衆議院 憲法審査会が開催され、自由討議が行われました。
国重も発言し、憲法改正国民投票運動におけるネット広告について、またフェイクニュースの問題について、意見を述べました。
(憲法審査会における発言全文)
○國重委員
公明党の國重徹です。
先日の森団長報告において、ネット社会での表現の自由と人権との兼ね合いについて言及がありました。これに関連して、インターネットにかかわる問題、特にネット広告とフェークニュースの二点を取り上げたいと思います。
まず、ネット広告ですが、現行の憲法改正国民投票法では、テレビ、ラジオのCM規制はありますが、ネット広告に対する規制は全く設けられておりません。
しかし、近年、ネット広告費が地上波テレビ広告費に迫り、本年には追い抜くとも予想されており、ネット広告の影響力は拡大をしております。とりわけ、ネット上の政治広告は、利用者の閲覧履歴を分析するなどして、その政治的志向に合った広告を打つことができるため、選挙での投票の判断をゆがめるとの指摘があります。
こういった指摘を踏まえ、グーグルやツイッターなど米国の大手IT企業の間で、政治広告の取扱いを自主的に見直す動きが加速しています。
他方で、インターネットはテレビとは異なり、各個人がいつでも自由に発信できるという特性があり、ネット広告のみを規制しても、インターネット全体で見たときに、その効果は限定的なものにとどまるのではないかという疑問も生じます。国民投票運動におけるネット広告については、このようなことを踏まえた議論が必要であると考えます。
次に、フェークニュースについて。これについては、国民投票運動にとどまらない問題も含めて述べたいと思います。
フェークニュースと評価される情報の拡散は、インターネットがない時代においても大なり小なり存在し、現在指摘されている問題も、いわば程度問題ではないかとも思われます。しかし、インターネットは匿名性が高く、また、発信した情報が瞬時に世界じゅうに拡散するという、これまでの媒体にはなかった特性があります。量的問題が質的問題に転換し、これまでとは比べ物にならない影響力を持つに至っているとも評価できます。
現に、例えば、2016年の英国EU離脱国民投票の際に、離脱支持派から、EUへの拠出金が週3億5000万ポンドに達するとのフェークニュースがSNS上で拡散されました。その結果、イギリス国民の67%がこの情報に接し、そのうち42%が真実と信じ、これが国民投票の結果に大きく影響したと報道されるなど、諸外国では、国政の重要な場面においてフェークニュースがばっこしている現状があります。
さらに、技術の進展に伴い、例えば、AI技術などを活用し、画像や音声を加工して本物に見せかけたにせ動画など、人の目では真偽を判別できないディープフェークをつくることも可能になっており、その影響力はますます大きく、民主政治をゆがめるといった点でもその深刻度は増しております。
このようなことを踏まえますと、フェークニュース対策を検討する必要性は高いと考えます。ただし、実際に何らかの規制をしようとした場合には、そもそもフェークニュースは何なのか、その明確な定義づけをどうするのかという、基本的で本質的な問題があります。
さらに、フェークニュースに対する規制は、表現の時、所、方法に対する規制とは異なり、その発信内容、表現内容に着目せざるを得ない以上、憲法二十一条の表現の自由との関係で、より慎重な判断が求められます。
この点、海外調査を行ったドイツでは、一定のSNS事業者に対し、違法なコンテンツに対する苦情処理手続の策定を義務づけ、違法なコンテンツに該当すれば削除することを求める、仮にこの義務に違反した場合には高額な過料が科されるという内容のネットワーク執行法を制定しております。しかし、この法律に対しては、SNS事業者による過剰な削除が起きることにより表現の自由が阻害されているのではないかといった懸念が指摘されており、この点に関する議論がされているところです。
以上のように、フェークニュースに対する規制については多くの難しい問題もあることから、私としては、これらの論点について議論を深めつつ、まずは民間の自主的な取組を基本とした対策を進めていくことが必要なのではないかと考えております。
それに加えて重要なことは、フェークニュースに惑わされることがないよう、情報を適切に受け取り、発信するという、受け手の情報リテラシーの向上であります。近年のSNSの発達により、不確かな情報を真偽を確かめないまま拡散してしまう行為が助長されています。フェークそのものを社会からなくすことはできませんが、そのフェークが大規模に拡散して社会を混乱させることがないよう、時代の変化に応じた情報リテラシー教育を更に充実させていくことが重要であると考えます。
以上です。