公明党児童虐待防止・社会的養護検討PTの座長として、
佐々木事務局長をはじめPTメンバーと作成作業にあたってきた
「子どもの最善の利益に照らした社会的養護の充実についての提言―家庭養護・家庭的養護の推進」
を、塩崎恭久厚生労働大臣に手渡しました。
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「子どもの最善の利益に照らした社会的養護の充実についての提言
―家庭養護・家庭的養護の推進」(PDF)
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「子どもの最善の利益に照らした社会的養護の充実についての提言
―家庭養護・家庭的養護の推進」
※改行位置等が正式なものとは異なります。
いかなる子も、無上の尊厳性と可能性をもった、かけがえのない社会の宝である。
わが国において、保護者による適切な養育が受けられず、
社会的養護のもと生活している子どもたちは約4万6000人おり、
しかもそれが増加傾向にあることから、
すべての子どもを健やかに育むための社会的養護の取り組みがより重要性を増し、
その充実が求められているところである。
社会的養護において、
施設養護は人として生きていくうえで最も大切な基盤となる愛着形成が困難という問題があり、
「子どもの最善の利益」(児童の権利に関する条約第3条)の観点からは、
施設養護から、家庭的な環境の中で子どもを養育する家庭養護、家庭的養護への流れを
加速させなければならない。
政府は、平成26年度から平成41年度の15年間をかけて、
本体施設、グループホーム、里親・ファミリーホームによる養育を
概ね3分の1ずつとする将来像を掲げているが、
まずは、この目標を前倒しで達成するため、十分な予算と人員を確保することが必要である。
そして里親・ファミリーホームへの委託率についてはさらに高い目標を設定し、
その目標に向けた養育環境の整備を促進していくべきである。
一方、社会的養護を必要とする子どもは、虐待等によって心身に傷を抱えていることが多く、
子どもとの個別的な関わりがより深まる家庭養護、家庭的養護を促進するにあたっては、
その支え手となる里親や職員等を支える、
より専門的、財政的な支援や協働体制を構築することが肝要である。
このような取組みなくして、様々な課題を抱えた子どもを健やかに育み、
その社会的自立を支えていくことはできない。
また、すべての子どもを健やかに育てるための支援施策に、
地域・自治体間でばらつきがあることは望ましくない。
政府においては、すべての子どもの適切に養育を受ける権利を担保する観点から、
この社会的養護に関する施策の格差の解消に向けた取り組みを行うべきである。
以上を念頭に、家庭養護、家庭的養護の推進のため、以下の提言を行う。
1. 家庭養護・家庭的養護の推進
〇 本体施設、グループホーム、里親・ファミリーホームによる養育を概ね3分の1ずつとする目標を
前倒しで達成するため、十分な予算と人員を確保すること。
里親・ファミリーホームへの委託率についてはより高い目標を設定し、
その目標に向けた養育環境の整備を促進していくこと。
〇 虐待等様々な課題を抱えた子どもを健やかに育み、その社会的自立を支えていくため、
家庭養護・家庭的養護の支え手となる里親や職員等に対する
より一層の専門的、財政的な支援や協働体制を構築すること。
2. 里親制度の普及推進
〇 里親制度や養子縁組の普及、社会の理解を促進するため、市町村や関係機関、団体等と連携し、
市民に届く、わかりやすい啓発活動を強化すること。
〇 里親委託を推進するために、児童相談所に専任の里親担当職員を配置するとともに、
職員の専門性と経験を向上させること。
児童相談所職員の多忙により里親委託が進まないことのないように、
職員の増員など体制を改善すること。
里親支援機関事業の拡充、児童養護施設の里親支援専門相談員の配置もさらに進めること。
〇 子どもの最善の利益の観点から「里親委託優先の原則」が実現されるよう、保護者に対し、
里親制度について丁寧かつ十分な説明を行い、里親委託への理解を得るようにすること。
〇 養子縁組里親、親族里親を含むすべての里親に対する十分な研修、モニタリング、相談、
里親同士の交流などの支援体制を整備、充実させること。
里親、ファミリーホームに対するレスパイトケアを充実させること。
3. 特別養子縁組の推進
〇 未婚・若年など望まない妊娠による出産の場合に、
妊娠中からまたは出産直後の相談に応じ、新生児段階で里親の家庭へ委託する、
特別養子縁組を前提とした里親委託を全国的に普及させ、推進すること。
〇 妊娠中や出産後の相談に丁寧に応じられるよう、
特別養子縁組を前提とした新生児の里親委託担当の職員の配置や、
人手不足解消のための人員増等、児童相談所の体制を充実させること。
〇 里親が特別養子縁組成立までの監護期間に育休を取ることができるよう、
育児介護休業法上の育児休業の対象となる子の範囲について検討すること。
4. 自立支援の充実
〇 児童養護施設等に進路指導、職業指導等を行う専門的な職員、
自立支援コーディネーターを配置し、自立支援の体制を強化すること。
措置児童に対する奨学金や住まいの提供など、
大学進学等を推進するための支援策を拡充すること。
〇 施設入所児童等に対する職業指導や職場開拓について、施設と児童相談所、
民間事業者が連携して行う好事例を紹介し、周知するなど、就職支援の充実を図ること。
就職に必要な運転免許取得の機会、費用の支援を行うこと。
〇 措置解除後の生活及び就労支援に取り組む民間団体への支援も含めた
相談支援事業の拡充、居場所づくり、見守り支援の体制を整備すること。
〇 社会的な自立は18歳では困難である現状を踏まえ、
18歳を超えた後も、措置延長により、必要な支援を継続できることとするとともに、
20歳到達後も自立援助ホーム等を活用して支援を継続する仕組みを検討すること。
また、身元保証人確保対策事業を推進・充実させるとともに、
退所児を一対一で長期間にわたってサポートする仕組みも速やかに検討すること。
5. 施設養護の改善
〇 児童養護施設等の小規模化、地域分散化を進めるとともに、
それに対応した高いスキルをもった職員による複数体制がとれるよう、
人材の育成、研修の充実、職員配置の適正化、処遇の改善を図ること。
〇 子ども一人ひとりにプライバシーが守られる十分なスペースを確保するなど、
児童養護施設の生活環境の改善を行うこと。
以上