衆議院法務委員会で、民法改正案関する参考人質疑を行いました。
以下は議事録全文です。
○國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。
本日は、五名の参考人の皆様に当委員会までお越しいただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、まずもって心より感謝と御礼を申し上げます。
まず、中村参考人にお伺いしたいと思います。
中村参考人の論文、また日弁連の意見書、私、取り寄せたものに関しては全て読ませていただきました。非常に示唆に富むものでありまして、党内の議論、また当委員会でのこういった審議等にも活用させていただいております。
論文等に関しては、もう既に読ませていただいておりますので、ちょっときょうは違った角度から質問をさせていただきたいと思います。
先ほど、山下参考人、また宮本参考人、広井参考人等は、大人になるというのは、これは段階的かつ個人差のあるものであってということで、急に一定の年齢になったからといって大人が完成するわけではないというふうな御意見をおっしゃられました。
この成年年齢の下限、成年年齢の開始年齢というのを、今回、二十歳から十八歳に引き下げるという法案について今審議をしております。では、参考人の御意見として、成年年齢を開始するにはどの程度の成熟度が必要とお考えなのか、お伺いいたします。
○中村参考人 中村でございます。
大変難しい御質問をいただきまして、今ここから歩いてくる間で答えを見出すのはなかなか難しいと思ったところではありますが、御質問の前提のお話から、そして現状に鑑みて私の御意見を申し上げたいと思います。
まず、きょう、いろいろな参考人の先生からお話をいただきまして、若者の自立のあり方、社会参画のあり方という中でこの成年年齢の問題を位置づける必要があるのではないかという部分があったかと思います。
ただ、私がちょっと思いましたのは、若者が社会参画をする、社会について意見を述べていくということと、この民法の成年年齢の問題は必ずしもイコールなんだろうか。
つまり、この問題は、社会に参加するという側面もありますが、要するに一人で取引をするということなんですね。国民の世論がついてきていないのもその点にあるように思っていまして、今の若い人たちが必ずしも、親の相談なく買物をしたいと思っているだろうか、取引をしたいと思っているだろうかという点を正面から問うと、そういった点で、国民、特に若い人が求めていないのではないか。
それとは別に、先生方からお話があったような社会参画のあり方について議論をして深めていって、グラデーションの過程を高めていくということは非常に必要だと思います。
それで、民法の成年年齢についての御質問ですが、御承知のとおり、民法の成年年齢については、グラデーションで決めることが性質上できないとされています。それは、取引の安全というものがありますので、相手方が人によって判断をたがいにするというわけにはいかないものですから、どこかの年齢で区切らなければいけない。そういった意味で、日本では、歴史的な経緯も踏まえて、二十ということで定着をしております。
そこで、先生の大変難しい御質問ですけれども、私は、やはり二十、若しくは、現状ではそれより高い年齢でも構わないのではないか、二十二とか二十三でも構わないのではないかと思っております。
その理由は、一つは、現状まで百二十年の間、若い人、社会から、取引ができる年齢を二十とすることによっての不都合がそれほど聞こえてきていないのではないかという点。
それと、日本の現状において、高校進学率が非常に高いわけですから、十八歳になって、人によっては十九歳の手前ですね、そこで初めて高校を卒業して、社会にデビューしていくわけです。大学であったり、専門学校であったり、社会人であったり、さまざまな形ではありますが、地方から東京に出てくる、学校から社会に出ていく、親のもとを巣立つ、いろいろな形で社会に出ていく。その前に大人にしていく、前に一人で取引、契約ができるというふうにするよりも、社会に出た後で、親と相談しながら、二年間、準備期間があるわけです。
きょう先生方からも、社会に参画していくためには準備期間があってもいいというお話がありましたが、実は、一人で買物ができるかどうかという点に関しては、今まで日本は、二年間の準備期間を図らずとも置いていたのではないかというふうに考えます。
さらに、大学進学率が上がって、お金を使うということは自分で稼ぐということが前提になっていると思われますので、そうだとすると、働き始める年齢はいつなんだろうか、大学進学率などのことを考えると、二十若しくは二十二や二十三というものも説得力があるのではないか、そういったものを私としては念頭に置いております。
○國重委員 ありがとうございました。突然で、難しいと言われる質問にお答えいただいてありがとうございます。
じゃ、さらに、中村参考人にお伺いいたします。
これまで、婚姻開始年齢というのは十八歳でした。今回、女性の婚姻開始年齢を十八歳に引き上げる、婚姻開始年齢は男女ともに十八歳ということにしております。
この婚姻開始年齢を十八歳とすることを適当と考えるか、また、婚姻開始年齢に関しての成熟度についてどのようにお考えなのか。きょう、限られた十五分という中で、難しい質問かもしれませんけれども、できるだけ簡潔にお答えいただければと思います。
○中村参考人 また大変難しい質問をありがとうございます。
婚姻年齢の問題もあわせて議論されていることは承知しております。
まず、私は、民法の行為能力、親権の問題の成年年齢の問題と婚姻年齢の問題はやはり趣旨が違うものですから、分けて議論するべきだと思っております。買物ができるということと結婚ができるということとはまた違ったものですから、分けて議論するべきと。
その上で、先生から御質問があった婚姻年齢を十八歳でそろえるという点については、これは、男女の平等を図るという点であるということと、十六歳から十八歳に上げる、むしろ、十六歳と十八歳に差を設けるということにやはり問題があるという指摘があるものですから、私としては、それをそろえるということには賛成をしているところであります。
ですので、民法の成年年齢の問題と婚姻年齢の問題は、できれば切り離して議論をするべきではないかなというふうに思っています。
婚姻年齢と買物ができる契約年齢との間にそうすると差が生まれるのではないかという点もあるかと思いますが、この点については、もともと、買物をするということと結婚するということで持っている意味が違いますので、異なることについては私としてはあり得る考え方だと思っています。
○國重委員 続きまして、宮本参考人にお伺いします。
婚姻開始年齢と成年年齢、今の現行法ではこれは違う年齢になっております。今、成年年齢は二十、婚姻開始年齢は、男性は十八歳、女性は十六歳ということで、これは分かれております。
今回、これが結果的にせよ一緒になるということでありますけれども、これについてどう思うのか、また、婚姻開始年齢の成熟度と成年年齢に関する成熟度、この関係についてどのようにお考えか、捉えているのか、お伺いいたします。
○宮本参考人 ありがとうございます。
結論から言うと、やはり、結婚年齢を十八歳とするのであれば、成年年齢を十八歳にして一致させる方がすっきりする。なぜかというと、結婚をして、みずから経済的な自立、それから社会的な自立、その他、結婚生活を機に高まっていくというのは、これは長い歴史上そうで、大人になるというのは結婚して家庭を持つという世間の常識があったくらいのことでありまして、結婚は十八歳だけれども、民法上は消費者としてはフルの権利を持たないというような、そういうかなり矛盾があるであろうというふうに思います。
それから、結婚して家庭を持ち子供を産むというようなこととなったときに、おのずとそこにより一層の成熟度というものがあるわけでありまして、何も二十歳まで待つ必要はないだろうというようなことでございます。
○國重委員 続きまして、山下参考人にお伺いいたします。
山下参考人の論文も読ませていただきまして、これまでとは、私が読んださまざまな論文とはちょっと違った切り口の、いわゆるステレオタイプではない、やわらかい視点で書かれてあるように感じまして、関心を持って興味深く読ませていただきました。
その中に、若年者が未熟であることと若年者の自立のおくれというのは似て非なるものなんだというようなくだりがございました。これについて具体的にどのように捉えているのか、お伺いいたします。
○山下参考人 済みません、もう一度。
○國重委員 じゃ、もう一度、質問させていただきます。
法制審の最終報告書の箇所を、若年者は未熟であるということと若年者の自立のおくれというのは、これは似て非なるものなんだというふうに書いてありました。これは具体的にどういうことなのか、どのようにお考えなのか、お伺いいたします。
○山下参考人 申しわけありません、少し前に書いた論文ですので。
まさに、ここの部分の趣旨というのは、未熟であるということと、今までお話があったように、若者が自立していくというものが段階的であるということとの関係を書きたいと思っていたわけでございまして、未熟であるから自立について一律に否定してしまうということについての違和感というものを書きたかったということでございます。
○國重委員 では、続きまして、伊達参考人にお伺いいたします。
今回、成年年齢を十八歳に引き下げた場合、社会的養護に関してさまざま懸念されることがあるかもしれません。その中で、とりわけ参考人が懸念されていると感じることがあればそれは何なのか、お伺いしたいと思います。
○伊達参考人 御存じのように、子どもの権利条約その他で、子供自身が主体者としていろいろなものを決めていくという趣旨、そのことは大変いいことだろうというふうに考えておりますが、もう一方で、社会が育てるというときのその社会の責任が二十から十八になってしまうと、その二年間、むしろ薄まってしまうのではないか、早く責任が解除されてしまうのではないかというところを大変私の方は懸念をしております。
○國重委員 我々としても、今回の成年年齢の引下げを機に社会的養護が必要な若者たち、若年者に対してこれまで以上の社会的な支援、保護が引き下がることがないように、これはしっかりと私も責任を持って取り組んでまいりたいというふうに思います。
私も、我が党の社会的養護のプロジェクトチームの座長として、さまざまな現場も今まで行かせていただきました。ファミリーホームに行った際に、そこで育った若者で当時大学生だった青年、若者がこういう苦労話をされていたんですけれども、施設は出ないといけないけれども、家は出ないといけないけれども、社会的には、二十から、二十歳からが成人のため、携帯の契約、不動産、賃貸借契約、クレジットカード契約など、全て一人ではできないので不便だというようなことを言っていました。
これに関して、現場にかかわってきた参考人として、現場の実態がどうなのか、どのように受けとめておられるのか、お伺いしたいと思います。
○伊達参考人 まず一つは、十八歳まで、携帯が持てるような、施設の経済的な問題もあって施設によっては本人に持たせない施設、それから、持たせながら何とかその支払いの部分をカバーできるように一緒に考えるという幅広いやり方になっておりますが、経験的に言えば、生活保護と同じように、多くの同年齢の子供たちがやっていることは全て、やはり施設あるいはファミリーホームにいる子供たちも当然できるような条件を整えてやるということが必要だろうというふうに考えております。
○國重委員 時間が参りました。
きょう、広井参考人にも本当は質問しようと思って最後に準備しておりましたけれども、ちょっと私の要領が悪くて時間不足で済みません。ただ、論文は、私が手に入れたものは全て読ませていただきまして、今後の審議にしっかり生かしてまいりたいと思いますので、御容赦いただければと思います。
きょうは、五名の参考人の皆様に貴重な御意見を賜りましたこと、改めて感謝と御礼を申し上げまして、今後の審議にしっかりと生かしていくことの決意を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。