公明党 所有者不明土地問題等対策PTの第3回会議を開催し、
関係省庁よりヒアリングを行いました。
(2017年11月27日付公明新聞より抜粋)
所有者不明の土地 論点整理 公明党「対策プロジェクトチーム」の議論から
「所有権絶対」の再考
◎管理の責務規定を
◎登記は任意でいいか
「土地は公の物で国民には利用権があるだけ。
そう考えれば、相続登記も土地の管理も放置している人には、
『法は権利の上に眠る者を保護しない』との格言に従った厳格な対応ができる」
これは9月に東京都内で開催された所有者不明土地に関する東京財団のフォーラムで
聴衆から出た発言だ。土地問題の専門家が集った場所で、
民法の「所有権絶対」の原則に対する再考を求める声が上がるほどこの問題は難しい。
所有権絶対とは、公共の福祉に反しない限り、
所有物を自由に使用・収益・処分できることをいう。
そのため放置された土地でも所有者の同意なしには、だれも手が出せない。
一般財団法人国土計画協会・所有者不明土地問題研究会
(座長=増田寛也野村総合研究所顧問)は6月、地籍調査を活用した推計で、
全国の所有者不明土地は約410万ヘクタール(九州の広さに相当)に上ると公表した。
所有者不明になる大きな要因に相続登記の放置がある。
何世代も相続が重なると相続人が増え、登記がないと所有者の探索は難しい。
昭和初期に50数人だった共有地が、現在700人になっている例もある。
こうした土地を公共事業で買収するには、
所有者全員を探索する必要があり大変な時間とコストがかかる。
そもそも不動産登記は義務ではない。
登記は所有者の権利保全と取引の安全の確保が目的で、
行政が所有者を把握するための制度ではないからだ。
資産価値のある土地であれば相続登記も進むが、
そうではない土地では時間とコストをかけてまで登記をしても実益がない。
公明党PTに招かれた同研究会の増田座長は、
相続登記の推進など所有者不明土地を増加させない対策として、
土地所有者の責務を土地基本法などで明記する必要性を訴えた。
厳しい将来予測
所有者不明土地の増加要因に歯止めをかけないと将来どうなるか―
2016年の地籍調査などを基に国土計画協会・研究会が行った推計では、
不明土地は20年から5年ごとに約60万ヘクタール(山口県の面積とほぼ同じ)以上増え続け
40年には約720万ヘクタール(北海道本島の土地面積に相当)になる。
利用促進への課題
◎収容法手続きの改善
◎いらない土地の行方
所有者不明の土地を、公共の目的でどう円滑に利用するかも重要な論点となる。
現行制度としては、所有者不明の土地を公共事業で使う場合、
土地収用法による不明裁決制度が利用できる。
所有者の氏名・住所を調べても分からなければ、
調査内容を記載した書類を添付するだけで氏名・住所がないまま収用裁決を申請できる。
裁決されたら、起業者は土地の権利を所有者の意思にかかわらず取得できる。
強力な制度だが、探索など手続きに多大な時間と労力が必要だ。
また、民法上の不在者財産管理制度もある。
所有者不明土地の利害関係人または検察官の申し立てによって、
家庭裁判所が不在者財産管理人を選定し、土地を管理させる。
しかし、地方自治体がどのような場合に申し立てができるかが不明確な上、
不在者1人につき管理人1人を選任するため、
不在者が多数に上ると手続きに多大な時間と労力が掛かる。
このほかにも、区画整理や土地改良事業などに関し対応策が用意されているが、
円滑な利用促進には困難が伴う。
政府は今年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で
「公共目的のための利用を可能とする新たな仕組みの構築」を掲げ、
来年の通常国会への法案提出をめざし関係省庁が検討を進めている。
例えば国土交通省は、土地収用に関する所有者の探索範囲を限定できないか、
放棄された土地の管理責任をどこに課すかなどを検討している。
また、地方自治体は相続人が処分に困っている「いらない土地」の扱いにも悩まされている。
国も地方自治体も公共目的で使う予定がない限り土地の引き取りはしない。
そのため放置される土地が増えることから、所有権放棄の制度を求める意見もある。