衆議院経済産業委員会で「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」について質問しました。
以下は議事録全文です。
○國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。
きょうは、不正競争防止法の改正案についても質疑を準備してまいりましたけれども、先ほど松平委員の方から詳細な質疑がありまして、かなりの部分重複しておりますので、まずはJIS法、弁理士法について質疑をさせていただきまして、仮に残った時間があれば不正競争防止法についても触れさせていただきたいと思います。
まず、JIS法に関して、国内の標準獲得だけではなくて国際標準の獲得が重要であるという観点で質問をいたします。
今般の法改正で、JIS法における標準化の対象をサービス分野に拡大するということですが、具体的にはどのような内容を想定しているのか、お伺いいたします。
○末松政府参考人 お答えいたします。
現行のJIS法の第二条、これは定義規定でございますが、これを改正し、標準化の対象に、これまでの鉱工業分野に加え、新たに役務、つまりサービス分野などを追加することとしております。分野としては、物流サービス、生活関連サービス、金融サービス、観光サービス、教育サービスなどに拡大することになります。
具体的な例といたしましては、小口保冷配送サービス、いわゆるクール宅急便における温度管理や、家事代行サービスの事業者が守るべき品質に関する事項などが標準化の対象となるのではないかと想定しております。
○國重委員 今答弁のありました小口保冷配送サービスにつきまして、ヤマトホールディングスは、佐川急便や日本郵便などとも連携をして、クール宅急便の国際標準化の手続を進めております。これにつきましては、お配りをさせていただきました資料の新聞記事でも紹介されておりますとおり、経産省始め関係省庁もバックアップしている、こういうことでありますけれども、小口保冷配送サービスの国際標準化の狙いは何なのか、お伺いいたします。
○末松政府参考人 先生御指摘のとおり、運送業界としては、アジア地域に小口保冷配送サービスを展開するに当たり、質の悪い小口保冷配送サービスとの差別化、さらにはパートナーとなるアジアの物流企業の選定に活用するため、サービスの内容を明確にした国際標準の制定を目指していると認識しております。
こうした動きを、我々経済産業省といたしましては、国土交通省、農林水産省という関係省庁とも協力して推進しているところでございます。
○國重委員 では、このような国際標準を獲得するために国内のJISを獲得することはどのような意味があるのか、今回の法改正で国内のJIS制定を迅速化したとしても、国際標準の獲得に何かメリットがあるのか、あるとすればどのようなものなのか、答弁を求めます。
○末松政府参考人 お答え申し上げます。
国際標準の制定に関しましては、ISOなどの国際標準化機関において、JISの根拠となった試験データや利害関係者間の議論の蓄積を有することが評価されるということになっております。このため、JISの制定は円滑な国際標準の制定にも大きく貢献するということになります。
さらに、JISを経てから国際標準を提案する場合ですが、通常必要な審議プロセスを経ずにすぐに参加国の投票にかけることができるなどの仕組みもございまして、二〇一七年にも七件がこの仕組みを活用して国際標準を制定しております。
このように、今回導入する認定産業標準作成機関制度により、JISの策定を迅速化することは、日本が国際標準化に関する取組を強化していく上でも有効なものと考えております。
○國重委員 国内のJIS獲得が国際標準の獲得につながっていく、有効であるということの答弁でありました。
ただ、先ほどの小口保冷配送サービス、このサービス分野につきましては、これまで国内のJIS法の標準化の対象に入っていなかったものであります。そういった中で、ヤマトホールディングスがどのようにして国際標準化の手続を進めていくことができたのか、お伺いいたします。
○末松政府参考人 お答え申し上げます。
ヤマトホールディングスは、現状のJISではサービス分野の国家標準が制定できないこともあり、国際標準を提案するに当たり、英国の国家標準化機関に原案を作成してもらい、日英で連携して、日本からISOに提案する形で国際標準化を目指してまいりました。
二〇一八年一月にISOにプロジェクト委員会を設置しており、二〇一八年六月から審議が本格的にスタートする予定となっております。
○國重委員 では、国際標準はこのISOなどの国際標準化機関でどのように決まるのか、お伺いいたします。
○佐藤政府参考人 私からお答えいたします。
小口保冷配送サービスを審議したISOの例で申し上げますと、まず、国際標準を提案するには、投票した加盟国の三分の二以上が賛成し、かつ、五カ国以上の参加国が専門家を派遣するということが必要でございました。
その後、専門委員会等における標準の案に関する審議を経まして、国際標準として制定するかどうかは、最終的には一国一票の投票で決まります。具体的には、投票した参加国の三分の二以上が賛成し、かつ、反対が投票総数の四分の一以下である場合に国際標準が承認されるということになります。
○國重委員 国内でJIS獲得をしていくことがスムーズな国際標準の獲得につながっていくという一方で、国際標準の制定はあくまでも一国一票ということでありました。
こういったことからしますと、国際標準を獲得するためには、国内のJISの獲得が視野に入った段階などできるだけ早い段階で海外と連携をして、多数派工作をしていく必要があるのではないかというふうに思います。国際標準の獲得に向けて、政府としてどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
○大串大臣政務官 御指摘のとおり、ISOなど国際標準化機関では一国一票の投票で決まることから、オール・ジャパンで取り組むだけでなく、国際標準化への提案段階から関係各国と連携することが重要であります。
例えば、自動走行用の地図の分野や車線変更などの自動走行の制御の分野では、ドイツ、フランス、アメリカなどの各国と連携しつつ、日本が主導して国際標準化を進めております。また、スマート工場の分野では、日本と同じようにものづくりを強みとするドイツとの連携を首脳レベルでコミットした上で、日独が互いの強みを生かしつつ国際標準化を主導しております。
このように、日本が国際標準化において主導的な役割を果たせるように、関係国とも早い段階から官民で連携してしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○國重委員 ぜひよろしくお願いいたします。
続きまして、弁理士法関係についてお伺いしたいと思います。
まず、そもそも弁理士というのはどのような業務を行っているのか、その業務内容についてお伺いいたします。
○宗像政府参考人 お答えいたします。
弁理士は、弁理士資格に基づく主な業務として、特許や商標などの出願の代理を行っております。
また、誰もが自由に行えるんですが、弁理士という名称を用いて業として行えるものと位置づけられている業務としましては、ライセンス契約の代理を行う、あるいは、企業が開発した技術を、これを特許出願するのか、あるいはノウハウとして秘匿するのかといった知財戦略の相談に応じています。
さらに、弁理士は、特許侵害などの紛争が生じた場合に、弁護士と共同して訴訟の代理を行うことができるということでございます。
○國重委員 それでは、今般の法改正で、第四次産業革命を背景に、弁理士の業務としてデータや標準に係る業務を追加するとのことでありますが、具体的にはどのような業務が追加されることになるのか、お伺いいたします。
○宗像政府参考人 データに関する業務としましては、新しい不競法で限定提供データが新たに保護対象となることを踏まえまして、その保護に関する相談、あるいは契約の代理、そして不正取得などの紛争が生じた場合の訴訟の代理などでございます。
そして、標準に関する業務としましては、標準化と知財を組み合わせて、技術を守りながら売上げを拡大するといった戦略に関する相談に応じる、こうした戦略を踏まえて、企業に対してどういう標準規格がいいかといった案の作成を支援するなどでございます。
○國重委員 それでは、今般追加されるデータや標準に係る業務について、産業界からのニーズは実際どうなのか、お伺いいたします。
○宗像政府参考人 昨年、特許庁が行ったアンケート調査によりますと、データに関する業務につきましては約二八%の企業、標準に係る業務につきましては約四六%の企業が、それぞれ今後弁理士に依頼したいという回答がありました。
また、個別の面談調査でありましては、特に中小・ベンチャー企業から、弁理士の支援を期待したいという意見がありました。
例えば、データでありますと、気象庁のデータを使って独自のデータをつくる、そして契約関係にある外部に提供する。その新しいデータを生み出す技術は特許をとった。そのときに、でき上がったデータの限定提供データとしての保護についてもまとめて助言を受けたいといったような意見がありました。
標準につきましても、標準の専門人材が不足している企業に対して、弁理士の助言が欲しいという御意見が複数の中小企業や関係機関からございました。
○國重委員 データや標準に関して弁理士からアドバイスを受けたいという要望、期待が産業界、とりわけ中小・ベンチャー企業にあるということでありました。これは、第四次産業革命が進むに伴って、その期待はより高まっていくだろうというふうに思います。その意味でも、今回の弁理士法改正でデータ、標準に関する相談業務を追加したことは評価をいたします。
もっとも、こういったアドバイスは、法の定めがないとできないものなのかどうなのか、そもそも論についてお伺いいたします。
○宗像政府参考人 アドバイス自体は法律に規定がなくても可能でございます。
○國重委員 法の定めがなくてもデータや標準に関するアドバイスはできるということであります。これらのアドバイスは弁理士が独占的に行うものではないということであります。
では、それにもかかわらず、あえて弁理士法にデータや標準に関する相談業務を追加する意義は何なのか、お伺いいたします。
○宗像政府参考人 法律に規定をする意味は、弁理士がこれらの業務を行うに当たりまして、弁理士法上の秘密保持義務あるいは利益相反に該当する業務を行ってはいけないという義務、こういった義務がかかることがはっきりするということでございます。
非常に戦略的な意味を持つ標準やデータなどについて、ライバル企業に情報が漏れたりしない、あるいは利益相反が起きないということがはっきりしますと、安心して相談しやすくなると考えております。
○國重委員 これまでの御説明で、今般のこの弁理士法改正の背景、またこういった趣旨というのは一定程度理解をいたしました。今後、データの利活用や標準の戦略的な活用が重要となってくる中で、人的資源に乏しい中小・ベンチャー企業にとっては、弁理士が果たすべき役割は非常に大きいというふうに思いますので、今般の弁理士法改正は意義があるものだと思います。
他方で、今後ますます高まると思われる産業界の弁理士に対する期待に応えるためには、弁理士がこれらの業務を適切に遂行できる能力を確保していくこともまた重要なことでありまして、そのための取組を進めていくことが必要だと思います。これについての見解、今後の取組についてお伺いいたします。
○大串大臣政務官 データや標準に係る業務が法律に追加されたとしても、弁理士の能力が相応のものにならなければ、産業界の期待に応えられないのは御指摘のとおりでございます。
個々の弁理士に自己研さんが求められることは当然でありますけれども、政府といたしましても、日本弁理士会と協力しつつ、二つの点に重点的に取り組んでまいりたいと考えております。
一つは、全ての弁理士に対し、データや標準に関する基礎知識を習得するための研修を義務づけることとしたいと考えております。これによりまして、中小企業を始めとする事業者が、データや標準を組み合わせた知財戦略の重要性について的確な助言を受けられるようにしたいと考えております。
二つ目が、データや標準に関する専門知識を持ち、これを得意分野とする弁理士を育成するために、日本弁理士会が行っている任意受講の研修カリキュラムを充実させるとともに、日本規格協会の提供する標準化人材育成プログラムの活用等を奨励していきたいと考えております。
これらによりまして、データや標準の利活用に関する産業界のさまざまなニーズに応じ、複数の弁理士が連携して適切に助言できるような環境を整えていきたいと考えております。
○國重委員 ぜひしっかりとした取組をよろしくお願いいたします。
今、JIS法、弁理士法関連について質問をさせていただきました。
後回しにしました不正競争防止法について、松平委員とほぼ重複いたしますので、松平委員の質疑を受けて大臣が答弁されたこと、こういったことを踏まえて、最後に質問をさせていただきたいと思います。
先ほど松平委員の質問の大臣答弁にありましたとおり、どのようなデータが限定提供データに該当して、どのような行為が不正競争行為に該当するのかなどについて、わかりやすいガイドラインを策定されるということでありました。
このデータの分野というのは、技術進展も速い、ビジネスモデルもどんどん変わっていく。こういったことから、制度自体やガイドラインをつくってこれで終わりということではなくて、産業界の声をきちんと踏まえながら、状況の変化に応じて対応していくことが必要だと思いますけれども、これに関する大臣の意気込みをお伺いいたします。
○世耕国務大臣 まさに、データを利活用したビジネスモデルというのはここから本格化をしてくるわけでありますから、そもそも我々も、どういったビジネスモデルが出てくるか自体もまだ明確に見通せていないわけであります。これが日進月歩でいろいろなビジネスモデルが出てくるだろうと思いますし、また、データサイエンスの分野あるいはIoTの分野での技術自身もどんどんどんどん進んでいくというふうに思っております。ですので、改正法の施行後においても、技術革新や社会状況に応じて制度やガイドラインを不断に見直していくということは非常に重要だというふうに思っています。
そのために、中小企業も含む産業界や有識者の御意見もしっかり集めながら、どういうデータ取引の実態が出てきているか、技術がどういうふうに進展しているか、あるいは、侵害の実例がどんなものが出始めているかといったことをしっかり把握をし、また、諸外国でもある意味手探りで進めていく分野だというふうに思いますので、諸外国の動向なども踏まえて、必要に応じて適切な見直しを行ってまいりたいというふうに思っております。
○國重委員 現場の声、また諸外国の状況を見ながら、不断の見直しをしていく、適切な見直しをしていくというような答弁でありました。ぜひよろしくお願いいたします。
以上で、本日の私の質疑を終わります。ありがとうございました。