活動報告

国会質疑

衆・予算委で「遺留金問題」に切り込む

身よりのない方が亡くなったあと残された現金(「遺留金」)は、
それが少額の場合、適切な処理制度が整備されておらず、
結果として地方自治体が半永久的に預からざるを得ないという実態が生じています。
大阪市をはじめ、この塩漬けとなった現金の取扱いに苦慮している現場の声を受け、
衆議院予算委員会で上川法務大臣ほか関係閣僚と議論を行いました。

また「障がい未満の難聴」について、これまで繰り返し予算委員会分科会で質問し、
制度のはざまで支援が抜け落ちないよう厚労省内の関係部局が連携する重要性を
訴えてきましたが、それを受け新たに省内連絡会議を立ち上げたとの答弁をいただきました。

(2018年2月9日付公明新聞より)

8日の衆院予算委員会で公明党の国重徹氏は、
身寄りのない人らが死後に残した現金を市町村が預かる
「遺留金」が増えている問題について質問し、
「多額の遺留金が発生しているのは立法の不備であり、早急に対処すべきだ」と訴えた。

国重氏は、引き取り手がいない遺留金は故人の葬祭費に充当でき、
残額は清算手続きなどにかかる費用を差し引いた分を
国庫に納める仕組みになっていることを確認。
遺留金が少額しか残らなかった場合、国庫に納める手続き費用を賄えないため、
自治体が対応に苦慮しながら手つかずで保管している現状に言及した。

その上で、「現行の相続財産管理制度は少額の遺留金の処理に対応できず、
それをカバーする法整備もされていない」と訴え、制度が現実に追い付いていないと指摘。
多くの自治体から法改正の要請が出ていることや、
身寄りのない高齢者が今後増えるとみられることも踏まえ、
「相続財産管理制度を遺留金が少額の場合でも現実に運用可能にする見直しが不可欠だ」
と訴えた。

上川陽子法相は、「関係省庁と連携し、遺留金の取り扱いについて必要な検討を行いたい」
と答えた。

>> [外部リンク]公明ニュース「少額の遺留金 処理可能に」


以下、議事録全文です。

○國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 身寄りのない人が亡くなって受取手のない現金を地方自治体が保管をする遺留金、この行き場のない、処理できない、塩漬けとなった遺留金がふえ続けて、各地の自治体がその取扱いに苦慮をしております。例えば、私が在住をしている大阪市、この大阪市が保管をする遺留金は、平成二十九年三月末時点で約七億三千万円になっております。

 きょうは、この遺留金の処理をメーンテーマにして質疑をしていきたいと思いますけれども、私が最も言いたい結論部分を先取りして言いますと、塩漬けになった多額の遺留金が発生しているのは、これは立法の不備であって、早急にこれに対処しなければならないということであります。

 まず、野田総務大臣にお伺いいたします。

 全国の自治体で塩漬けになっている遺留金があるということ、こういった事実を御存じでしょうか。端的にお答えいただければと思います。

○野田国務大臣 お答えします。

 身寄りのない独居者の死後に残された遺留金を自治体が保管し、それが多額に膨らんでいる、その事実については報道等で承知しています。

○國重委員 野田総務大臣も御存じということですが、では、なぜそもそも自治体に塩漬けとなる遺留金というものが生じるのか、順次確認してまいりたいと思います。

 御参考までに、配付させていただきました資料一の「遺留金処理の流れの概要(遺留金が塩漬けになるまで)」と題するこのフローチャート、これは新聞各紙ほか文献を使ってこちらの方でまとめさせていただいたものでありますけれども、このペーパーをごらんいただければと思います。

 身寄りのない独居者が亡くなった場合で家族や親族に連絡がとれない場合は、原則として各自治体が火葬、埋葬を行う、この費用については第一義的に亡くなった故人の遺留金を充てることになる、厚労省、この理解で間違いないでしょうか。

○宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきましたとおり、墓地、埋葬等に関する法律におきまして、死体の埋葬又は火葬を行う者がいないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が死体の埋葬又は火葬を行うこととされているところでございます。

 また、埋葬又は火葬の費用に関しましては、まずは死亡者の遺留金等から充当することとされているところでございます。

○國重委員 そうすると、遺留金を火葬、埋葬費に充ててもなおお金が残った場合、その残余の遺留金の取扱いについてはどうなるのか。現行法上特段の規定はないので、一般原則である民法の規定に基づいて取り扱われる、こういう理解でいいのかどうか、厚労省に答弁を求めます。

○定塚政府参考人 遺留金を埋葬の費用に充てた後の残余の遺留金がある場合でございますが、墓地埋葬法におきましても、また墓地埋葬法において規定を準用しております行旅病人及行旅死亡人取扱法におきましても、この取扱いを定めた特段の規定はございませんので、一般法である民法の規定に基づき取り扱われることとなると考えているところでございます。

○國重委員 一般原則である民法の規定に基づいて取り扱われるということになりますと、火葬、埋葬費に充ててもなおお金が残った場合、その残余の遺留金については、相続人がいれば相続人に引き渡す。親とは縁を切って、もう一切かかわりたくない、こういったことなどを言って相続人がその遺留金の受領を拒絶した場合には法務局に供託をする、そういった処理の流れになります。

 一方で、問題となるのは、相続人がいない場合の残余の遺留金の処理でございます。

 法務省に伺います。一般的に、相続人のいない財産について、現行法上どのように処理されることになるのか、答弁を求めます。

○小野瀬政府参考人 お答えいたします。

 相続人のいない財産を清算する手続といたしまして、民法は、相続財産管理制度を設けております。

 この制度におきましては、相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とされ、利害関係人又は検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産管理人を選任することとされております。

 相続財産管理人は、相続人を捜索しつつ、相続財産を管理、清算いたしまして、なお残余財産があるときは、その財産は国庫に帰属する、このようにされております。

○國重委員 ありがとうございました。

 そうですね。遺留金の処理につきましては、利害関係がある場合は自治体が家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てて、この相続財産管理人というのは弁護士等がなりますので、その弁護士らに残った遺留金の清算を依頼することになるということになります。

 この申立てには、管理人の報酬などに充てるために、大体、通常約三十万円から百万円程度の費用が必要になりまして、この費用は遺留金の中から支払われることになります。そして、亡くなった方、故人に債権や債務がある場合には、管理人がそれらを清算した上で、それでもなお遺留金が残れば、それを国庫に入れることになります。

 もっとも、遺留金が相続財産管理人の申立てに必要な費用に満たない場合、例えば、身寄りのない人が亡くなった場合に、四十万円の現金が残ったとします。この場合、埋葬費等が二十万円かかれば、これを当初の四十万円の遺留金から控除をしまして、残余の遺留金は二十万円となります。仮に相続財産管理人の選任申立てに必要な費用が三十万円とした場合、この残余の遺留金二十万円は申立ての費用に満たないので、自治体としては、わざわざ公費を出してまで申立てをする必要はない、意味がない、かえって費用倒れになって市民の理解が得られない、そういったことで、このような場合、自治体は少額の遺留金を歳入歳出外現金として保管せざるを得ないことになりますが、この行き場のない、塩漬けとなった遺留金が多額に今膨らんできております。そして、この塩漬けの遺留金は、ひとり暮らしの高齢者の孤独死などが今後ふえてくれば、それに伴って更に増大していくものと見込まれます。

 そこで、一部の自治体は、窮余の策としまして、残余の遺留金を、家財処分とか、また永代供養とか、あるいは地元の社会福祉協議会への寄附などに充てて使い切っているというふうに聞き及んでおります。

 しかし、この点に関して、例えば生活保護受給者が亡くなった際に残った遺留金を永代供養や寄附に充てることについて、会計検査院は問題があると指摘をしております。

 具体的には、平成二十六年三月に会計検査院が公表しました「生活保護の実施状況について」と題する報告書の中でそのことを指摘しておりますけれども、会計検査院はどういった点に問題があると考えているのか、お伺いいたします。

○腰山会計検査院当局者 お答えいたします。

 会計検査院は、平成二十六年三月の報告書において、一部を葬祭扶助費に充当した残余の遺留金が少額である場合に、相続財産管理人の選任の申立ての手続を行わずに、葬祭扶助の対象となる費用以外の永代供養料等の使途に充てていた事態について、このような取扱いは生活保護法第七十六条等に照らして現行制度上認められないことや、事業主体である地方公共団体が亡くなった被保護者の少額の遺留金を長期間にわたり保管しなければならない状況も見受けられ、遺留金の処理は事業主体にとって大きな負担になっていることなどを検査の状況として記載をしております。

 そして、厚生労働省において、残余の遺留金の取扱いについて、事業主体がその適切な処理を図ることができることとなるよう関係省庁と連携するなどして検討することに留意して、今後とも各種施策の立案、見直しなどに努めていく必要があることなどを会計検査院の「所見」として記載しているところでございます。

○國重委員 るる御答弁いただきましたけれども、先ほどの永代供養とか寄附などに遺留金を充てることにつきましては、要は、相続財産管理人の選任の申立ての手続をせずに、法令上の根拠なく遺留金を処分している、このことを問題視しているわけでございます。私自身も、これはやはり相当でないというような理解をしております。

 こういった現行制度上認められていない取扱いを一部の自治体が行っている、この背景には、相続財産管理人選任の申立ての費用に満たない少額の遺留金については自治体が歳計外現金として保管せざるを得ず、それが塩漬け状態となって自治体の負担がふえていく、全くもって価値的でない、こういった思いもあるからだと推察をいたします。

 この問題の急所は、現行の相続財産管理人制度は少額の遺留金の処理に対応できるものとなっておらず、それをカバーする法整備もされていない、これがこの問題の急所であるというふうに考えます。一言で言えば、制度が現実に追いついていないということであります。

 とりわけ、生活保護受給者の遺留金処理の問題につきましては、自治体の負担が今急増しておりまして、この対策が急務でございます。

 これについて、自治体は、法改正を繰り返し厚労省に要請をしております。

 例えば、大阪市では、平成二十四年十月、平成二十六年十月に、厚労省に遺留金処理の取扱いに関する要請をしております。それらの書面の中には、遺留金の処理方法について、大阪市は努力してきたんだけれども、多額の遺留金を保管せざるを得ない状況であり、その管理や関係書類の保管にも苦慮しているところです、このままでは処理を進めるめどすら立たず、遺留金及び関係書類を未来永劫保管し続けることになります、こういったことまで述べて、法改正等を強く要望をしております。

 まず、これらの要望について厚労省は認識しているのか。もう当然認識していると思いますけれども、あえて端的に確認のみでお伺いいたします。

○加藤国務大臣 今の御指摘、大阪市以外からも含めて、いろいろなところからそうした御指摘がございます。

 大きく二つあると思います。一つは、そうして残った遺留金をほかの債権、生活保護者の債権に優先的に充てることができないのかという話と、それから、今おっしゃった、少額の場合どうするのかということであります。

 ただ、これについては、いずれにしても私有財産ということでありますから、例えば、それを生活保護の債権に優先的に充てるって、ほかにも債権があったときにその順番をどうするのかというような問題、あるいは、そもそも亡くなった方の私有財産というのはどう扱うのかという問題もございます。

 そこに大きな問題があるということは我々も重々認識しているんですが、私ども厚生労働省の所管の中だけで解決するというのはなかなか難しい、慎重な検討が要るのではないかというのが今の認識ではあります。

○國重委員 加藤厚生労働大臣みずからお答えいただきました。今、政府参考人が答えるかと思っておりましたけれども、みずから出ていただきまして、ありがとうございます。

 その上で、先ほどの、これも会計検査院の答弁の中でも出ておりましたけれども、平成二十六年三月に会計検査院が公表しました先ほどの「生活保護の実施状況について」と題する報告書では、厚生労働省に対しまして、残余の遺留金の取扱いについて、事業主体がその適切な処理を図ることができることとなるよう関係省庁と連携するなどして検討すること、このことも指摘をされております。

 そこで、この会計検査院の指摘、また大阪市を始めとする各自治体の要望を受けて、先ほどは認識されているということをおっしゃいましたけれども、これまでどのような検討を進めてきたのか、お伺いいたします。

○加藤国務大臣 まず、会計検査院からの指摘でありますけれども、葬祭扶助の費用に充てた残りの遺留金を葬祭扶助以外の費用に充当している不適切な処理があったという指摘でございますので、これは、監査等を通じて遺留金の管理を適切に行うよう、しっかり周知等をしていきたいというふうに思っております。

 また、先ほどの、それでは遺留金の問題をどう扱うのかということでありますけれども、そもそも、民法における取扱いのお話、先ほど説明がありました、それとは異なる特別な扱いをどうやってやっていくのかということに関しては、なかなか簡単な議論ではないのではないかというふうに思っております。

 今、地方自治体ではその処理に困っているという事情、委員からも御指摘がありましたし、新聞各紙でも書かれているところでございますし、それは重々認識をさせていただいているところでございますけれども、先ほどと同じ答弁になりますが、厚生労働省だけの所掌の中で答えを出し得るというのはなかなか難しいという認識を持ちながら、我々としてもしっかり勉強はさせていただきたい、こう思っております。

○國重委員 今、加藤厚生労働大臣がおっしゃるとおり、法整備等をするに当たってはさまざまな検討すべき課題もあることは私も承知をしております。その一方で、現実に、とりわけ生活保護受給者の遺留金の処理について困っている自治体が多くある、これが今の社会の実態であって、その対策は急務でございます。

 そこで、更に加藤厚生労働大臣にお伺いしますけれども、これまでもいろいろ検討してきたことはあるけれども、法務省を始めとする関係省庁へのさらなる働きかけを含めて、会計検査院から指摘を受けた制度見直しについて今後どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○加藤国務大臣 基本的な認識は先ほど申し上げたとおりでありますけれども、民法自体を所管されているのは法務省でございます。法務省を始め関係する官庁と、これもまず問題を共有し、どういう対応があるのか、いろいろと議論を重ねていきたいと思います。

○國重委員 遺留金の問題というのは、今、生活保護受給者の遺留金というのが自治体メーンで、困っているところでありますので、ぜひ、責任感を持って、しっかりと働きかけて、連携をして取り組んでいっていただきたいと思います。

 この問題は、会計検査院が指摘をした、生活保護を受けていた被保護者の遺留金にとどまるものではないんですね。身寄りのない独居者の遺留金一般の取扱いの問題であります。

 相続財産管理人選任には相当の費用と手間がかかるために、特に、残余財産が少額である場合には、非現実的、非効率的。何らかの立法的解決がなされるべきであって、自治体等は、厚生労働省だけではなくて法務省にも法整備等を要請しております。

 そこで、上川法務大臣にお伺いいたします。

 相続財産管理人制度について、特に、遺留金が少額の場合における、現実に即した、現実に運用可能な内容への見直し、これが不可欠と考えますけれども、上川法務大臣の見解、決意をお伺いいたします。

○上川国務大臣 ただいま國重委員から、遺留金の取扱いにつきまして、対応が現実に追いついていない、こういう基本的な問題指摘をいただきました。

 法務省におきましても、身寄りのない方が亡くなり少額の遺留金があるといった事例で、相続財産管理人の選任請求に必要な経費が負担できず対応が困難な場合があるとして、遺留金をどのように取り扱うか、その対策について要望する地方公共団体が存在することも承知をしているところでございます。

 地方公共団体におきまして遺留金の取扱いをどのようにするか、今は各種行政法規で規律されているところでございますが、法務省といたしましても、相続財産管理制度を含む民事基本法制を所管するという立場でございます。ただいまの御指摘も踏まえまして、関係省庁と連携をして、この遺留金の取扱いについて、必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

○國重委員 この遺留金の取扱いの問題、これは省庁間の連携というのが極めて重要だと思いますので、今、上川法務大臣おっしゃったとおり、関係省庁と連携をして、遺留金の取扱いについての必要な検討をしっかりと行っていただきたいというふうに思います。

 現在、所有者の不明の土地問題、これにつきましては、今、政府一体となって検討が進められているところでありまして、私も党の所有者不明土地問題対策等プロジェクトチームの事務局長を務めさせていただいておりますけれども、この会議を開催するときには、内閣府、国交省、法務省、農林水産省、また総務省、いろいろな省庁がさまざま来られて、政府一体となってこの問題について、対策について取り組んでおられます。今国会で、まずは現下の課題に対応する法案が提出される予定とも聞いております。

 また、休眠預金口座、これについては既にスキームができまして、これに関する法律は本年一月に全面施行されたところであります。

 このような中、遺留金の取扱いについては、まだ手つかずの状態でございます。国会審議等でも、これまでされておりません。

 世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいる我が国が、いずれ迎えることとなる多死社会。この遺留金に関する問題の見直しがされないままになると、この遺留金、一件一件はさほど大きくない額であったとしても、これが徐々に累積され、将来的にかなり大きな額となっていくことが見込まれます。

 この遺留金問題が、既に、先ほど申し上げましたとおり、地方自治体からの要請や、また条例制定の動きもございます。こういった喫緊の課題であることからしますと、これは悠長に構えていい問題ではありません。政府内でしっかりと連携をして、政府一体となって速やかに対応していく必要があります。

 私も引き続き、この遺留金の処理の問題については今後もしっかりと取り組んでまいりたい、また政府の動きも注視してまいりたいというふうに思いますので、ぜひしっかりと取り組んでいただければと思います。

 これまで御質問させていただきましたのは遺留金の処理の問題でありましたけれども、この背景には高齢者の社会的孤立の問題もあるわけであります。それを助長する一因でもある問題として、耳が聞こえづらい難聴について、最後に質問をさせていただきます。

 難聴、とりわけ、障害には至らないけれども聞こえづらいという方への支援というのは、これまで踏み込みが浅くて十分光が当たってまいりませんでした。これに私は少々危機感を覚えまして、これまで私、厚生労働委員会を希望してもなかなか所属できなかったんですけれども、所属したことはありませんけれども、予算委員会の分科会などで、機会あるごとに繰り返し繰り返し、この施策の充実を訴えてまいりました。

 日本には、身体障害者手帳の交付を受けている聴覚の障害者が約三十六万人います。しかし、実は、日本の聴力障害を理由とする障害認定の基準は世界的に見て結構ハードルが高くて、WHOの基準では、補聴器が必要とされているレベル、耳元で大きな声で話さないと聞こえないレベルの方というのは、これは数多くいらっしゃいます。

 二〇一五年に一般社団法人日本補聴器工業会が中心となって行った調査によりますと、日本人の一割以上、およそ一一・五%が難聴の自覚があるということでありました。また、難聴と推定される人の約半数はそもそも聞こえの不調の自覚がないとのデータもあることから、実際にはもっともっと多くの人が潜在的な難聴者であるというふうにも思われます。

 私は、これまでの質問の中で、まずは実態把握をして、その上で適切な施策を講じてほしいと訴えてまいりました。その結果、平成二十八年実施の生活のしづらさ調査において、サンプル調査ではありますけれども、初めてその実態を把握しようとの試みがされたとの報告も受けております。

 これは大きな一歩であると評価をしておりますけれども、これまで、こうした方々の数も把握されていなければ、施策も講じられてこなかったわけであります。これは、はっきり言って、縦割り行政の弊害だと思います。

 先ほどの遺留金の問題も、私、去年でも省庁を呼んで議論をしましたし、今回のこの予算委員会の質疑をするに当たっても省庁を呼んでいろいろディスカッションをしましたけれども、どうしてもやはり押しつけ合いというか、縦割り行政の弊害というものをそのとき感じました。

 聴覚障害では障害担当、また子供の難聴は子供、高齢者は高齢者と、それぞれの部局でこれまでは完結していたので、その射程から抜け落ちている人を把握する目が、必要性が失われていたわけであります。

 難聴の問題は、医療、保健、福祉などの関係部局がしっかりと連携していくことが大切であります。私は、昨年の予算委員会の分科会においてもこの点を指摘したわけでありますが、厚労省として、その後どのように取り組んできたのか、また今後どう取り組んでいくおつもりなのか、加藤厚生労働大臣にお伺いします。

○加藤国務大臣 昨年二月の予算委の分科会で、國重委員から今の御指摘を頂戴したところでございます。

 今御指摘にありましたように、難聴、特に、高齢者の場合、耳が聞こえなくなってくるとどうしても外に出にくくなるとか、やはりいろいろな意味での弊害もございます。それから、難聴には、予防が可能なもの、あるいは早期の治療が必要なもの、こういった種々なものがございますので、それぞれ適切な治療をしていく、あるいは適切な対応をしていくということが必要だと思っております。

 今、難聴の早期発見、早期治療の重要性についての周知については、ホームページで、そうしたことを普及啓発するべく、三十年度予算案にも盛り込んでそれを実行したいと思っておりますし、また、子供の難聴対策は特に大事でありまして、全ての新生児が新生児聴覚スクリーニングを受けられるように、市町村等に対しても通知も行ったところでもございますし、また今年度からは、都道府県で、市町村関係者や医療機関等で構成されている協議会、ここにおいて、新たに、検査の受診状況の把握、分析、研修や普及啓発などを行う新生児聴覚検査体制整備事業、これも行うこととさせていただいております。

 その上で、厚生労働省の中においても、障害部局のみならず、老健部局あるいは保健部局とか多岐にわたっているわけでありますので、そういった意味で、ある意味では対応が縦割りの中のはざまに落ち込まないように、こういう御指摘もいただきました。

 課長クラスを構成員とする難聴への対応に関する省内連絡会議を早速昨年の七月設置をし、昨年の九月には第一回の会合も行い、関係部局で現状や課題、そして円滑な意思疎通を図っていくことを申合せさせていただいたところでございます。

 そういったことも踏まえて、平成三十年度予算では、難聴の早期発見等に関する普及啓発を行うとともに、障害福祉サービス等報酬改定においては、言語聴覚士の、専門職員を加算した障害児の通所事業所に対し加算を引き上げることにより難聴の子供の療育を充実させる、あるいは難聴の方への支援についての調査研究なども盛り込んでいるところでありますので、引き続き、それぞれの部局が連携して、この問題に遺漏なきよう取り組ませていただきたいと思います。

○國重委員 ありがとうございました。

 重要な前進だと思います。今後も、これを足がかりにしてしっかりと取り組んでいっていただきたいと思います。

 きょう取り上げた遺留金の問題も難聴の問題も、一つの省庁とか一つの部局で完結する問題ではなくて、政府内での連携が重要でございます。肝になります。関係省庁、部局は、前向きに、責任感を持って取り組んでいっていただくことを期待いたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

 
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