して、運賃・料金の不当な据置き等を行う悪質な荷主に対し、要請、勧告、公表を含む指導を強化することとしております。

こうした取組に加えて、実運送体制管理簿による運送体制の可視化や、契約条件の明確化のための電子化、書面化を含め、法制化に取り組んでいるところです。

國重委員 今大臣がおっしゃられた、運送体制の可視化、見える化、今、多くの荷主、元請、最終的に何次下請までいっているのかという、この実態さえ把握できておりません。

まずは、これを見える化するために、実運送体制管理簿の作成を義務化する、これは一歩前進です。ただ、その上で、これを作っただけで多重下請構造は解消できるのか、実運送体制管理簿、この管理簿によって実態が把握できたとして、それを元請や荷主がどう受け止めて、どう改善していくのか、どう行動変容をしていくのか、ここが肝になります。

斉藤大臣、国交省として、管理簿を作らせて、それをどう活用、展開していくおつもりなのか、どう多重下請構造の是正につなげていくおつもりなのか、お伺いします。

斉藤国務大臣 実運送体制管理簿による運送体制の可視化によりまして、荷主等が運送全体の状況を把握することが可能となります。

これにより、例えば、元請事業者が荷主に対して、実運送事業者が収受すべき運賃に、必要な下請手数料を上乗せた金額を収受すべく交渉を行うことや、荷主が、運送コストの適正化の観点から、過度な下請構造を回避する取組に協力することなどによりまして、多重下請構造が是正され、実運送事業者が適正運賃を収受できる環境の実現が期待されます。

國重委員 期待されるということですけれども、この管理簿によってどのような効果が実際に生じたのか、このこともしっかりと検証して、更なる効果的な手を打っていただきたいというふうに思います。

まずは、多重下請構造そのものにメスを入れていく。ただ、急にこれが大きく改善されるかというと、やはり一定の時間がかかるかもしれません。だからこそ、下請構造があったとしても実運送事業者が適正な運賃を確保できるような仕組みづくり、これも同時に進めていかないといけません。

この点、国交省は、実運送事業者が適正な運賃を受け取れるように、年内に、標準的な運賃、これを見直す方針を掲げています。先ほど答弁のありました下請手数料、これ以外にも、荷待ち、荷役費用、燃料高騰分なども荷主に適正に転嫁できるよう検討を進めている、このように聞いています。

ただ、下請手数料を荷主に適正に転嫁できるように、こういうふうに言っても、最終的に何次下請までいくというのは個々の取引で異なります。荷主と元請との間で契約を結ぶ時点では、最終的に元請が何次下請までいくというのは、これは個々の取引で違いますから、分からないと思います。管理簿が作成されるのは、その契約より後の時点になります。であれば、元請は一体どうやって適正な下請手数料を荷主に請求するのか。適正な下請手数料というのはどのように国交省として算出していこうとしているのか、お伺いします。

鶴田政府参考人 お答え申し上げます。

先ほど御指摘いただきました下請手数料ですけれども、まずは元請事業者が、実運送事業者に至るまでの運送全体の状況をしっかり把握して荷主との運賃交渉に臨んでいただくという考えでございます。

その際、下請運送事業者が更に下請に再委託をする、そういった場合、その再委託を受けた事業者が適正な運賃を収受できるか、これに配慮する必要がございます。下請事業者においては、自ら運送することができない、これが明らかにもかかわらず運送を引き受けて、それを再委託する、そういった措置は控えていただく必要がございます。実運送事業者の適正な運賃収受に向けた取組には、このように多くの関係者の協力が必要だと考えてございます。

さらに、著しく低い運賃での委託など、適正取引を阻害する疑いがある元請事業者に対しましては、トラックGメンによる是正措置の対象になります。

こうした取組を通じて、取引環境の適正化に努めてまいりたいと考えております。

國重委員 答弁をいただきましたけれども、必ずしも真正面から答え切れていないような気がします。

私、実際の下請間の取引で抜き取られる下請手数料という金額、これはばらつきが大きくて合理的な算定根拠もない、このようにも指摘されております。こういった中で、適正な下請手数料をどう算出をして荷主に請求をしていくのかというのは更に検討が必要だと思いますので、深掘りを是非よろしくお願いします。

標準的な運賃とよく言われますけれども、この標準的な運賃というのは、荷主と元請との間で決められるものではないというか、元請が受け取る運賃ではなくて、実運送事業者が受け取るべき運賃の指標であります。でも、実際は、荷主と元請との間では標準的な運賃だったとしても、その後の下請、どんどん下請していく中で、これがまたどんどん乖離していく。

私も、この質問をするに当たって、幾つもの運送事業者、またドライバーの方からも話を聞きましたけれども、標準的な運賃なんて理想論だ、罰則があるわけじゃないし、平然と標準的な運賃を下回る格段に安い運賃を提示される、応えないと仕事が回ってこなくなる、こういった声も伺いました。

今日は時間の関係で多くは紹介できませんけれども、こういった声がある中で、標準的な運賃を見直した上で、じゃ、末端の実運送事業者の運賃が実際にどう変わったのか、しっかりと実態を把握して効果を検証していかないといけません。

そのためには、実際に運賃がどのくらい支払われて、どこで、どのくらい中抜きをされているのか、これを外部的に明らかにしていけば、一定、これは抑制されていくと思います。その手段として、例えば、先ほどの管理簿、どういうふうなところに下請を出していくのかというのを書く管理簿だと思いますけれども、ここに、それぞれの運賃、またあるいは下請手数料、こういったものを記載することも一つの案だと思います。

事業者にとってこの管理簿が過度な負担になってはならないということは、私は、これはよく分かります。他方で、実効性の確保も必要になります。両者のバランスを見てではありますけれども、運賃についてはしっかりと見える化をすることで、実運送事業者の適正な運賃収受を促進することにつながるのではないかというふうに考えます。これに対する見解をお伺いします。

鶴田政府参考人 今御指摘いただきましたように、標準的な運賃は、荷主と実運送事業者に必要な額が届く、これが重要であると考えております。その観点で、制度については更に深掘りをしてまいりたいと思います。

その際、今、実態把握と効果検証にも資するということで御指摘をいただきました。現在、実運送体制管理簿に記載する事項を含めまして、制度の詳細については、次期通常国会での法制化に向けて、まさに検討を進めているところでございます。

今いただきました御指摘を踏まえまして、実運送事業者の適正運賃収受に効果がある制度となるよう検討を進めてまいります。

國重委員 是非、検討をよろしくお願いします。

これまで述べてきました管理簿による運送体制の見える化、また標準的な運賃の見直し、こうした取組が、荷主と元請の間だけではなくて、しっかりと下の階層、下請間の取引まで効果を及ぼして、最終的に実運送をしているトラックドライバーの皆さんに適正な運賃が支払われる、こういうことにつながるように実効性を担保していく必要があります。

どうやってこの実効性を担保していこうと考えられているのか、大臣に伺います。

斉藤国務大臣 運送体制が可視化されてもなお実運送事業者の適正運賃収受を妨げる悪質な荷主や元請事業者に対しては、トラックGメンによる貨物自動車運送事業法に基づく要請、勧告、公表などによる是正措置を徹底したいと思います。

国土交通省としては、関係省庁、産業界と緊密に連携し、適正な取引環境の実現に向けて全力を尽くします。

國重委員 これまで様々な、今、やり取りをさせていただきましたけれども、業界の実態を踏まえますと、私自身は、多重下請構造というのは是正していかないといけないと思っています。ただ、今すぐにドラスチックに変えるということも現実的には難しい。かえって物流の現場を混乱、停滞させてしまう危険性もあるようにも思います。

ただ、何次下請までしか駄目だというのは、今はすぐにはできないとしても、これは将来的に、多重下請構造について、例えば何次ぐらいまでが基本的には適正だとかいうような、今後のあるべき姿、ビジョンというのも示していくことも私は大事なのではないかというふうに思っております。

これについて、大臣の見解をお伺いします。

斉藤国務大臣 多重下請構造の是正に向けては、実運送体制管理簿による運送体制の可視化が、標準的な運賃の在り方や悪質な荷主や元請事業者の是正と相まって効果を発揮すると期待されます。

国交省としては、まず、これらの取組をしっかりと推進することにより、多重下請構造の是正に努めます。

また、実運送体制管理簿のみならず、契約条件の明確化のための契約の電子化、書面化を含め、次期通常国会での法制化に取り組んでいるところであり、トラックドライバーの賃上げの原資となる運賃の適正化に向けて全力を挙げていきたい、このように思っております。

國重委員 大臣としては、現下の取組、まずはこれをしっかりとやっていくということです。私としては、先ほども申し上げましたとおり、それに全力を尽くすことはもちろんですけれども、この将来のあるべき姿というのも、しっかりと現場の声を聞きながら、また、諸外国の状況等も見ながら考えていくということも大事だと思いますので、また更なる検討をよろしくお願いします。

最後の質問にさせていただきます。

多重下請構造、この管理簿を作っていく、また、私は、この管理簿の中に運賃も入れたらいいんじゃないかとか、いろいろなことも言いましたけれども、この是正する取組の一つに、民間で行っている求貨、求車のマッチングシステムがあります。要は、荷物とドライバーとを結びつけるプラットフォームで、現在、様々な事業者が参入をして、サービスを提供しております。迅速で効果的なマッチングが可能になって、物流業界の課題解決に向けた大きな可能性を持つ、このように私は評価をし、期待をしております。後押しをしていくべきものだと思っております。

他方で、その導入、普及に当たっては、まだ様々な課題があることも承知をしております。例えば、物流は信頼関係の下で成り立っていますけれども、一度きりのマッチング相手には信頼性に懸念がある、特殊な軒先条件の設定があるかどうか分からない、輸送品質が分からない、こういったことも指摘をされています。

この点、国交省は、これまで、こうしたシステムが活用しやすくなるように、物流情報の標準化を進めて、標準的なフォーマットである物流情報標準ガイドラインを示してきました。今後、このフォーマットを更にバージョンアップをして、今指摘しました求貨、求車システムが抱えている課題を克服できるような中身へと進化させていっていただきたいと考えますけれども、いかがでしょうか。

鶴田政府参考人 お答え申し上げます。

今御指摘いただきました物流情報標準ガイドラインでございますが、これは、今年三月まで三年をかけまして、官民で協力して物流、商流に関するデータ項目などの標準形式を定めたものでございます。これを活用して、既に業種横断的に共同輸配送などに取り組む事例も出始めていると承知しています。

今御指摘のありましたように、他方で、求車、求貨システムの利用に当たっては、特殊な軒先条件、それから商慣習などについて、より詳細な情報を登録できるようにしてほしいという御意見があるというのは我々も承知してございます。

今後、このガイドラインのバージョンアップを行っていく段階で、御指摘いただいたような課題を含めまして、このガイドラインがユーザーのニーズにマッチしたものになるように、国土交通省としても、引き続きしっかり取り組んでまいります。

國重委員 二〇二四年問題、ございます。物流は、日本の産業を支えるまさに経済の血流でありますので、今日は時間の関係で多重下請構造に焦点を絞って質問させていただきましたけれども、本当に課題山積でありますので、大臣を先頭に、本気になってこの課題に切り込んで、末端で働くドライバーの皆さんが本当に適正な賃金が受け取れて、この運送業界の未来が開かれるような、そういった取組を是非進めていっていただきたいと思います。

以上で質問を終わります。ありがとうございました。

 
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