2023年12月15日付公明新聞より転載
定額減税、来年6月開始 家計支援 1回限りでなく柔軟に
自民、公明両党は14日、与党政策責任者会議で2024年度の与党税制改正大綱を決めた。賃上げに取り組む企業などの法人税負担を軽減する「賃上げ促進税制」を抜本強化。所得税などの定額減税を24年6月から開始することなども盛り込んだ。公明党の主張が随所に反映された。
大綱の骨子
▼ 賃上げ促進税制を大幅拡充
▼ 定額減税、来年6月から開始
▼ 住宅ローン減税などで子育て世帯支援
▼ 扶養控除の見直し方針、来年末に結論
▼ 防衛増税、開始時期の決定見送り
記者会見で公明党の西田実仁税制調査会長は、今回の税制改正議論に際し「デフレからの完全脱却を後押しする税制をいかに作り上げるかという問題意識を持って取り組んできた」と強調。物価高から生活を守り抜く観点から協議を重ね、賃上げや定額減税といった重要テーマで結論を導き出すことができたと述べた。
大綱では、賃上げ促進税制について、賃上げに加え、教育訓練や子育て支援などに力を入れた企業には、大企業で給与などの増加分の最大35%、中小企業では同45%まで法人税額を控除できるよう大幅に拡充するとした。赤字の中小企業は控除を5年間繰り越せる制度も新設する。
定額減税は、1人当たり所得税から3万円、個人住民税から1万円をそれぞれ差し引く措置。大綱では、実施回数に関して「今後、賃金、物価などの状況を勘案し、必要があると認めるときは、所要の家計支援の措置を検討する」と明記した。1回限りと決めず、将来の経済情勢によって柔軟に検討できるようにすべきだとの公明党の主張が反映された。所得制限は年収2000万円に設定した。
扶養控除見直し、24年末に「結論」
焦点となっていた児童手当の支給対象を高校生(16~18歳)まで拡充するのに伴う扶養控除の見直しについては、24年末に議論する25年度税制改正で「結論を得る」と明記。ひとり親控除は、控除額や所得要件を引き上げる。さらに子育て世帯への支援として、来年から引き下げ予定だった住宅ローン減税の借入限度額を維持する。
防衛財源の確保に向けた法人税、たばこ税、所得税の増税については、開始時期の決定を昨年に続き見送った。
このほか、半導体など経済安全保障上の重要物資の生産・販売量に応じて減税措置を講じる「戦略分野国内生産促進税制」、国内で研究開発した知的財産の売却所得に対する課税を軽減する「イノベーションボックス税制」も創設する。
“はざま”の所得層の対応策
低所得世帯に一律10万円、子ども1人5万円を給付
政府は14日、総合経済対策に盛り込んだ給付金の対象にならず定額減税の恩恵も十分受けられない“はざま”の所得層への対応策をまとめた。低所得世帯のうち住民税均等割のみ納税する世帯に10万円を給付。給付済みの3万円に加え、新たに7万円を受け取る住民税非課税世帯と同等とする。18歳以下の子どもを扶養する低所得世帯には子ども1人当たり5万円を追加給付する。
均等割のみ納税する世帯への給付金と子育て世帯への追加給付は来年2~3月ごろの支給開始をめざす。失職などで新たに住民税が非課税などになる世帯にも1世帯当たり10万円を給付する。
納税4万円未満の人
定額減税差額分を1万円単位で給付
政府は所得税と住民税を合わせ1人当たり4万円の定額減税を実施するが、納税額が少なく減税しきれない場合、差額を1万円単位で給付する。
政府は、迅速な給付と自治体の事務負担軽減のため、オンラインを活用した申請と給付の仕組み「ファストパス」制度を設ける方針だ。
外部リンク>>与党税制改正大綱
24年度 与党税制改正大綱のポイント
法人税軽減 赤字中小は繰り越し可
大綱には、賃上げ促進税制の拡充と新たな投資減税制度の導入が盛り込まれた。賃上げに積極的な企業の法人税負担を軽くして人材投資を促し、持続的賃上げに不可欠な収益力強化へ、半導体など重要物資の生産を10年間減税する。
賃上げ税制では、女性活躍や子育て支援に積極的な企業への法人税控除の上乗せ措置を創設。
大企業は最大35%、中小企業は同45%と、それぞれ現行の控除率から5%引き上げる。中小が赤字で使えなかった控除分は5年間繰り越しを認め、期間中に黒字になれば優遇を受けられる制度も設け、賃上げの裾野を広げる。
また、控除を受けるための大企業の賃上げ要件について、前年度比で3%以上と4%以上という現行区分を3%、4%、5%、7%に細分化。最も大きな控除を受けるには一段と高い賃上げが必要な仕組みとした。
戦略分野への投資を誘導するため、半導体や電気自動車(EV)などの生産・販売量に応じた減税制度を整備。EV1台につき40万円、「持続可能な航空燃料(SAF)」は1リットルにつき30円と、物資ごとに控除額を設定し、控除を受けられる期間も最大4年間繰り越せるようにする。
定額減税
所得・住民税、1人につき4万円
1人当たり計4万円の定額減税が24年6月に始まる。年収2000万円超の富裕層は対象外。納税者と配偶者を含む扶養家族1人につき所得税で3万円、住民税で1万円減税する。大綱では、実施回数に関して「今後、賃金、物価などの状況を勘案し、必要があると認めるときは、所要の家計支援の措置を検討する」と明記した。
給与所得者の場合、来年6月の給与や賞与支給時の源泉徴収額から減税。6月だけで引き切れない残りの減税分は、7月以降減税額に達するまで順次差し引く。住民税は6月分を徴収せず、減税分を引いた年間の税額を7月以降の11カ月間で均等に徴収する。公的年金所得者も所得税は来年6月の年金支給時に減税し、引けない分は次の支給時である8月以降順次減税する。住民税は来年8月徴収分までの税額が既に確定しており、10月分から減税し、引けない分は12月分以降順次差し引く。
一方、個人事業主などの事業所得者や不動産所得者の場合、所得税は原則25年2~3月の確定申告時に減税。ただ、前年所得などを基に計算した納税額が15万円以上の人は、確定申告前に一部を納税する年2回の「予定納税」時に減税する。住民税は来年6月徴収分から減税する。
子育て関係
住宅ローン減税 借入限度額を据え置き
借入残高の0.7%を所得税などから差し引く住宅ローン減税。24年入居分から借入限度額の引き下げが予定されていたが、子育て世帯等(18歳以下を扶養、または、夫婦どちらかが39歳以下)の場合、現行通り、借入限度額は新築の長期優良住宅で5000万円、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」で4500万円、省エネ基準適合住宅で4000万円を据え置く。
住宅を改修した際に工事費用相当額の10%を所得税額から控除できる優遇措置では、子育て世帯等について、子育て対応改修工事(子どもの事故防止、収納増設など)を対象に加える。
扶養控除見直し、24年末に結論
高校生(16~18歳)の子どもがいる子育て世帯の扶養控除については、児童手当の支給対象が高校生まで拡大することを踏まえて見直しが提起されたが、24年末に決定する25年度税制改正において結論を得るとした。
少子化対策として子育て支援を進める中、今回の改正で控除縮小を決めるべきではないと公明党が主張していた。
中小企業
事業承継の特例を延長
経営者が非上場株式などを後継者に贈与・相続する際に税負担を猶予できる事業承継税制は、今年度末までだった申請期限を2年延長する。経営者が保有する非上場株を後継者に引き継ぐ場合、生前は贈与税、死後は相続税がそれぞれかかる。法人向けの特例措置は税負担を100%猶予する仕組み。法人向けの特例措置は18年からの10年間限定で、27年末までの適用期間に変更はない。
企業が接待などで使用する交際費について、税法上の損金として非課税扱いにできる飲食費の上限額を、現在の1人当たり5000円から1万円に引き上げる。資本金1億円以下の中小企業の交際費を800万円まで非課税とする特例措置についても、今年度末までの期限を3年間延長する。
外形標準課税
都道府県が資本金1億円超の企業に課す外形標準課税は、大企業の「税逃れ」を防ぐ新たな基準を25年4月から導入。資本金を1億円以下に減資しても、資本剰余金との合計で10億円を超える場合も対象にする。