公明党 認知症対策推進本部(国重=副本部長)に出席し、
国立研究開発法人・国立長寿医療研究センターの鳥羽研二理事長よりご講演いただきました。
(2017年11月28日付公明新聞より抜粋)
介護離職など損失大――社会的費用減へ研究重要
日本は、若い人も高齢者も共に幸せな「長寿立国」の構築をめざすべきだ。
このためには、健康寿命が長い(医療)、働けるうちは働く場がある(雇用)、
退職後の生活保障がある(年金)、家族の介護負担が軽くなることのほか、
レジャーや生きがいなども大切となる。
長寿立国の最大の阻害要因となるのが認知症だ。
その対策推進本部を与党・公明党が立ち上げた意義は大きい。歓迎したい。
統計的に見ると、2人に1人が一生涯のうちに認知症になると言っても過言ではない。
両親のうちどちらかが認知症になる確率は約94%という試算もあり、
認知症は、ありふれた病気だ。
諸外国と比べて、日本で特に多いのではなく、高齢化率が非常に高いということだ。
100歳の方が2030年には30万人になるとされるなど、
みんなが長生きになって健康寿命も世界一になる中で、
確率の問題として、認知症の人が増えてしまう。
これは、医療や福祉、経済の発展によって先進国ならどこでも直面することであるという
側面を忘れてはいけない。
ただ、認知症の人にかかる社会的なコストは無視できる規模ではない。
2014年の厚生労働省研究班の推計では、国全体で年間14.5兆円。
内訳は、医療1.9兆円、介護6.4兆円のほか、
家族が無償で実施する介護などにかかるインフォーマルケアコストが6.2兆円に上る。
そこには、介護離職による損失も含まれる。
政府は、少子高齢化が今後さらに進む中で、
女性などすべての人が活躍できる社会をめざしているが
、認知症の人の増加は、女性の社会進出など“総活躍”を妨げかねない。
こうした社会的コストを下げる研究や技術開発が重要になる。
しかし、国の認知症関連の研究開発費は年間30億円ほど。
認知症の人の数がそれほど変わらないアメリカの20分の1程度であり、
フランスやイギリスなどと比べてもかなり貧弱だ。
より早期の予防、治療に加えて、リハビリテーションやケアなど、
当事者がどのような状態になっても見捨てないための研究を、より強力に推し進めるべきだ。
そうしないと、家族の負担は大変だし、若い人も安心して老いることができない。
長寿立国とは、かけ離れてしまう。
会話や傾聴ができるロボットなど技術革新は急速に進み、
新しい産業の柱としての期待も大きいが、
高齢社会の到来と認知症の増加があるからこそ進んでいるという面も大きい。
課題を飛躍の好機ととらえる新しい視野も持ちながら認知症対策を進めるべきである。