公明党 法務部会、ヘイトスピーチ問題対策PT、再犯防止対策強化PTとして、
菅義偉官房長官、岩城光英法務大臣に要望書および提言の申し入れをしました。
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「ヘイトスピーチ等に関する施策及び体制整備に関する要望書」
※改行位置等が正式なものとは異なります。
公明党は、平成26年9月、ヘイトスピーチ問題対策プロジェクトチームを党内に設置し、
昨年7月2日、菅義偉官房長官及び上川陽子法務大臣に対し、
まずはわが国におけるヘイトスピーチ等の実態を明らかにするよう、要望した。
これが契機となり、政府が初のヘイトスピーチの実態調査に取り組んだところ、
ヘイトスピーチを伴うデモや、そこにおける差別的言動は、
未だ沈静化していないということが浮き彫りになった。
そこでわが党及び自由民主党は、「与党ヘイトスピーチ問題に関するワーキングチーム」設置し、議論を重ね、
本年4月8日、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」を
提出し、今月24日に成立に至った。
ヘイトスピーチの根絶に向けて重要となるのは、同法律に規定されたように、
政府が地方公共団体と十分な連携を図りながら、新たなる取組も含めた施策を効果的に実施することである。
同法律で本邦外出身者に対する不当な差別的言動が許されないものであると宣言された趣旨を、
国民の間に広く、深く周知していくことこそ肝要である。
また、これら人権擁護行政を担う法務省の人権擁護機関は、組織・人的体制が十分とは言えず、
同法律の成立を契機として、その充実、強化を図るべきである。
共生の社会を築くべく、法務省は今年度、
わが国における外国人の人権状況に関する調査の実施を予定しているが、
その際は有識者の意見等も踏まえ、政治的中立性を担保しながら、
的確に、正確に現状を把握するよう努めるべきである。
そこで、同法律の成立、施行を機に、政府全体として責任をもって、
ヘイトスピーチ等の根絶に向けた実効性ある施策及び体制の整備が行われるよう、
以下のとおり、政府に要望する。
記
1 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律の目的、
基本理念を念頭に置きつつ、その趣旨に沿って、地方公共団体と十分に連携を図りながら、
国の責務を十分に果たすこと。相談体制の整備、教育の充実等、啓発活動等の基本的施策を、
新たな取組も含め、着実に推進し、ヘイトスピーチの根絶に向けた取組を強化すること。
2 インターネットの普及等による情報化の進展を踏まえ、
インターネット上で行われているヘイトスピーチに対しても、
同法律の趣旨に沿って、その根絶に向けた取組を着実に推進すること。
3 同法律の成立、施行を契機として、ヘイトスピーチ対策を含む人権擁護行政を担う
法務省の人権擁護機関の定員の増員等、その組織・人的体制の充実、強化を十分に図ること。
4 今年度に実施される外国人の人権状況に関する調査について、
結果がその状況を的確に反映した、より正確なものとなるよう、
有識者の意見等を取り入れるなどした上、政治的中立性を担保するなどの方策を講ずること。
以上
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「再犯防止対策の強化に関する提言」 ※改行位置等が正式なものとは異なります。
政府は、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会までに、
「世界一安全な国、日本」を創り上げることを目指している。
我が国の犯罪の約6割は再犯者によるものであり、
一般刑法犯により検挙された者に占める再犯者の割合については、
平成9年の27.9%から一貫して上昇し続け、平成26年には47.1%に達している。
このような状況において、我が国の良好な治安を一層確固たるものにするために、
再犯防止対策の強化は急務であり、政府与党一体となって取り組むべき課題である。
本プロジェクトチームは、このような問題意識の下、平成27年11月4日に党政務調査会に設置されて以来、
刑務所、更生保護施設等の再犯防止の最前線の現場を視察するとともに、
保護司、更生保護施設職員、協力雇用主等の実務者、学識経験者、関係行政機関等からヒアリングを行い、
様々な観点から再犯防止対策の推進について議論を重ねてきた。
これら議論に基づき、本プロジェクトチームは、緊急に対応すべき事項として、以下のとおり提言する。
関係省庁においては、本提言に沿った再犯防止の取組を速やかに実行されるよう強く求めるものである。
記
1 更生保護施設の職員体制の強化等について
① 更生保護施設経営の安定化を図るため、施設運営に必要不可欠な経費について、
収容実績にかかわらず定額措置すること。
② 過酷な状況にある更生保護施設職員の負担を軽減し、施設の受入れ機能及び処遇機能を高めるため、
職員数を増大させること。
2 保護司に対する支援の拡充について
① 保護司活動に対する地方公共団体の協力の充実・促進をはかること。
② 保護司への一層の支援充実、負担軽減のため、
「更生保護サポートセンター」の増設置及び運営強化をはかること。
③ 保護司活動に対する国民の更なる理解と協力のため、
「社会を明るくする運動」等の広報啓発活動を強化すること。
3 協力雇用主に対する支援の拡
充について
① 協力雇用主の負担軽減、活動支援のため、
就労奨励金支給制度及び更生保護就労支援事業等の支援策を拡充するとともに、
雇用後の再犯防止を防ぐため専門家によるサポート体制を整えること。
② 協力雇用主の功労に対し積極的に顕彰を行うこと。
4 薬物事犯者、性犯罪事犯者に対する地域医療・指導体制の強化等について
① 薬物事犯者、性犯罪者それぞれの対処として認知行動療法が有効であり、
その充実に向けた措置をとること。
② 薬物事犯者及びその家族に対する相談支援を適切に実施するため、
全国の精神保健福祉センターの職員体制整備や研修の充実等を図ること。
【対厚生労働省】
③ 依存症治療拠点機関との間の一体的・継続的な地域支援体制を整備するため、
薬物事犯者に対する指導を専門に行う保護観察官を保護観察所に配置する、
性犯罪者に対する専門家職員を矯正施設や保護観察所において計画的に育成するなどにより、
その指導体制を強化すること。
また、ストーカー再犯防止のため、加害者等を適切に医療機関につなげる取組みを推進すること。
④ 薬物依存症者の治療拠点となる医療機関(現状は全国で5カ所のみとされる)を
計画的に全国整備すること。【対厚生労働省】
⑤ 薬物依存離脱指導その他多機能を有する矯正施設の整備を計画的に進めること。
5 高齢者や障がい者などの特性に応じた再犯防止対策の強化について
① 社会福祉士が矯正施設内において、福祉的支援の必要性等を把握、
連携する現行の「特別調整」の枠組みをさらに充実させること。
そのために矯正施設及び保護観察所と地域の福祉関係機関・団体との連携を密にすること。
【対厚生労働省】
② 再犯防止に協力的な社会福祉士、福祉施設等に対する支援を行うとともに、
出所者等の受け皿となる更生保護施設の体制強化を図ること。
③ 検察庁への社会福祉士の配置など、検察庁での「入口支援」の取り組みを推進すること。
司法ネットワークにおける処遇の対象外である、警察等における微罪処分、検察庁における不起訴処分、
裁判所における執行猶予等の対象者に対しても、早期に福祉的支援につなげるための措置を検討すること。
④ 高齢者又は障がいを有する者の出所等後の福祉サービス等を専門に調整する
地域生活定着支援センターの更なる増設をはかるとともに事業の取り組みについて
さらなる周知をはかること。【対厚生労働省】
⑤ 資力の無い被疑者、被告人に対する社会福祉士による支援(更生支援計画書作成を含む)について、
関係者の意見を踏まえながら、政府としても適宜、検討すること。
6 再犯防止政策に関連する省庁横断的な取組みの重要性
① 再犯防止と農業や建設など労働力不足分野に対する就労支援、地域振興など
複数の政策課題解決にむけた連携のあり方を検討すべきであり、
これら省庁横断的に議論すべき課題を継続的に協議する場を政府内に設置すること。
7 再犯防止政策の効果検証
① 生活環境調整はじめ出所者等の帰住環境や就労状況などに関する情報収集をさらにすすめ、
そのデータベース化のあり方について検討するとともに、再犯防止政策効果の検証に供すること。
8 再犯防止を含めた社会的課題解決のための民間資金活用の枠組み導入(ソーシャルインパクトボンド等)
① 再犯防止を含めた社会的課題解決の成果を「見える化」し、貨幣的評価をすることを前提に、
その成果に対する投資を民間より募り必要な資金を調達する有益な民間資金活用方法である
ソーシャルインパクトボンドについて研究をすすめること。
※ソーシャルインパクトボンド(SIB)とは、社会的課題解決の成果に向けた官民の投資契約である。
投資家から調達した資金を基に、行政サービスを民間のNPOや社会的事業者に委託し、
事業が成果を挙げた場合にのみ削減された行政コストに基づいて投資家に報酬が支払われる。
2010年に大幅な公費削減や業務見直しを迫られたイギリスで始まった制度であり、
第一号案件は再犯防止に関するもの。