2022年9月29日付公明新聞より転載
インターネット上の誹謗中傷による被害が後を絶たない中、改正プロバイダー(接続業者)責任制限法が10月1日に施行される。
同法の柱は、SNS(会員制交流サイト)などで人権を侵害した投稿者の特定に必要な手続きを簡素化したことだ。被害者を迅速に救済する上で大きな意義がある。
ネット上の人権侵害は深刻化しており、総務省が運営する「違法・有害情報相談センター」が2021年度に受け付けた相談は6329件に上り、受け付けを開始した10年度に比べ約5倍に増加している。
人権侵害を救済する手段に損害賠償請求があるが、被害者が投稿者を特定しなければならない。
匿名が多い投稿者を現行制度で特定するには、通信記録を持つSNS運営会社と、氏名や住所などを把握する通信事業者に対し、別々に裁判手続きを行って投稿者の情報開示を求める必要があった。
しかし、これでは投稿者の特定までに1年以上かかることもある。被害者の精神的、経済的な負担は大きい上、被害の救済も遅れてしまう。このため、手続きの簡素化・迅速化が求められていた。
そこで改正法では、被害者の申し立てを受けた裁判所が、SNS運営会社と通信事業者の双方に対し、投稿者に関する情報開示を命令できるようにした。
これまで2回必要だった手続きが1回で済むことで被害者の負担は軽減され、投稿者特定までの期間短縮も見込まれる。被害者の泣き寝入り防止と被害の速やかな救済につながり、匿名を隠れみのにした悪質な投稿の抑制も期待できる。
公明党はネット上で中傷された女子プロレスラーが命を絶った問題を受け、20年5月にプロジェクトチームを設置し、政府に提言するなど法整備を推進してきた。今年7月には「侮辱罪」を厳罰化する改正刑法も施行されている。
他人を誹謗中傷する行為は犯罪であり、重大な人権侵害である。この点を改めて強調しておきたい。