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衆法務委で「テロ等準備罪」2度目の参考人質疑

衆議院法務委員会で「テロ等準備罪」について2度目の参考人質疑を行いました。

以下、自民党の推薦でお越しいただいた木村圭二郎参考人(弁護士、ニューヨーク州弁護士)
公明党の推薦でお越しいただいた椎橋隆幸参考人(中央大学名誉教授、弁護士)の意見陳述と
国重の質疑全文を掲載いたします。

>> [外部リンク]公明ニュース「幅広くテロ対策に有効」

↓ 木村参考人・椎橋参考人意見陳述&国重質疑全文

<木村参考人 意見陳述>

 おはようございます。
 本日は、法務委員会の参考人として意見を述べる機会を与えていただき、ありがとうございます。

 私は、昭和六十二年に弁護士登録をし、登録後間もなく大阪弁護士会の民事介入暴力対策委員会に所属し、平成十九年には大阪弁護士会の民事介入暴力対策委員会の委員長を務め、昨年六月より日本弁護士連合会の民事介入暴力対策委員会の委員長を務めています。
 また、コーネル大学ロースクールに留学し、ニューヨーク州でも弁護士登録をしています。  民暴対策にはおおむね三十年かかわっていることになります。その間、五代目山口組の組長責任訴訟や暴力団組事務所の差しとめ訴訟等にかかわってまいりました。また、日弁連の代表として、国際組織犯罪に関する国連会議に出席させていただいたこともあります。

 まず、法務委員会として、これまでテロ等準備罪及びTOC条約に関し詳細な論議を重ねてこられたことに敬意を表させていただきたいと思います。私の方では、本日、意見陳述の項目を記載したレジュメと、テロ等準備罪の論点をQ、Aの形式で整理した資料一、立法ガイド、パラグラフ五十一の解釈に関する意見を記載した資料二を配付させていただきました。
 本日は、テロ等準備罪に賛成する立場から、資料一を参照しながら、民暴対策に関する活動を通じて得た知識や経験をもとに、レジュメの順に従ってお話をさせていただきます。もとより、意見にわたる部分は個人的見解であることをあらかじめ御了解お願いいたします。

 まず、関連法案についてですが、現在、従前の共謀罪の構成要件を厳格化したテロ等準備罪が審議されているわけですけれども、さらに、自民・無所属の会、公明及び日本維新の会の修正案、与党側修正案と言います、と民進党・無所属クラブ及び自由党の対案、民進党側対案と言います、もあわせて審議されている状況にあると伺っております。
 最初に、この点について申し上げたいと思います。
 民進党側対案では、TOC条約は包括的な共謀罪を創設せずとも締結することが可能であるということを前提とされておられます。これまでの審議で、全体として、TOC条約に批准しなければならないことは合意形成がされながら、TOC条約の批准に共謀罪規定が必要か否かというところで意見の対立があることについては、まことに残念なことだと思っています。
 その問題についての議論は尽くされているように思いますが、私の意見は、お手元の資料一のQ3からQ5に記載のとおりです。Q3に対応するA3に記載のとおり、共謀罪規定はTOC条約の批准のための国内法上の義務であり、Q4に対応するA4に記載のとおり、共謀罪規定の義務を留保、回避することはできないと考えています。
 また、Q5に対応するA5に記載のとおり、予備罪規定ではTOC条約第五条の要件を満たすことができないことは明らかであると思っております。
 したがいまして、まことに恐れながら、民進党側の対案ではTOC条約の批准要件を満たすことはできないのではないかと考えております。
 与党側の修正案につきましては、捜査上の実際の懸念に配慮を求めるというもので、特段の異論はありません。

 次に、立法ガイド、パラグラフ五十一についてですが、日弁連も、かつて、立法ガイドのパラグラフ五十一を根拠として、共謀罪も参加罪もTOC条約の義務ではないという主張をしていました。しかし、そのような主張が誤訳に基づくものであることは、英文の原文を見れば明らかだと思います。資料二に記載のとおりです。
 日弁連の平成二十九年二月十七日付のテロ等準備罪に対する反対の意見書におきましては、立法ガイド、パラグラフ五十一に関する主張は完全に抜け落ちています。平成二十九年二月の意見書で、これまで主張されていたパラグラフ五十一の記載がなくなっていることからして、パラグラフ五十一に関する日弁連の見解は撤回されたものであると私は理解しています。
 法務委員会の審議でパラグラフ五十一の解釈がいまだ論点として残っているように思われましたので、参考として、資料二を提出させていただきました。

 ここで、日弁連の意見書について一言申し上げたいと思います。
 余談になりますが、現在の日弁連会長の中本和洋先生は、私が大阪弁護士会の副会長をしたときの会長でして、人格、識見に秀でた大変にすばらしい方で、私が尊敬する弁護士の一人です。しかし、残念ながら、今回のテロ等準備罪に関する日弁連の意見書には正面から反対をさせていただいています。日弁連の意見はすばらしいものが多いのですが、時に、特定の考え方を持った会員の意見が強く反映されることがあるように思います。テロ等準備罪への反対意見書もそのようなものと考えています。
 私は、弁護士が一枚岩となって反対しているという誤解を与えてはいけないと思い、呼びかけ人の一人として、百三十名の弁護士の意見として、組織犯罪対策としてのテロ等準備罪に賛成をする立場で提言書をまとめ、関係省庁及び各政党に対し送付をさせていただきました。
 これまで、日弁連は、濫用等の危険を述べて、暴対法について反対をしました。しかし、暴対法が労働組合や市民団体に適用されたということは聞いたことがありません。暴対法が施行されたおかげで、暴力団の弱体化が現実のものとなり、我々が暴力団を相手とする事件において大きな力を発揮しています。
 日弁連の意見に基づき暴対法が廃案になっていたとすれば、恐ろしい事態になっていたと思います。組織犯罪処罰法にも日弁連は反対をしましたが、それが濫用されているという事実はないと思います。
 日弁連のテロ等準備罪に関する意見書は、そもそも条約等の解釈に問題があり、参考にすべきものではないと考えています。

 五番目の濫用の危険についてです。
 テロ等準備罪の濫用の危険について議論がされていますが、濫用の危険については二つの論点を分けて考える必要があると思っています。
 一つ目の論点は、テロ等準備罪の構成要件の問題です。資料一のQ8とQ9に記載しています。仮に、過度に広範な刑罰規定、処罰規定であれば、その修正が必要であることは言うまでもありません。
 しかし、テロ等準備罪は、組織的犯罪集団の定義の核心部分として、結合関係の基礎としての共同目的が一定の重大犯罪を実行することと規定しています。この定義は、組織犯罪の核心をついており、その特徴をよくあらわしていると思います。
 井田教授も指摘されておられましたけれども、テロ等準備罪の組織的犯罪集団の定義は厳格であり、通常の労働組合や市民団体がこの要件に該当する余地はないと言ってよいと思います。
 もう一つの論点は、捜査機関が誤って法執行をするという意味での濫用の問題です。完璧な人間はいませんので、さまざまな理由で、結果として間違った捜査が行われる可能性は否定できません。
 この点も、井田教授と同じ意見を持っておりまして、それは刑罰規定全てに共通する問題で、テロ等準備罪の特有の問題ではありません。刑事制度全体の問題として、捜査側の不祥事も含め、間違った捜査が行われないようにするということが重要であることは言うまでもないと思います。
 お手元の資料一のQ10に対応するA10の回答で、この点を指摘させていただいています。抽象的に、間違った法執行の可能性があることを理由として刑罰法規に反対するということであれば、極端に言えば、あらゆる刑罰法規に反対をしなければならないことになるということを記載しております。
 私は、テロ等準備罪に特有の濫用の危険はないと考えています。

 それから、治安維持法であるとの批判についてです。
 さすがに法務委員会の議論のレベルは高く、テロ等準備罪は治安維持法の再来であるといった批判はされていないように思います。しかし、テロ等準備罪に反対をしている弁護士や集会等のビラなどでは、テロ等準備罪を治安維持法の再来と表現しています。
 お手元の資料一のQ1に1記載しているとおり、治安維持法は、国体を変革することを目的とした結社を処罰し、予防拘禁制や行政検束制などにより、司法手続を経ない拘束、そして拷問までもが行われた悪法です。テロ等準備罪を治安維持法の再来と批判するのであれば、どのような事態が生ずるかについて主張される必要があると思いますが、具体的な主張はされていないように思います。
 治安維持法の問題は、旧憲法下での制度、戦時体制という時代背景が前提となっています。成熟した民主主義と司法手続、マスコミ等による監視が行き届いている現在で、治安維持法と同様の事態が生ずる可能性は皆無であると考えています。

 七番目の監視社会を招来するとの批判についてです。
 テロ等準備罪が監視社会を招来する、そういう批判がされることもあります。この論点は資料一のQ1に2取り上げています。テロ等準備罪は実体法規定ですので、同法の規定が捜査手続に直接的な影響を及ぼすとは考えられません。そもそも、監視社会という批判がどのような事態を想定しているのか曖昧だと思います。
 人間関係が希薄になっている現代社会において、防犯カメラの設置や顔認証システム、サイバー空間の捜査の強化は、テロ等準備罪の導入のいかんにかかわらず、犯人検挙や犯罪抑止のために必要性が高まっていると理解しています。  しかし、そのような必要性が高まっていることも犯罪捜査一般の問題です。テロ等準備罪を立件するために警察が日常的に適用事例を追いかけ回して捜査をする、そういったことはないと思います。

 八番目のテロ等準備罪の必要性について、簡単に申し上げます。
 私は、具体的な事件で、組織的詐欺の被害者の民事事件を二件経験したことがあります。一件は現在も係属中でして、被害は十億円を超えるものです。だまし取られた金額のほとんどが海外の預金口座に隠匿されています。また、現在、破産管財人として担当している破産事件では、四十億円もの現金が海外に流出させられています。弁護士の体感として、犯罪の国際化が進んでいることを指摘させていただきたいと思います。
 TOC条約には、捜査共助や情報交換、また没収財産の被害者への返還の考慮等の規定等があり、TOC条約の批准を契機に我が国の組織犯罪捜査の国際化が進み、犯罪被害の回復が図られることは大きな意味があると思います。

 九番目のテロ対策についてです。
 東京オリンピックに向けて海外から多数の方が日本を来訪する、そのことは好ましいとはいえ、やはり国民目線としては、テロ組織や組織犯罪の関係者が紛れ込まないか、そういう不安があると思います。テロ対策としてできる限りのことをやるということで、TOC条約に批准し、海外のテロ情報を集め、我が国の安全、安心を達成していただきたいと思います。
 テロ等準備罪だけで、テロ対策や組織犯罪対策として十分であるということはありません。しかし、この罪ができることで組織犯罪に対する牽制力が発揮されることは間違いないと思います。

 次に、十番目の項目です。
 テロ等準備罪の話は離れますけれども、今回のTOC条約対応の立法で、不法収益の隠匿罪、いわゆるマネロン処罰の拡大が犯罪被害者の被害回復に大きな力を発揮する可能性があると思っています。
 具体的には、金融商品取引法百九十七条の二の無登録での有価証券取引業の規定です。それがマネロン処罰の前提犯罪となっていることです。我が国の詐欺被害は年間四百億円を超えると言われています。金商法違反をマネロン罪で立件することができれば、投資詐欺型の特殊詐欺対策として有効だと思っています。
 民暴対策委員会の活動として、FBIや司法省等の組織犯罪対策の調査に行ったことがあります。アメリカでは、刑事事件の立件というのが被害者救済と強く結びついていました。我が国でも、暴力団などの組織犯罪から被害回復をするためには、刑事事件が先行しない限り実態解明が難しく、困難であるということが実情であります。

 終わりにということで、最後に一言です。
 犯罪者による海外への資金移転は日常的になっています。TOC条約に批准し、海外捜査機関との連携を密にし、犯罪被害回復を実現していただきたいと思っています。
 テロ等準備罪は構成要件が厳格であり、刑罰法規として特段の問題はないと考えています。
 TOC条約に批准するために早急に本法案を成立させる必要がある、そのことを強調させていただき、意見陳述を終えさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。


<椎橋参考人 意見陳述>

 中央大学名誉教授・弁護士の椎橋隆幸でございます。
 本日は、このような委員会で陳述する機会を与えていただき、光栄に存じます。

 私は、テロ等準備罪法案に賛成の立場から陳述させていただきたいと思います。今の木村先生のお話と内容的に重複する面もございますけれども、御容赦いただきたいと思います。

 まず、本法案は、国際組織犯罪防止条約を締結して、国際社会と協調して国際的な組織犯罪を防止、根絶するための協調体制をとる必要があるということと、それから、他面で、実質的に考えて、テロが九・一一以降世界各地で頻発して、日本人がその犠牲になる、あるいは日本がその標的になるという事実がございまして、テロの危険が日本に迫っている、テロの危機が増大しているという中で、国民の生命、安全、財産を保護するという必要、この二つの側面があるというふうに考えております。

 まず、国際組織犯罪防止条約、以下TOC条約と言わせていただくことが多いかと思いますが、その中身等についてお話しさせていただきたいと思います。

 テロを含む組織犯罪、これは犯罪組織による薬物密輸でありますとか銃器の不正取引、人身売買、マネーロンダリング等々でございますけれども、この防止、根絶を目的とした条約であります。
 この種の組織犯罪によりまして犯罪組織は多額の利益を不正に得て、大きな勢力となって、一国の民主主義政治決定過程にも不当な影響を及ぼしたり、あるいは自由な経済体制にも悪影響を与えてきております。このような組織犯罪の犠牲になるのは一般の人々、特に子供や女性といった社会的弱者にも及んでおります。この犠牲となる女性とか子供の人権を守るためにもTOC条約は必要であるというふうに考えます。
 この条約は、国際刑事法条約であることはもちろんですが、同時に、今申しましたように人権条約というような性格も持っているわけであります。このような条約の趣旨が国会議員の先生方の間でも理解、共有されて、平成十五年、二〇〇三年五月に、TOC条約は、留保を付することなく、圧倒的多数をもって国会で承認されております。

 次に、国際犯罪組織を効果的に防止、根絶するためには、国際社会と緊密に連携することが必要不可欠でございます。TOC条約の締結によりまして、逃亡犯罪人の引き渡し、捜査共助の効率化、情報交換の円滑化が可能となります。この実際的効果というのは、テロ等組織犯罪の防止、撲滅という点では非常に重要な効果を持つものでございます。
 現在、百八十七の国と地域がTOC条約を締結しており、未締結国は我が国を含む十一カ国のみというふうになっております。この状況も、世界的に考えて、直視しなければいけないだろう。テロを含む組織犯罪を未然に防止し、摘発する上で、我が国は国際的取り組みの中で組織犯罪の抜け穴になってしまうという事態を避けなければなりませんし、それと同時にというか、むしろそれ以上に、我が国は、世界における経済的あるいは政治的な地位というものを考えますと、その国にふさわしい積極的なリーダーシップを持った取り組みが必要なのではないかというふうに私は考えております。

 それから、TOC条約の内容でありますけれども、もともとからこれはテロ対策というものが含まれているということであります。テロ対策かそうでないかというような議論というのは余り意味がないのではないかというふうに思っております。
 むしろ、テロ犯罪というのは組織犯罪の典型でありまして、テロそのもの以外に、テロ集団は、そのテロ活動を行うための活動資金を獲得するために女性や子供の誘拐、身の代金要求、人身売買、薬物、銃器の売買を行う。これは、いろいろな世界各地で起こっていることにもよくあらわれていると思います。
 そして、TOC条約というのはテロ対策も含んでいるというのは、このTOC条約ができたときの国連総会決議においてもその趣旨のことが表明されておりますし、それから二〇一四年十二月に採択された国連安保理決議においても、テロ防止へ共同に取り組む必要性とTOC条約等への加入等を加盟国に求めております。

 それから、経済協力開発機構の金融活動作業部会、FATF、これは非常に国際組織犯罪対策をまとめる上で重要な役割を果たしている会議でありますけれども、この勧告が何度か数多く出されております。特にその中でも、二〇一二年二月に統合、改訂された四十の勧告及び特別勧告は、我が国に対して、TOC条約を締結していないということ、それからテロリストの資金に関する凍結義務を十分に実施していないと、かなり手厳しい指摘をされております。

 他方で、我が国はテロ対策が十分だという御議論もありますけれども、実際、十三のテロ防止関連条約を締結しておりますけれども、しかし、必ずしもこれだけではテロ対策としては十分ではないというふうに思います。
 十三のテロ防止関連条約でカバーできない態様のテロについて、TOC条約は対応できるという面がございます。
 例えば、テロ対策の関連条約の中で、包括的といいますか、一番よく引き合いに出されるテロ資金提供処罰法について申し上げますと、公衆等脅迫目的の犯罪行為について、公衆または国もしくは外国政府を脅迫する目的をもって行われることを要件としている。これは第一条にその規定がありますけれども、この目的のない犯罪行為のために資金等を受領しても、この条約によって処罰されないということになります。それから、もっと広く、薬物に関する犯罪、人身に関する搾取犯罪、資金源に関する犯罪、司法妨害に関する犯罪のほとんどが同法の対象犯罪には当たらないわけであります。この穴を埋めるというか、テロ等準備罪にはその役割が果たされることが期待されると思います。

 次に、国際組織犯罪防止条約の要請でありますけれども、これはレジュメに書いてあるように、TOC条約の要請に従って、共謀罪または参加罪の創設、あるいは資金洗浄、腐敗行為、司法妨害、これについてはそれぞれ、共謀罪は新設、それ以外のものについては、証人等買収罪を新設する、組織犯罪処罰法の拡大、あるいは贈賄罪の国外犯処罰規定の整備というような形で対応しているということであります。

 それから次に、現行法のままで国際組織犯罪防止条約を締結できるかということでありますが、これは先ほどの木村先生の御発言とかなりかぶるところではありますけれども、非常に重要なことでありますので申し上げますと、条約の五条一項(a)号には、加盟国に参加罪か共謀罪かの少なくとも一方を犯罪化することを義務づけている。これはマストであります。シャルであります。
 立法ガイド、パラグラフの五十一及び五十五というのがあります。これは必ずしもそれに従う必要はないという解釈がされているわけでありますけれども、これを五条一項との関係で素直に読めば、共謀罪を持たない締約国が参加罪を導入した場合に共謀罪の導入を求めるものではなく、その逆も同様であるというふうに、片方を持っていればいいということであります。しかし、片方は持っていなければいけないということです。

 それから、その国の原理原則、制度との兼ね合いの問題につきましては、例えば導入する共謀罪の規定ぶりはそのまま条約を直訳しないでいい、規定ぶりについては締約国に任せる。それから、犯罪阻却事由等をどうするかというような法原則については締約国に委ねられている。だから、他方で、絞るという意味で、重大犯罪に限るという限定をするのもこの趣旨によって生かされているということだと思います。

 それから次に、テロ等準備罪について、我が国はテロ等準備罪を考えている。それは共謀罪型のテロ等準備罪ということでありますけれども、もちろん、るるこの間に指摘されてきておりますように、非常に厳格な要件というものが課されているということによって、前に言われた共謀罪とは大きく異なっているということであります。

 余り時間がなくなりましたので、この中で特に問題になりそうなことを申し上げますと、まず、テロ等準備罪が成立するためには、一定の対象犯罪である重大な犯罪の実行を目的とする組織的犯罪集団が団体の活動として重大な犯罪を実行するための組織によって行われるということが要件としてございます。
 これは、組織的犯罪集団ということによってかなりその対象が限定されるということが言えると思います。テロ組織、暴力団、薬物密売組織、振り込め詐欺集団というものがこれに当たるということでありまして、労働組合とか市民団体、宗教団体、学生のサークル活動というのはこれには当たらない。この関係で、世上、いろいろなこういう場合は危ないんじゃないかというふうに言われているものがございますけれども、まずこの要件に当たらないということで抜け落ちるというものがたくさんございます。

 それから、捜査権限は拡大するんじゃないかというようなことが言われておりますけれども、しかし、これは、まずテロ等準備罪は実体法の改正でありまして、手続法の改正は予定されておりません。ですから、手続法の分野である捜査権が拡大されるものではありません。それから、手続法は実体法によって規制されるものでありまして、テロ等準備罪が成立するためには、組織的犯罪集団、計画、実行準備行為、この三つの厳格な要件が求められております。適用対象が組織的犯罪集団に限定されていることによって捜査の対象も組織的犯罪集団の構成員や周辺者に限定されるということになりますし、計画に基づいた実行準備行為がなければ、捜査、特に強制処分である逮捕等もできません。捜査機関の判断次第で捜査権限が歯どめなく拡大していくとの議論は現実的ではないと思います。

 それから最後に、我が国の刑事司法システムというのは、警察、検察、裁判所という機関等から成っております。そこで考えてみますと、警察は警察で、犯罪の嫌疑がなければ捜査というものはできませんし、検察は、公訴を維持できる、有罪の高度の見込みがあるというものでなければ起訴しません。また、起訴できると判断して起訴したという場合でも、その後、公平中立な裁判体が起訴事実について合理的な疑いを超えるまで証明しなければならない、有罪を認定できないという厳しいハードルがそれぞれあります。したがって、こういう法運用のあり方というのは、今、私は、基本的には健全に機能していると思われますので、テロ等準備罪の適用においてもこのような形で法運用は行われるというふうに信じております。

 具体的な点については、後でもし機会があれば申し上げたいと思います。
 これで終わりたいと思います。ありがとうございました。


<質疑全文>

○國重委員
 おはようございます。公明党の國重徹でございます。
 本日は、五名の参考人の皆様に貴重な御意見を賜りましたこと、心より感謝と御礼を申し上げます。
 質問に入る前に、まず、海渡参考人、先ほど、森林法などはテロ等の組織犯罪対策のためになるんだろうかというような趣旨のことを、きょう資料をいただいたので、詳細にこの内容を私も把握しているわけではありませんけれども、そういう趣旨のことをおっしゃって疑問を呈されたと思います。
 この点については、先日、五月十二日の当委員会におきまして我が党の濵地委員がこの点について質疑をしております。かいつまんで言いますと、森林法における保安林の区域内における森林窃盗については、実際に、良質の山砂を盗掘して販売する目的で、保安林の区域内である国有林で長期間にわたり継続的に従業員等を使ってユンボなどの重機を用いて山砂の掘削を繰り返して、時価約四千万円にも相当する五万立方メートルを超える山砂を採取した事例もある、このように紹介をされております。
 これ以外にも、対象犯罪につきましては、濵地委員初めさまざま、野党の委員の方も言われていますし、与党の委員も質疑をしておりますので、反対派の中心者としてこれまで長年御奮闘されてきた先生に敬意を表しながら、ぜひこれらの議事録についてもまた後ほど見ていただければと思います。(海渡参考人「議事録は読んでいますよ」と呼ぶ)
 ありがとうございます。では、質問に入らせていただきます。(発言する者あり)

○鈴木委員長
 御静粛に願います。不規則発言はおやめください。

○國重委員
 まず、今回の法案では、かつて廃案となった共謀罪に比べまして構成要件を厳格化して、テロ等準備罪の主体を結合の目的が重大犯罪を実行する団体である組織的犯罪集団に法文で明確に限定して、行為は、具体的、現実的な計画のほか、計画に基づく実行準備行為を要するとしております。いわば、先日の参考人質疑でも、お越しになられた井田参考人が、三重の縛りがかかっているというようなことをおっしゃっておりました。
 このことを踏まえた上で、まず五名の参考人の皆様全員に事例を通して基本的なことをお伺いしたいと思います。きょうの参考人質疑は二十分という限られた時間でございますので、五名に当てますので、まず結論のみ簡潔にお答えいただきたいと思います。
 事例を言います。居酒屋で労働組合の役員が、会社の幹部は自分のことしか考えないとんでもないやつだ、一発殴ってやるかと酒の勢いで冗談で話し合い、意気投合した場合。
 ただそれだけでテロ等準備罪は成立するか、私は当然成立しないと思いますが、成立するか成立しないか、結論のみ、五名の参考人それぞれにお願いいたします。では、木村参考人からお願いします。

○木村参考人
 成立しません。

○椎橋参考人
 成立しません。

○海渡参考人
 幾つかの要件をつけ加えれば成立するかもしれませんが、その段階ではまだ成立しないと思います。

○加藤参考人
 結論だけ申し上げます。それは調べてみなければわからないというのが多分現実的な結論だと思います。

○指宿参考人
 逮捕、勾留後、どのような取り調べで、どのような供述を引き出されるか確定していないので、この御質問にはお答えすることはできかねます。

○國重委員
 今それぞれの参考人から答弁いただきましたけれども、私はこれは明らかに成立しないと思います、今の事例であれば。まず、組織的犯罪集団に当たらない、具体的、現実的な計画もない、また計画に基づく実行準備行為もない。テロ等準備罪、また反対派の方が言われるいわゆる共謀罪が成立するわけがない、これは私は争いのない明白なことだと思っております。
 しかし、例えば先ほどの事例でテロ等準備罪が成立するといったような、明らかな誤った法案の説明が仮にチラシのような配布物あるいはインターネットなどで流布した場合、私は、国民の皆さんに本当は犯罪に当たらない行為が犯罪であるかのような誤解を与えてしまって、かえって自由な言論に対する萎縮効果が生じてしまうことになるのではないかと思いますけれども、こういったことがあった場合に言論が萎縮すると思うのか、全くこのようなことは萎縮しないと思うのか、五名の参考人それぞれに、また結論のみ、次は指宿参考人からお願いいたします。

○指宿参考人
 質問の御趣旨がわからないので、もう一度お願いします。

○國重委員
 要するに、法案の内容と異なるような、本来は犯罪が成立しない事例を犯罪が成立するというようなことで、事実と異なるような、そういった情報を流布したような場合、これは国民の自由な言論等を萎縮させる効果が私は生じるんじゃないかというふうに思います。例えば、よく言われる、居酒屋で上司を殴ってやろうか、そうだそうだ、これで犯罪が成立するというような、かつては荒唐無稽なこういった主張がされましたけれども、こんなものが犯罪になるというようなことを言っていれば、それは、国民の皆さんは法案の中身は見ないですから萎縮するのは私は当然だと思います。
 それでも答えられないと言われるのであれば、代表して、木村参考人、お願いします。では、木村参考人から順にお願いします。

○木村参考人
 今の國重先生のお話、非常に大事なところを含んでいる点もあると思っていまして、今回、テロ等準備罪というのは、団体でなければだめである、それから組織的犯罪集団でなければだめである、そういう構成要件が前提になっているんですけれども、まさに今御指摘されましたとおり、世間では、居酒屋で何か犯罪的なことを話せばそれで処罰されるというようなことが行き渡ってしまっていますので、その誤解を解くことは非常に重要だと思っています。
 その誤解を解かないままに今回のテロ等準備罪が通過したときに、国民の方が誤解をしてしまう、それによって萎縮が起きる、今そういう趣旨でおっしゃっていただいたと思うんですけれども、国会の審議の中では、そういうことはないんだ、先ほどみたいな中途半端な意見ではなくて、居酒屋でのそういう単なる話し合いではテロ等準備罪は成立しないんだということ自体は明確にしていただきたいと思っています。

○國重委員
 済みません、これから結論のみ言っていただきます。ちょっと時間の関係で、ほかの質問も用意していますので、結論のみでよろしくお願いいたします。

○椎橋参考人
 マスコミが事実を、法案の中身を正確に伝えて、そして判断するのは国民だというのが報道のあり方だというふうに思います。
 先ほど先生が言われたように、事実とは違う、犯罪が成立しないにもかかわらず成立するとか、あるいは成立するおそれがあるという記事がたくさん出ております。国民の意見がどうであるかということを判断する上でアンケート調査を行っておりますけれども、正確な事実を伝えていないためにアンケート調査がぶれているというようなことがあって、それは大変私は危惧している。マスコミはもうちょっと事実を正確に伝えるということを中心にしていただきたいという感想を持っております。

○海渡参考人
 どんな場合に適用されるかということについては、私が、きょうの公述要旨の三ページに七つほど例を挙げておきました。こういうケースについて聞いていただければいいと思うんですけれども……(國重委員「まず、萎縮効果が生じるかどうかだけ。質問に対して答えていただけますか」と呼ぶ)いや、実際に、基地建設に抵抗している市民団体に威力業務妨害罪が適用されております。労働組合に対して強要罪が適用される場合もあると思います。
 そういう意味では、具体的にどんな場合に適用されるかを議論するということはとても大切なことで、そういう議論自身をしてはいけないかのように言われることに私は賛成できません。

○加藤参考人
 私たちは、法案の内容を素直に法律家として読んで、どこまであり得るかという想定をして正確な議論をしているつもりです。むしろそこをネグレクトして、あり得ない、あるいは一般人は対象になり得ないと断言される議論こそ、誠実な議論ではないということを申し上げたいと思います。

○指宿参考人
 例示された居酒屋での会話の対象犯罪は、現在の法案では、改正、成立した改正刑事訴訟法の中では取り調べの録音、録画義務の対象外ですので、どのような取り調べで、どのような供述がそこから引き出されるのか、テロ等準備の計画があったというところまで供述が引き出されかねませんので、しかし、我々はそれを事後的に何ら検証することができませんので、私は、それは萎縮効果を与えるような例示ではなく、適切な例示なのではないかというふうに考えます。

○國重委員
 ありがとうございました。それぞれの参考人の御意見を聞きましたけれども、私は多分皆さんと同じで、国民の自由な言論に悪影響を及ぼすような、萎縮効果を及ぼすようなことはあってはならない、これは恐らく賛成派、反対派、共通の願いであるんだろうというふうに思います。私は、今のような事例は善良な国民の皆さんに萎縮効果をもたらすんじゃないかというふうに懸念をしております。
 私の手元にビラがございます。ここには先ほどの事例のようなことが書いてあります。何と書いてあるか。酒場で労働組合の役員が、会社の幹部は自分のことしか考えないとんでもないやつだ、一発殴ってやるかと酒の勢いで冗談で話し合い、意気投合したら、その後、実際には何もしなくても共謀の罪になります、まさに冗談も言えない共謀罪です、このように書いてあります。
 先ほどの言っていただきました意見、さまざまな意見がありましたけれども、私は明らかに本法案の内容とは異なるものになっているというふうに思います。これは断言しております。
 これは、本年四月十五日に共謀罪NO!実行委員会というところが行った「共謀罪はいらない!新宿駅西口大街宣」で配布されたチラシで、海渡参考人はこの実行委員会のことについて御自身のツイッターでも触れられておりますので、恐らく御存じのことかと思いますけれども、実行委員会のホームページで誰でも閲覧、ダウンロードできるようになっております。私もきのう拝見させていただきました。
 この実行委員会の方々というのは、私は、恐らく真面目で善良な方々が多くいらっしゃるんだろうと推察をしております。ただ、このチラシには、国民の皆さんに対して誤解を与えかねない、萎縮効果を与えかねない、こういった内容が記載されておって、私はこの点では著しく不適切なものだと言わざるを得ないと思っております。
 ほかにも本法案と異なる内容を書いたチラシはいろいろあるんですけれども、例えば本年四月十六日に京都弁護士会主催で行った「共謀罪の制定を阻止する市民集会in京都」、この市民集会では海渡参考人と前回の参考人質疑でお越しいただいた高山先生が御講演をされたようであります。
 この宣伝用のチラシには、共謀罪は考えたり相談したりしただけで処罰しようという法律ですと、これまたテロ等準備罪の法案の内容とは全然違うことが書かれてあるわけですね。さらに、このチラシには、一たび犯罪の計画があると疑われると、誰でも盗聴されたり逮捕されたりする可能性があるとも書かれております。どのような法的根拠でそうなるのかと、私は理解に苦しむところでございます。
 ここで、椎橋参考人にお伺いします。時間の関係で、本当に失礼なんですけれども、結論だけお答えいただきたいと思います。現行法あるいは本法案によってもテロ等準備罪は通信傍受の対象にならないと私は認識、理解しておりますけれども、それで間違いないか、簡潔にお答えください。

○椎橋参考人
 対象犯罪によるというふうに思います。そして、多くの場合は要するに現行法の通信傍受の要件に当てはまれば通信傍受ができますけれども、そうでなければできない。新たに今度は通信傍受の範囲を広げるというわけではありませんし、先ほど先生が言われたような事例では通信傍受はできないと思います。

○國重委員
 テロ等準備罪について現行法で通信傍受の対象になっていないということであれば、本法案では新たに対象の網にかけるわけではありませんので対象にならないと私は理解をしております。
 また、先ほどのチラシ、計画だけではなくて実行準備行為の嫌疑がなければ強制捜査である逮捕はされませんので、私から言わせると、弁護士会が、これは京都弁護士会が主催のチラシなんですけれども、本当に失礼な言い方になりますけれども、よくぞこんないいかげんなチラシをつくったものだなと。私は感じざるを得ないんです、これは、本当の意味で。
 私は、先ほど木村参考人がおっしゃったように、日弁連の会長初め、弁護士会には数多くの敬意を表する先生方がいらっしゃいますし、お世話になっている先生方もいらっしゃいます。ただ、そのこととこれとは別問題で、やはり、国民の不安をいたずらにあおるようなものに関しては、おかしいものはおかしいというふうに私は言っていかなければならないと思っております。
 木村参考人にお伺いいたします。
 木村参考人は、民暴対策に約三十年にわたってかかわってこられ、現在は日弁連の民暴対策の委員長をお務めになっております。この法案を検討するときに、先ほど山田委員からもありましたけれども、組織犯罪によって侵害される被害者の人権にも思いをいたして、しっかり考えていかないといけないと思っております。被害者の人権の観点から、被害者に寄り添って闘ってこられた参考人として、テロを含む組織犯罪と闘うテロ等準備罪の法案につき、先ほどのような、誤った事実によってと私は認識していますけれども、法案に対する国民の不安をあおるような手法についてどのように思われるか、お伺いいたします。

○木村参考人
 これは民暴対策委員会の委員長ではなくて個人としての意見ですけれども、先ほどのような誤った表現による反対運動については個人的に極めて遺憾であると思います。

○國重委員
 私は、言論の自由を守るためにテロ等準備罪の法案に反対する、これはいろいろな見解、立場があっていいと思うんです。政府に対する批判的な意見もどんどん言えるような社会でなければならないと私は思っております。
 ただ、見解とか評価の相違のレベルを超えて、それでは済まない明白な事実、内容の誤り、あるいはデマによって国民の不安をあおり、言論をかえって萎縮させる、このようなことがあればもはや本末転倒であると思っております。言論の自由を最大限保障するといっても、国民の言論を萎縮させる風評被害的なものを発生させるような悪質なデマ等が仮にあれば、それを何らの指摘もすることなく漫然と放置したままでは、私は真の意味での国民の自由な言論というのは確保されないと思っております。私は、私の立場で……(発言する者あり)

○鈴木委員長
 御静粛に願います。

○國重委員
 人権保障の観点から、構成要件の内容を明確化するような質問を、当委員会においても与えられた時間の中でしてきたつもりでございます。
 このことについて、先ほど言った共謀罪NO!実行委員会のホームページにおきましても、四月十九日の当法務委員会の質疑に関してこのようなことが書かれておりました。公明党の國重委員は、私たちが問題としている点を次々質問していき、金田法務大臣が答弁しているところの市民の不安や懸念を払拭できた法案であることを立証しようとしていました云々と書いていただいております。
 海渡参考人、加藤参考人とは立場の違いがあるものの、それぞれの信念に基づいた活動には私は敬意を表しております。その上で、参考人らが、いろいろな集会とかに参加されておりますけれども、そういった中で先ほどのような事実、内容の明白な誤りが仮に見られたとすれば、国民の言論を萎縮させないという点、これは先ほど言いましたとおり共通の願いであると思いますので、この点でぜひ適切な対応をしていただけますと幸いに思います。どうかよろしくお願いいたします。
 質問をほかにも残しましたけれども、要は、私はこれまで、当委員会で構成要件の中身とかを聞いてきました。これは人権保障の観点から縛りをかける意味でやってきましたけれども、逆方面でやはり不安をあおるような、こういったものについてもしっかりと指摘をしておかなければならないという観点で本日の参考人質疑をさせていただきました。失礼な点があれば申しわけございませんでした。それぞれの参考人の貴重な御意見に感謝をいたします。
 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。



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