活動報告

国会質疑

衆・法務委 相続法改正案について対政府質疑

衆議院法務委員会で相続法改正案について対政府質疑を行い、
遺言制度の活用の重要性を訴えました。

以下、公明新聞記事と議事録全文です。

採決前の質疑で、公明党の国重徹氏は遺言書について、
「遺族間の争いを防ぐ意味でも非常に大きな効果がある。
法案成立を機に遺言書の活用をさらに広げてもらいたい」と強調。
その上で、自筆証書遺言の保管制度が新設されるため、同局の人員体制の充実を求めた。

上川陽子法相は、保管制度の導入で業務量が増えることから、
「制度実施に当たり適切な体制で対応していく」と述べた。


○國重委員 公明党の國重徹でございます。

 前回、自筆証書遺言に係る保管制度について御質問をさせていただきました。

 私は、遺言書というのは、遺族間の争いを防ぐ意味でも非常に大きな効果があると思っております。今般の法改正を機に、この遺言書の活用というのを更に広げていっていただきたいというふうに思います。

 前回に引き続き、自筆証書遺言に係る保管制度について、この運用について混乱が生じないように、ちょっと実務的な観点から何点か質問をさせていただきたいと思います。

 今回の遺言書保管法案では、相続人の一人が法務局から遺言書情報証明書の交付を受けたり、また遺言書の閲覧をした場合には、法務局は、他の相続人や受遺者、遺言執行者に対して、遺言書を保管している旨通知することとされております。

 もっとも、遺言者が法務局に遺言書の保管を申請する際に遺言書に添える申請書には、受遺者や遺言執行者の氏名や住所が記載されることと法文上なっておりますけれども、相続人の住所については記載することとされておりません。

 このような中で、法務局は他の相続人の住所についてどのように把握するのか、お伺いいたします。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書保管法案では、例えば、遺言者の相続人の一人が遺言書情報証明書の交付請求や遺言書の閲覧請求をする際の請求書の記載事項等につきましては、法務省令で定めることとしておりますけれども、この請求書には、ほかの相続人の住所を記載していただくことを想定しております。また、その住所に宛てても通知ができなかったときは、住民票の写しを添付書類として提出していただくことも想定しております。

 このような情報に基づきまして、遺言書保管官が通知すべき者及びその通知先を把握することとしております。

○國重委員 場合によっては住民票を添付するということでありました。

 ただ、請求書に他の相続人の住所を請求をした相続人が書くとしても、まず大前提として相続人の範囲を確定する必要があるので、被相続人の生まれてから死ぬまでの連続した戸籍謄本等も添付する必要があると思いますけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。

 済みません、これは質問通告していませんでしたけれども、更問いでお願いします。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のとおり、戸籍謄本等の書面を添付するということを考えております。

○國重委員 そのようなものを添付しないと、本当の相続人に届いたかどうかというのは判断できないと思いますので、やはり必要なんであろうというふうに思います。

 続きまして、ちょっと一問飛ばします。

 遺言書に添える申請書、遺言者が法務局に自筆証書遺言を保管する際の遺言書に添える申請書には、先ほど申し上げましたとおり、受遺者や遺言執行者の氏名又は名称、住所を記載することとされております。そして、この受遺者は、相続人以外の第三者である場合もあり得ます。

 もっとも、申請書に記載をされる住所に誤記があった場合、間違いがあった場合、法務局からの通知が届かないことになりますけれども、この住所の正確性はどのように確保するんでしょうか。

 法文上、遺言者の氏名、出生年月日、住所や本籍については証明書類が必要と明確に定められております。四条五項で書かれております。ただ、一方で、受遺者や遺言執行者の住所に関する証明書類が必要なのかどうか、これは法文上明らかになっておりません。法務省令で定められることになっております。

 確かに、この自筆証書遺言に係る遺言書のメリットというのは、特別の費用もかからない、簡便につくれる、自由度が高い、こういうメリットはありますけれども、他方で、やはり、今回の遺言書の保管制度においては、通知するということも予定をされている以上、私は、受遺者や遺言執行者の住民票の添付を事前に、申請する段階で添付を必要とした方がいいと考えますけれども、これについての見解を伺います。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この法律案の第四条の第五項におきましては、「その他法務省令で定める書類を添付しなければならない。」というふうにされております。

 保管の申請に係る遺言書に受遺者又は遺言執行者の記載がある場合には、その特定や住所の把握等の観点から、その添付書類として、これらの者の氏名又は名称及び住所を確認する書類、例えば自然人であれば住民票の提出を求めることを検討しております。

○國重委員 これも住民票の添付を予定しているということでありました。

 では、次の質問に移ります。

 遺言書の保管を申請した後に受遺者や遺言執行者が転居をした場合、引っ越しをした場合、法務局からの通知がそれらの者に届かないことになります。この場合、通知をするために転居先の調査は行うことになるんでしょうか。調査するとした場合、その義務は、一体誰が負担するのか、お伺いいたします。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書の保管申請がされた後に受遺者や遺言執行者が転居した場合において、法務局がこれらの者に対して通知を行うために、その通知先を把握する仕組みといたしましては、遺言書情報証明書の交付請求や遺言書の閲覧請求をした請求者にその住所を明らかにする書面を提出させること、あるいは、遺言書保管官が職権で住民票上の住所の変更を調査することなどが考えられるところでございます。

 いずれの仕組みとするかにつきましては、今後、下位法令を定める中で検討してまいりたいというふうに考えております。

○國重委員 今後考えていくということでありますが、交付請求をした相続人の一人にすぎない人が、場合によっては、相続人が複雑な場合は六十人とか百人とかいる場合もありまして、極端な例ですけれども、そういう場合にまで、単に請求を申請したにすぎない相続人の一人にそこまでの負担を負わせるのもなかなか酷かなとも思いますし、法務局が負うのかどうなのか、ここはしっかりと検討しないといけないことだと思っております。

 次の質問に移ります。

 では、先ほどの、転居した場合、請求人なのか、法務局が職権で請求をして調査をするのか、いずれか今後検討するということでありましたけれども、この調査はどの程度まで行う必要があるんでしょうか。転居したけれども住民票を移さないケースもあります。

 例えば、訴状が届かない場合、公示送達をする、それに際して、私も実務家のときにやったことがありますけれども、現地まで行って、メーターが動いているのか動いていないのかとか、郵便ポストに郵便物が入っているのかとか、近隣からの聞き取りとか、こういうようなことをして調査報告書というのを提出しておりましたけれども、こういうような公示送達の際に行う調査のようなものまで必要なのか。九条五項等との関係で、法務局がどこまでの役割を負うのか。この線引きをある程度明らかにしておかないと、後で国家賠償請求の問題にもなりかねないと思っております。

 この点についてお伺いいたします。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 この法案の九条五項におきましては、遺言書保管官が速やかに相続人や受遺者等への通知をするものとすることを規定しておりますが、これは、証明書の交付請求者等や法務局に、調査のために特別のコストをかけてまで必ず通知しなければならないことを規定するものではございません。

 したがいまして、受遺者や遺言執行者の住所の移転が住民票に反映されていないような場合にまで法務局にこれらの者の住所を調査する義務を負わせるものではございません。

○國重委員 わかりました。

 では、次の質問に移ります。

 自筆証書遺言に係る遺言書の保管を法務局に申請する際には、遺言者がみずから出頭して行わなければならないと四条六項に定められております。

 では、この場合、付添人が一緒についてきても、例えば遺言者が車椅子に乗っていて、付添人が引っ張ってきて、法務局、遺言書保管官ですかね、この方に提出する、同席していて問題ないのかどうか、お伺いいたします。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言者は、付添人の方がおられましても、みずから御出頭されていれば保管の申請をすることは可能でございます。

○國重委員 付添人がいても問題がないということでありました。

 では、先ほどのように遺言者と付添人が法務局に出頭したケースで、遺言者の遺言能力に問題なしとはちょっと言い切れないんじゃないか、少し遺言能力が疑わしいんじゃないかと思われるような場合、車椅子で単に連れてこられて、余り意思表示も、少しはできているんだけれども、ちょっとこれは怪しいかなと思うような場合、遺言書保管官というのは遺言者の遺言能力について何らかのチェックは行うことになるんでしょうか、どうなんでしょうか、お伺いいたします。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 遺言書保管官は、遺言者の遺言能力を審査することとはされておりません。

 もっとも、遺言者が保管の申請をするときは、遺言書保管所にみずから出頭して行わなければならないこととしておりまして、遺言者は必ず遺言書保管官と本人確認等のやりとりをすることとなりますので、遺言書保管所に遺言書が保管されていれば、少なくとも保管の申請があった時点で、遺言者が一見して意思能力を欠くような状態にはなかったことが事実上推認されるというふうに考えております。

○國重委員 ということは、遺言書保管官は、遺言者が遺言能力がないというような場合には、その保管申請を受け付けないということでよろしいんでしょうか。受け付けたということは事実上遺言能力があったと推認されるということであれば、その段階で保管を拒絶するということになるんでしょうか。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、遺言書保管官は遺言能力を審査することはいたしませんが、本人確認ができるかどうか、また申請の意思があるかどうかというところはチェックいたしますので、そういった、本人確認もできない、また申請の意思も欠くと認められるような場合には、保管を受け付けることはできないということになろうかと思います。

○國重委員 では、公正証書遺言のことについて若干お伺いします。

 自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度と比べた場合の公正証書遺言の遺言書のメリットは何なのかというところで、法律専門家である公証人の関与のもとで、証人二人以上の立会い、口授や読み聞かせなど厳格な方式に従って公正証書遺言は作成されることになっている。そのため、遺言者の死亡後、遺言の内容や有効性について紛争が生ずるおそれがより少ないというメリットがある。また、遺言者は、法律専門家である公証人の助言を受けながら遺言書を作成することができるため、その最終意思を的確に反映した遺言書を作成することができるという利点もある。また、それ以外に、遺言書の内容について事前に相談できるというようなメリットもあるということを、法務省とのやりとりの中でそういうことをお伺いいたしました。

 では、公証役場における遺言内容の相談というのは、これは無償なんでしょうか、有償なんでしょうか、お伺いいたします。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 公証人に対して遺言公正証書の作成を嘱託するに当たりましては、作成する遺言の内容に関する相談は無料で受けることができます。

○國重委員 そうすると、今回の自筆証書遺言に係る遺言書は、法務局では形式チェックをする。人によっては、公証役場に行って先に遺言の内容を相談をして、結局そこでは公正証書はつくらない、法務局に後で行って自筆証書遺言の保管を申請するということも、場合によってはあり得るかというふうに思います。またこのあたりについても少し考えていかないといけないなと思うところであります。

 最後に、上川大臣にお伺いいたします。

 今回の自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度が導入されることになりましたら、法務局の業務量は非常にふえてくることが予想されます。これについて、今の公正証書遺言であれば公証役場から何か通知したりする必要はないですけれども、今後、通知が必要になってきて、この通知が例えば過失で届かないとかいろいろなことになれば、後で大きな問題にもなりかねないので、非常に業務量がふえるんじゃないかなというふうにも思います。

 このあたりについて、マンパワーの増加とかいうことについてどのようにお考えか、最後にお伺いいたします。

○上川国務大臣 委員御指摘のとおり、この自筆証書遺言の保管制度が導入された場合に、遺言書の保管及び情報の管理に関する業務が新たに発生するということが見込まれるわけでございます。

 法務省といたしましては、業務量をしっかりと踏まえて、この制度実施に当たりましては、適切な体制のもとで対応してまいりたいというふうに考えております。

○國重委員 法定相続情報証明制度とかいろいろな業務が法務局にかぶさってくることになりますので、ぜひマンパワーの件もよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

 
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