衆院・憲法審査会 会議録
第4号 令和5年3月23日(木曜日)
○國重委員 公明党の國重徹です。
先ほど岩谷委員から、憲法裁判所に関するお話がございました。また、今日もそうですけれども、前回の審査会においても、我が党の吉田委員の意見陳述に関しても様々御指摘をいただきました。
その中で、今日もありましたけれども、ドイツやアメリカ、フランスなどでは、この数十年間に違憲判決が各々四百件以上あったけれども、日本の最高裁が下した違憲判決は十一件しかない、日本の最高裁はこれで憲法の番人と言えるのかといった旨の御指摘がございました。
確かに違憲判決の数は大きく違いますけれども、憲法の番人たり得るかということにつきましては、違憲判決の数だけで判断するのではなくて、国の立法システム、司法システム全体を見て判断すべきと考えます。
我が国において違憲判決が少ないことにつきましては、立法段階で、閣法においては内閣法制局が、議員立法においては議院法制局が厳格な審査を行っていること、また、精緻な法体系が組み立てられている法文化があること、こういったことなども指摘をされておりまして、違憲判決の数だけで比較をするのはいささか乱暴ではないかというふうに思われます。
その上で、国民のために司法的な救済の在り方として何がベストなのかという観点から検討すべき問題と考えます。これに関連して、先ほどもございました憲法裁判所の創設について、私からも若干意見を申し上げたいと思います。
憲法裁判所については、我が国の司法消極主義への批判の観点から賛成する立場がある一方で、先ほど北側幹事からもありましたとおり、多くの論点があり、直ちにその創設ができるものとも思われません。言うまでもなく、憲法裁判所の設置は、日本国憲法が採用する付随的違憲審査制に抜本的な変更を加えるものでありまして、我が国の法文化や歴史に立ち返った検討が必要であります。
例えば、憲法裁判所の権限は強力なものとなることが想定されますので、その裁判官には、大所高所から国家の在り方や行く末を見据えて判断できる素養が求められることになりますが、このような人材をどのように確保していくのか。また、憲法裁判所の裁判官の選出に当たって、どのように政治的な中立性を確保していくのか。
より根源的な問題といたしまして、国会における政治的な争いが憲法裁判所にそのまま持ち込まれるのではないかといった裁判の政治化、また、国会における議論が憲法裁判所を過度に意識したものとなって、ひいては議会制民主主義の弱体化につながるのではないかといった政治の裁判化、このような本質的な問題についても指摘をされております。
これらは、裁判と政治の双方がそれぞれの本来の役割が果たせなくなってしまうのではないかといった懸念であると思われます。
憲法裁判所の創設は、我が国の統治機構を根本から変えるような改革になりますし、様々な論点があります。ですので、憲法裁判所の創設には慎重な検討が必要であるということを申し述べまして、私の意見表明とさせていただきます。