衆議院法務委員会で、成年年齢の引下げ等に関する民法改正案の対政府質疑を行いました。
(2018年05月17日付公明新聞より)
少年法は保護政策の一環 「18歳成人」で国重氏が強調/法相 更生可能性に着目し議論
16日の衆院法務委員会で公明党の国重徹氏は、
成人年齢を18歳に引き下げる民法改正案に関連して、
少年法の適用年齢引き下げの議論について
「罪を犯した少年も未成熟で可塑性(変化する可能性)があり、
保護と支援を必要としているという観点から少年法のあり方を考えていくべき」と訴えた。
国重氏は、成人年齢引き下げに伴い、
政府が若者の消費者被害対策や自立支援策強化を検討していることを踏まえ、
「大人として自立するために必要な保護と支援をしていかなければならない考え方は、
(適用年齢に関わらず)保護政策の一環である少年法にも共通する」と指摘した。
上川陽子法相は、少年法を巡る議論について、少年の可塑性に着目するとともに、
成熟の度合いについても広く捉えるべきとの認識を示し、
「こうした問題意識に立って取り組むことが必要」と答えた。
以下、議事録全文です。
○國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。
約百四十年ぶりの成年年齢引下げ等に関する今般の民法改正案について、本委員会で委員各位がそれぞれの責任感を持って多角的な質疑をされていること、私は心より敬意を表する次第であります。私も与党の一員でありますけれども、全国民の代表として、政府に対しても時に厳しい質疑もしていかなければならないと思っております。
その上で、成年年齢の引下げの立法事実等について、本当にあるのかと政府を追及する姿勢、私は、これは一面では大事なことだと思いますけれども、他方で、若干の違和感を覚えるというか、政府が酷だなと感じることもあります。私は別に政府の擁護をするつもりで立っているわけではありませんけれども、政府が若干酷だなと感じるところもあります。
というのは、本法案は閣法ではあるものの、そもそも、成年年齢の引下げというのは、政府というより、我々立法府が主導してきたものだからであります。
平成十九年、憲法改正国民投票法の制定の際に、選挙権年齢や成年年齢も二十歳から十八歳に引き下げることが望ましいという、多くの政党、与野党で政策の大きな方向性が示されたと私は理解をしております。当時の議事録も読ませていただきました。それを受けて、その後、公職選挙法改正の際にも、民法の成年年齢引下げについて検討を加えるとの意思も示しております。
そして、それに先立つ平成十二年には、当時の民主党が、おおむね二年後を目途として成年者に関する法制度を整備して成年年齢を引き下げるとの法律案を提出しております。このときの筆頭提出者は、現在の立憲民主党の党首の枝野代表であります。法案を出すからには、立法事実があることを当然の前提としていたと私は考えます。
また、平成十二年といえば、まだ学習指導要領が、消費者教育の文言が入り始めたころです。当時、消費者契約法の改正の、どこまで消費者被害を防止するための施策が検討されていたのか、私は今把握しているわけではありませんし、また、していなかったなら、当時の状況でも対応可能と思っていたのだろうというふうに推察をいたしますけれども、ともかく二年を目途に対応でき得ると考えていたということであります。
私は、何もやゆするつもりで言っているわけでは全くございません。当時のそういった経緯を経て、また法制審の答申も受けて今般の改正案に至っているというようなことを、立法府としてこれは知っておくべきことだと思いますし、留意すべきであるし、また、当時の諸先輩にも確認しておいた方がいいのではないかというふうに、そういうことを私は言いたいと思っております。
だからといって、私は、過去に先輩方の決めたことに何も唯々諾々と従った方がいいと言っているわけでもありません。これまで多くの委員が当委員会で指摘をしているとおり、成年年齢の引下げに向けた環境整備は現段階でも十分なされていないというのは私も感じるところでありまして、これまでもっとやれることがあったのではなかろうかというふうに思うところでもあります。
ただ、この責任は、政府、行政府、ここだけにあるのではなくて、我々立法府の責任でもあって、私自身の責任でもあると思っております。ですので、少し質疑を聞いていると、私も慎重派なんです、慎重派なんだけれども、やはり少し政府が酷だな、我々もそういう一端を感じながらやっていかないといけないなというふうに感じているところであります。
私自身、若者が安心して活躍できる社会の土台をつくっていかなくちゃいけないということで、党内議論の際には、先ほど言いましたとおり、慎重派として、先輩方、これはプロジェクトチームで会議していましたけれども、かなり上の執行部も出てきて、相当な議論もさせていただきました。政府に対しても、党内議論の際にかなり厳しいことも言わせていただいたと思いますし、当初予定していた党内の法案了承の時期も大分先にして検討もさせていただきました。
いろいろな意見が我が党内でもありましたけれども、私は、慎重派だからこそここだけは譲れないということで、これまでは省庁が縦割りでばらばらでやってきて、余り連携されていないじゃないかというのは私も感じまして、やはりこれはしっかりと施行日までに、各省庁がばらばらではなくて省庁横断で検討会議をしっかりとつくって、進捗状況も確認して責任を持って進めるべきだ、省庁横断の検討会をつくってください、これをつくらない限りは法務部会長として私はこの法案は通しません、こういうような強い態度で臨ませていただいたところであります。
先ほど井野委員の方も、成人式の問題も触れられておりました。これにつきましても、実際、私は政府の方に、成人式の時期を大分前から、これは一年以上前から言ってきましたけれども、自治体に任せる、自治体の判断でというちょっとお寒い回答の状況でして、やはりこういったことではいけないということで、この省庁横断の検討会の中にも、成人式の時期、あり方についても含ませていただきました。
ただ、この成人式の問題も、私は個人的には、最後は祝日法の問題であるというふうに思っております。自治体や関係者の意見の集約というのは国会議員だけでは難しいので、政府の力というのを存分に活用させていただかないといけないと思っておりますけれども、最後に責任があるのは私は立法府だというふうに思っております。
こういった成年年齢の引下げについては、私自身ではないですけれども、諸先輩であったとしても、立法府が主導してきたということもいま一度確認した上で、質問に入らせていただきたいと思います。
まず、ちょっと井野委員も質問されていましたけれども、婚姻開始年齢について伺います。
今般の改正で、女性の婚姻開始年齢が十六歳から十八歳に引き上がることになりますが、十六歳又は十七歳で子供を産んだ場合、これは、その子供はどういう法律的な立場になるのか、どうなるのかお伺いいたします。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
婚姻年齢を十八歳に引き上げた場合には、十六歳、十七歳の女性は婚姻することができなくなりますので、十六歳、十七歳の女性が子を出産したとしましても、その生まれてくる子については、民法上、嫡出でない子となりまして、母の氏を名乗るとともに、原則として母の単独親権に服することとなります。
○國重委員 非嫡出子となるということですけれども、じゃ、その後、どうすれば嫡出子となることができるんでしょうか、お伺いいたします。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
婚姻関係にない男女間において生まれた子につきましては、民法上、嫡出でない子として扱われますが、母が婚姻開始年齢に達した後に、その子の法律上の父と婚姻した場合には、民法上、嫡出子の身分を取得するものとされております。その場合、その後、父母の共同親権に服することになりますし、戸籍窓口に届出をするのみで父母の氏を名乗ることができることとされております。
したがいまして、十六歳、十七歳の女性が出産した子は、一旦は常に嫡出でない子となりますが、そのために生ずる問題は、婚姻準正、この制度によりまして一定程度解消されることになるものと考えております。
○國重委員 では、今般の女性の婚姻開始年齢の引上げによって、これまでと違った法的不利益が生じることはあるのかどうか、お伺いいたします。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げました婚姻準正ということになりますと、嫡出子の身分を取得するわけでございますが、仮にその婚姻準正が得られなかった場合には、嫡出でない子のままとなるわけでございます。
ただ、この点につきまして、平成二十五年に嫡出でない子の相続分に関する民法第九百条第四号の改正がされたことに伴いまして、現行法上、嫡出子と嫡出でない子とで法的な取扱いが異なりますのは、父子関係の発生に認知が必要であるという点を除きますと、氏の取扱いと親権の取扱いのみでございます。そして、嫡出子でありましても、その両親が離婚した場合には、父母いずれかの単独親権に服することになりますし、通常は親権を取得した者の氏を名乗ることになるわけでございます。
このように、十六歳、十七歳の女性が出産した子供について婚姻準正が得られなかった場合の法的な取扱いは、嫡出子の両親が離婚した場合の取扱いとほぼ変わらないのではないかというふうに考えられます。
○國重委員 わかりました。では、そもそも婚姻開始年齢の立法趣旨は何なのか、お伺いいたします。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
婚姻開始年齢が定められている趣旨でございますが、身体的、社会的又は経済的に未熟な段階で婚姻することは、早期の婚姻破綻につながりやすいなど、その者の福祉に反するおそれがあることから、健全な婚姻をする能力を欠くと考えられる未熟な若年者の婚姻を禁じ、若年者を保護することにあると理解されております。
○國重委員 答弁いただいた中に、健全な婚姻をする能力という言葉がありました。
では、健全な婚姻をする能力とは一体どういう能力なのか、お伺いいたします。
○小野瀬政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、婚姻開始年齢が定められております趣旨は、身体的、社会的又は経済的に未熟な段階で婚姻をすることは若年者の福祉に反することから、未熟な若年者の保護の観点からその婚姻を禁じることにございます。
婚姻をすることは、夫婦として独立の家庭を設け、社会生活を営むことでございますので、婚姻開始年齢は、夫婦として独立の家庭を設けて社会生活を営むことができる必要最低限の成熟度に達する年齢であると言うことができます。
○國重委員 今、答弁をいただきました。
また、大塚委員の本会議質問に対する法務大臣の答弁の中で、婚姻開始年齢を十八歳にそろえる理由として、夫婦として共同生活を営むに当たって必要とされる社会的、経済的な成熟度、こういった言葉が出てきました。
今回の改正で引き下げられる民法の成年年齢は、親の同意がなくて単独で契約をすることのできる契約年齢と、親権に服する対象となる年齢を意味するわけでありますが、成年年齢で要求されている成熟度というのはどのようなものを考えているのか、伺います。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
成年年齢は、単独でさまざまな取引行為ができ、また、親権に服さなくなる年齢でございます。したがいまして、成年年齢につきましては、このような効果を生じさせるのに足りる程度の成熟度を備える必要があるものと考えられます。
本法律案との関係で申しますと、本法律案におきましては、これを十八歳に引き下げることとしておりますけれども、これにつきましては、現在の十八歳、十九歳の者は、消費者教育等の充実が図られた改訂後の学習指導要領に基づく教育を高等学校までの教育課程に受けており、また、ひとり暮らしを始めたり、就労して金銭収入を得たりしている者が多いなど、主として経済取引に着目した社会的、経済的成熟度を有するに至っていると考えられるためでございます。
○國重委員 では、婚姻開始年齢で要求される成熟度と成年年齢に要求される成熟度はどういう関係にあるのか。両者の間にはどういう違いがあるのか。現代社会で要求されるものを考えると、ほぼ私はニアイコール、同義ではないかというふうに思いますが、これはどうでしょうか、お伺いします。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、成年年齢を定めるに当たって考慮される成熟度は、単独で契約を締結することができるか、また、親権に服させる必要はないか、こういう趣旨に照らして判断されるものでございますが、婚姻開始年齢は、夫婦として独立に家庭を営んでいくことができるか、こういう趣旨に照らして判断されるものでございます。
したがいまして、それぞれの成熟度はそれぞれの趣旨に照らして判断されるものでございまして、必ずしも直接の関連性を有するわけではないと考えております。
もっとも、現代社会におきましては、婚姻開始年齢につきましては社会的、経済的成熟度を重視すべきものと考えられまして、その意味では、成年年齢と婚姻開始年齢において考慮されるべき成熟度には一定の関連性があると考えられます。
○國重委員 婚姻も一種の契約であります。人生をともにする伴侶を選ぶというのは、ある意味、人生最大の契約であるとも思います。そう考えますと、これまで、普通の、一般の契約ができる年齢が二十歳で、婚姻という人生最大の契約をできる年齢が十六歳とか十八歳であったことの方が、私は改めて考えると違和感を覚えるところでもあります。
かつては、婚姻開始年齢については、身体的発達もこれは多分に考慮されたんだろうというふうに思います。また、婚姻は通常、望む人だけがするものでありますが、取引、契約一般については誰しもが行い、誰もが被害者になり得るという意味でも、性質は異なるかもしれません。
とはいえ、過去はともかく、今は、社会情勢や時代背景が変化をして、婚姻開始年齢と成年年齢に求められる成熟度というのはかなりかぶってきているように思います。大臣はどのように思われるか、お伺いいたします。
○上川国務大臣 御指摘のとおり、十八歳、十九歳の者でございますが、いまだ成熟の過程にある者でございます。十八歳、十九歳の者を成年として扱うこととしても、若年者の自立を支援するための施策につきましては充実させる必要があるというふうに認識をしております。
平成二十一年十月の法制審議会答申におきましても、若年者の自立のおくれ等の問題につきましては、成年年齢を引き下げるだけでは自然に解決するとは考えられず、若年者の自立を援助するさまざまな施策をあわせて実行していく必要があるということが指摘されているところでございます。
この若年者の自立支援につきまして、政府としても、成年年齢の引下げのための環境整備、この一環として取組を行ってきたところでございます。(國重委員「質問は、婚姻開始年齢と成年年齢に求められる成熟度がかなりかぶってきている。これは多分、次の答弁のことを言われていないでしょうか」と呼ぶ)失礼いたしました。
成年年齢を定めるに当たりまして考慮される成熟度ということで御質問がございました。失礼いたしました。単独で契約を締結することができるか、また親権に服させる必要はないかという趣旨に照らして判断されるべき問題であるというふうに思っております。
他方、婚姻開始年齢につきましては、夫婦として独立した家庭を営んでいくことができるかという趣旨に照らして判断されるものである。
このように、それぞれの成熟度はそれぞれの趣旨に照らして判断されるものでありまして、必ずしも、直接の関連性、これを有するものではないということでございます。
もっとも、現代社会におきましては、婚姻開始年齢につきましては、社会的、経済的成熟度、これを重視すべきものと考えられ、その意味で、成年年齢と婚姻開始年齢におきまして考慮されるべき成熟度につきましては、一連の関連性があると考えられるわけでございます。
本法律案におきましては、若年者の社会的、経済的成熟度、それぞれの年齢に求められる趣旨に照らしまして、いずれも十八歳とすることが相当であると判断したものでございます。
○國重委員 大臣、私は、大臣はすばらしい大臣だと思いますけれども、しっかりと質疑を聞いて、それに応じて答弁していただきたい。そして、どっちかというと、形式張った答弁を今求めたわけではなくて、もうそれは民事局長からいただいたので、これをどう思うのかという大臣の率直な御意見を聞きたかったというのが私の思いでありますので、そういうものを酌んでぜひ答弁いただきたいというふうに思います。
ちょっと時間の関係で、たくさん用意していますので飛ばしますけれども、これは大事な法案ですので、野党の皆さんのこれから厳しい質問が続くかもしれませんけれども、私も真剣勝負でやりますので、ぜひ、緊張感を持って、よろしくお願いします。
昨日お越しいただいた参考人の御意見の中で、何名かに共通していた御意見がありました。私なりに解釈すると、それは、十八歳になれば急に大人になるということではない、いきなりさなぎからチョウになるのではない、子供から大人になって社会のフルメンバーシップになるためには、トライアル期間というか、モラトリアムの期間というものがあるんだということでありました。
広井参考人の論文の中には、十八歳を大人としての完成の時期ではなくて、大人としての経験を積む大人の始まりの時期として位置づけることによって、若者の未熟さを肯定し、その保護を正当に位置づける必要があると思われると述べられておりますが、このことは、山下参考人、宮本参考人とも共通していることであると私は理解しました。
この未成熟の時期、十八歳になったとしても、成人になったとしても未成熟の時期である、また成熟にはグラデーションもある、若者は、若年者は社会支援の対象であって、その保護を正当に位置づけて、自立できるような必要な取組を強化して、その機会を保障するべきということでありました。これまで余り強調されてこなかった点で、なるほどなというふうにも私も感じました。
そこで、成人であったとしても、成年であったとしても未成熟という段階があるんだという発想を国としても持って、未成熟の若者が自立した、成熟した大人になるために必要な支援を講じていく、場合によってはこの支援をより強化していく、こういった国としての大きな政策転換、またあるいは政策の強化が必要だと思います。こういうことがあって、百四十年ぶりの成年年齢引下げ、こういう本当に意義あるものになると私は思っております。
こういった政策転換、政策強化の必要性について、大臣、どのように考えるか、お伺いいたします。
○上川国務大臣 昨日の参考人の先生方からの御意見も、そのような、一つの節目ではあるけれども、その前後につきましてもしっかりと、自立のための支援策については強力に進めていくべきという御指摘が多くあったところでございます。
若年者の自立支援のための支援策、自立のための施策につきましては、環境整備の一環として取組をこれまでも行ってきたところではございますが、この後におきましても、しっかりと、省庁間の連携をとりながら、若年者の自立支援の方策、この充実強化に努めてまいりたいというふうに思っております。
○國重委員 ぜひよろしくお願いいたします。
そういった政策、国のあるべき方向性の検討、環境整備を検討するプラットホームこそが、今回立ち上げていただいた省庁横断の検討会議、上川法務大臣が議長を務める、成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議だと私はそう認識していますし、そう信じたいと思っております。
この会議についての詳細は追って質問したいと思いますが、上川大臣には、その議長として、百四十年ぶりの歴史的な法改正を行う法務大臣として、しっかりと音頭をとっていただいて、指揮をとっていただきたいというふうに思います。
これまで述べてきた、十八歳が成年になったとしてもまだ未成熟であり、大人として自立するために必要な保護と支援をしていかなければならないという考え方は、これは保護政策の一環である少年法にも共通することだと思います。
私も、弁護士時代、数多くの少年事件も担当してまいりました。その中でかかわってきた少年たちというのは、十八歳、十九歳を含めて、その多くが、生育環境や資質、能力にハンディを抱えている若者がいる、また、同世代の少年たちにすれば、幼い傾向があるというのも感じてまいりました。
また、少年と触れ合っていく中で、成人、高齢者とかとは違って、どんどん変わっていくというか、こちらの本気度に応じてその少年も変わっていく、可塑性に富んでいるということもかなり実感をいたしました。
だからこそ、罪を犯した少年も、未成熟で、可塑性があり、保護と支援を必要としているんだという観点から、少年法のあり方について考えていくべきだと思いますが、大臣の見解を伺います。
○上川国務大臣 まさに、今委員御指摘のとおり、少年法の趣旨につきましては、少年の健全な育成を期し、性格の矯正を目的とするものでありまして、その可塑性に着目して、再非行防止と立ち直りに機能する、このことを目的とするものでございます。
今般の少年法の少年の上限年齢については、引下げということで今回出しているわけではございませんけれども、今、法制審議会におきまして、この問題につきまして、少年法における少年の上限年齢のあり方とともに、若年者を含む犯罪者に対する処遇を充実させるための刑事法の整備のあり方について諮問を受けて、鋭意この法制審議会におきましての調査審議が行われているところでございます。
その大きな考え方は、可塑性をしっかりと着目をしていくということ、そして、成熟の幅につきましてもしっかりと広く捉えていく必要があるのではないか、こうした問題意識に立って取り組んでいくことが必要ではないかと思っております。
○國重委員 今回、十八歳、十九歳が、この法律が成立すれば、親権に服さなくなります。ただ、親権に服さなくなるからといって、国が保護しなくていい、支援しなくていいというわけではないし、やってはいけないということでもないと思っております。
少年法は、少年が一般的に未成熟であり、可塑性に富むため、犯罪を行った少年も、適切な措置をすれば健全な社会人として育つ可能性が高く、そうすることが、単に刑罰を科すことよりも、少年本人にとっても社会にとっても利益が大きいと考えられる、こういったことから合理性があるとされております。これは、これまで民法の成年年齢の引下げのときに答弁でも出てきた、若者本人の活躍と社会全体の活力という二面から考えて望ましいものとされている成年年齢引下げとも同じであると思っております。
成年年齢が引き下がったからといって機械的に少年法の適用対象年齢を引き下げるのではなくて、必要な保護を与えていくという視点が大切ではないかと思っております。
一方で、この少年法については、新聞社などが実施している世論調査で、適用対象年齢の引下げを求める意見、適用対象年齢が今現在二十のものを十八歳にしていくという意見が多数を占めることが多くございます。
しかし、この世論調査というのは、質問の仕方いかんで回答が随分と変わるものだと思っております。成年年齢引下げについても同様であって、きのうも参考人の方がその旨指摘されておりました。民法の成年年齢の世論調査については、ちょっと時間の関係で飛ばさせていただきます。前提知識を提供しないままに世論調査をしても、真の国民の声というのは出てこない、あらわれないと思います。
私が気にしているのは、先ほど触れた少年法に関する世論調査であります。少年法についての正確な認識というのは、国民に広まっていないと感じております。
新聞等で、テレビ等で報道される少年事件というのは、センセーショナルな事件が多くございます。残虐で凶悪なことをした少年に対して、成人とは違う、成人よりも軽い処分をするというようなことに対して、けしからぬ、とんでもない、被害者、遺族のことを考えろという感情が出てくるのは、私は、これはある意味普通のこと、当然のことなんだろうというふうに思います。
もっとも、今の少年法の枠内でも、成年年齢引下げの新たな対象となっている十八歳、十九歳の少年が一定の重大事件を犯した場合には、原則として、家庭裁判所から検察官に逆送されまして、死刑を含めて大人と同じような刑事処分の対象となります。
また、統計的に、少年事件は近年大幅に減少しておりまして、少年の重大凶悪事件も減少しております。しかも、この減少は少子化を超えるペースで進んでおります。
こういった少年非行の実態とか少年法の手続というのは、これは多くの一般人の皆様というのは知りません。
今後、国として少年法の適用対象年齢引下げに関する世論調査を実施することがあるのであれば、こういった十分な前提知識を提供した上で国民にその是非を問うていかないと、誤った前提知識で回答を、ステレオタイプのイメージでこういう回答をしてしまうので、これは国民の真の声ではないと思います。仮に少年法の引下げの世論調査をするのであれば、そういった調査でなければいけないというふうに私は思いますが、大臣の見解を伺います。
○上川国務大臣 お尋ねのような世論調査を行うか否かにつきまして、現時点で未定でございますが、一般論として、世論調査の特徴というのがございまして、判断をし、回答していただくためには、適切な質問項目の設定、そしてその項目を裏打ちするようなさまざまな情報の提供、こういったものがトータルになければ適切な判断をしていただくことができない、これはもう委員御指摘のとおりでございます。
その意味で、適切な質問項目の設定、さらにこれに沿う質問のあり方、これにつきましての検討、こうしたことが世論調査を正しく進めていくためには大変重要なことだというふうに思います。
○國重委員 大臣、ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。
私、今の少年法の制度というのは世界に誇るべきものだと思っております。国民の真の声を聞かずに、不正確に切り出された意見に押されて必要な支援が切り捨てられることがあってはならないと思っております。今後のしっかりとした取組をぜひお願いいたします。
未成熟な若者の中でも、より自立のための支援、保護を必要としているのが社会的養護のもとにある子供たちであります。この点、成年年齢が引き下がることによって社会的養護を必要とする子供たちが不利益をこうむってしまうのではないかといった懸念の声も一部にございます。
今、社会的養護のもとにある子供たちについては、より一層自立に向けた支援を行っていく方向性にあると理解をしております。児童養護施設や里親等では、原則十八歳までの措置を必要に応じ二十まで延長できることとしておりましたが、昨年度からの予算事業によって、進学している場合には原則二十二歳の年度末まで支援を延長できるようになりました。また、自立援助ホームについても、その予算事業や一昨年の児童福祉法改正によって、必要に応じて二十二歳まで支援を延長できることになりました。
こういった取組の根底にあるのは、年齢で一律に区切らずに、必要な支援を必要な子供たちに与えていくという考え方であると理解をしております。その支援が今般の成年年齢の引下げによって切り下げられてしまってはいけません。
また、社会的養護のもとにある子供たちというのは、とりわけ小規模ではなくて大規模の児童養護施設にいる子供たちについては、決められた予定の中、スケジュールの中で生活をしているために、いざ社会に出ると、自分で考えていかないといけないということで、日常生活のあらゆることで戸惑う。また、おびえてしまう場合もある。
一般の家庭であれば、親と一緒に買物に行く機会もあるし、親からさまざまなアドバイス等も受けますけれども、そういった機会が圧倒的に少ない子供たちであります。また、周囲に頼りにできる大人たちも少ない状況でございます。こういう子供たちこそ食い物にされやすい、被害に遭いやすい。だからこそ、一層フォローしていかなければならないと思っております。
成年年齢引下げによって社会的養護のもとにある子供たちに対する支援が切り下げられることなく、これまでの方針は変わらないというふうに理解していいのか、また、社会的養護のもとにある子供たちに対して、自立に向けたより一層の支援が行われるようにすべきと考えますが、厚労省の見解を伺います。
○山本政府参考人 児童福祉法においては、児童養護施設等に入所する社会的養護が必要な子供の年齢を原則十八歳としつつ、必要に応じて二十まで延長できることとしております。これらの年齢要件については、今回の成年年齢見直しにおいても、対象となる方々への支援の必要性を考慮し、現行の要件を維持することとしております。
また、御指摘のありましたように、子供が退所した後も円滑に社会生活を送ることができるよう、きめ細かな支援を行うことは重要と考えてございます。子供たちの自立支援については、入所中に金銭管理などの生活技能や社会常識等を習得するための支援を行っているほか、退所後も、一般的な大学卒業の年齢に当たる二十二歳の年度末までの間、児童養護施設等に居住し、必要な支援を受けられる事業を実施しております。
厚生労働省としては、社会的養護が必要な子供たちが児童養護施設等を退所した後も円滑に社会生活を送ることができるように、より一層の支援に取り組んでまいりたいと考えております。
○國重委員 より一層の支援に取り組んでまいりたいという力強いお言葉をいただきました。ぜひよろしくお願いいたします。
以上で私の本日の質問を終わります。ありがとうございました。