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衆法務委で「テロ等準備罪」参考人質疑

衆議院法務委員会で「テロ等準備罪」について参考人質疑を行いました。

下記に公明党の推薦でお越しいただいた井田良参考人(中央大学大学院法務研究科教授)の意見陳述と、国重の質疑全文を掲載いたします。

>> [外部リンク]公明ニュース「テロ等準備罪 “三重の限定”で乱用防ぐ」

↓ 井田参考人意見陳述&国重質疑全文

<井田参考人 意見陳述>

 中央大学教授の井田でございます。
 このたびは意見表明の機会を与えていただき、まことにありがとうございます。

 法案に賛成する立場から、刑法学研究者としての意見を述べさせていただきます。

 今ここで問われておりますのは、日本政府が既に署名し、平成十五年には締結につき国会の承認を与えているTOC条約を批准、締結するための国内法整備のあり方であり、とりわけテロ等準備罪と呼ばれる、犯罪の計画、実行準備段階の行為の処罰が必須であるかどうかということであります。
 この問題を考えるときに重要なことは、なぜ国連においてこの条約が提案、決議され、加盟国に締結、実施すべきことを要請するという事態に至ったのかを理解することであろうかと思います。そして、その理由は、組織犯罪という犯罪現象が国際社会にとり極めて危険なものとなり、国際的な協力による対応を必要とするに至ったからにほかなりません。
 組織犯罪が危険なものになったことの背景には、人類の歴史上、この数十年における時代環境の変化があります。すなわち、まず、高速で容易な場所的移動が可能となりました。そして、相互的な連絡の手段、通信の手段が飛躍的に発達しました。さらに、決定的なことは、人は、簡単な操作で次の瞬間に壊滅的な被害を与えることもできる攻撃手段を比較的容易に手にすることができるようになりました。
 我々の社会は、国家的な監視の目を至るところで光らせるというのではなく、個人個人の自由を基本的には保障する社会でありますから、状況の変化を最大限に利用する組織犯罪集団からの攻撃に対し、極めて脆弱な面を持っています。社会現象と犯罪現象の変化に対応して、刑法という法律も変わらざるを得ません。
 典型的なのは、全世界で共通に起こっている処罰の早期化、前倒しという現象であります。確かに、刑法は、伝統的には、行われたことに対する事後的な反動として刑罰を科す法律です。以前から、予備罪とか陰謀罪とかの処罰を前倒しした、そういう規定はありましたけれども、それは例外的な存在でした。しかし、組織犯罪との関係では、処罰の早期化の方に重点が移ることを避けられません。刑法は、何かが起こってからの処罰、応報的な処罰から、早期における介入による被害の未然防止、すなわち警察等による予防的介入のための根拠を与えるものとしての刑法へという機能転換を伴わざるを得ないのです。
 さすがに、ヨーロッパなどにおいても、テロリスト等の組織的犯罪集団については基本的人権の享有主体であること自体を否定するというような一部の議論に対しては反対が一般的ですが、処罰の早期化なくしては、現代社会において、強く組織化され、高度な技術的手段を用いて大規模な被害を与えようとする組織的犯罪集団に対抗することは不可能だという問題意識は完全に共有されています。そうでなければ、TOC条約が提案され、その締結と実施を各国に要請するという事態にはなっていなかったと思われます。
 現在の組織的犯罪集団は、国境を越えた活動を行うところに一つの特色があります。国際的に共同した取り組みが必要となります。もし日本が共同の取り組みに参加していないということになりますと、外国における薬物犯罪やテロ犯罪の計画準備が、日本では規制を受けずに行われるということになります。まさに国際的な規制の穴、ループホールにほかなりません。それは国際社会にとって甚だ困りものということになります。国際社会にとっての共通の敵と共同に戦おうとする取り組みになぜ日本だけ参加しないのかと問われているとも言えましょう。
 以上のことを前提として、条約批准のための法整備の基本的方向性について論じたいと思います。

 最初に注目すべき重要なポイントは、犯罪の主体の限定です。
 もともと条約が狙いとしている組織的な犯罪集団をピンポイントにつかまえて、間違ってもそれ以外の一般市民の団体行動にまで適用されてしまうような曖昧な規定にしないようにしなければなりません。言いかえれば、組織犯罪対策のための例外的な扱いをきちんと囲い込んで、一般市民に適用される刑法の領域への侵食を食いとめなければなりません。
 法案がとった方法は、現行法である組織的犯罪処罰法が、その適用のために要件としている「団体」を前提として、さらにこれを絞るというものであります。すなわち、現行法が今規制の対象としている団体のうちで、団体の結合関係の基礎としての共同の目的が重大な犯罪を実行するところにある、そういう組織的犯罪集団のみを捕捉しようというのです。
 最高裁判所の判例の中には、当該団体がリゾート会員権の販売等を目的とする会社であるということから、直ちに本法に言う「団体」であるとして本法を適用したものがありますけれども、このような形でテロ等準備罪を適用するための目的要件をクリアすることはできません。なぜなら、団体の結合関係の基礎としての共同の目的が重大な犯罪の実行に向けられていなければならないからです。現実問題として、テロ組織、あるいは暴力団、薬物の密売組織、あるいは振り込め詐欺集団といったもの以外をこれにより捕捉するということはおよそ困難であるように思われます。
 繰り返しますけれども、法案は、犯罪主体を、現行法を前提に、さらにそれを限定しようとするものです。仮にそれが限定として不十分だというのなら、現行の組織的犯罪処罰法の主体要件は、さらにそれ以上に限定として不十分であり、濫用の可能性を持つことになりそうですが、実務上、そのような問題があることは聞いたことがありません。
 現行法の団体要件は、テロ等準備罪が予定する主体要件よりさらに一段緩やかになっているわけですけれども、裁判所による解釈とその運用は安定していて、無限定に用いられているとか濫用のおそれをはらんでいるという批判はおよそ当たらないように思われます。
 以上のように、主体の限定については法案に合格点を上げることができると考えています。

 そうであるとしても、条約が要求しているのは、現行法は単に刑を重くしているだけでありますけれども、法案は、現行法にない計画、準備段階での処罰をかなり幅広く認めるわけですので、新しい犯罪をたくさんつくることにもなりますから、慎重な検討を必要とすることは間違いありません。
 テロ等準備罪として提案されている犯罪について、法案は、今申し上げた主体の限定を前提として、そして計画行為がなされることが必要で、さらに実行準備が行われることを要求するという形での二重の限定を加えました。このような主体の限定を前提としたさらなる二重の縛りというのは、法が適用される実際の場面を考えますと実に高いハードルを設定したものであることがわかります。
 このことを御理解いただくために、既に現行法にあります予備罪について、それを例にとって説明したいと思います。
 予備罪というのは、それぞれの犯罪を実行しようという目的があり、その準備のための外形的な行為があることにより成立します。外形的行為自体は、それ自体として異常性を示す必要はなく、日常的な行為でも足りますから、例えば、ある人を殺す目的で、または、ある人に強盗を働く目的を持ってホームセンター等で包丁を購入すれば、それだけで殺人予備または強盗予備が成立することになりそうです。
 しかし、この規定が、現実に実務において適用される場面について見ると事情は全く異なることがわかります。 現実の法適用の場面では、刑法の規定が予定する目的要件、つまり、殺人予備の場合であれば、殺人を実行する目的があったことを、合理的な疑いを入れない程度の確実性を持って証拠により証明しなければなりません。殺人予備罪の規定の適用を認めるためには、いかに本人がそのことを否認したとしても、それでも殺人目的を持って行動したことに疑う余地がないような、そういう客観的行為がなければなりません。例えば、包丁を買ったというだけでなく、その包丁を持って、深夜、被害者の住居に忍び込んだというような客観的な行為が行われなければ、殺人予備罪の規定の適用は認めることができないわけです。
 かくして、裁判の場における目的要件の立証の可能性という見地からは、予備行為というのは、実行行為に直接つながるような相当に危険性を持った、そういう行為に限定されるということになります。そのことは、犯罪統計を見ても明らかです。殺人予備であっても、年間に認知されている件数はたかだか二十件程度にすぎません。しかも、そのうちのほとんどは、別の殺人等の重大犯罪、あるいは、そういう重大犯罪が本人または共犯者により現実に実行されたときに、たまたまそれに付随して明らかになったケースであります。このようにして、殺人予備罪のような処罰の早期化を図る伝統的な規定も、目的要件による縛りが強く影響して、実務においては相当の限定がかかっています。

 それでは、テロ等準備罪として検討されている犯罪についてはどうでしょうか。
 たった一人で頭の中で実行目的を抱いているという予備罪の場合には、外から内心のあり方を知ることはできませんが、しかし、計画行為であれば、組織的犯罪集団の構成員らが一定の重大な犯罪実行について具体的かつ現実的に相談して決意を固めるというのが内容ですので、犯罪的な意思が表にあらわれることになり、より早い段階で捜査機関がそれと認知することは可能になると言えましょう。
 ただ、ここでも、今予備罪について申し上げたことと基本的には同じことが当てはまります。組織としての犯罪的決意が固まったことが疑いを入れない程度の確実性を持って証拠により証明されなければなりませんから、仮に関係者が口をそろえて否認しても、それが説得力を持たないような、そういう外形的な状況がぜひとも必要となります。実際問題としては、何らかの実行準備行為が既に行われていることとあわせて、計画そのものが逆に立証されるというのがほとんどの場合であると言えましょう。
 このように、実は、計画行為だけであっても相当に高いハードルではあるのですが、法案はさらに、第二の限定として、実行準備行為の要件を明文化しました。これは、規定が誤った方向で運用されないようにする、そういう趣旨を明確化するものであって、妥当なものであったと思われます。
 ちなみに、アメリカ合衆国のコンスピラシー罪で要求されることがあるオーバートアクトよりも、今回提案されている「計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為」という例示を含む規定の仕方は、より明確であり、立法論としてよりベターなものだというふうに考えられます。
 いずれにしましても、このように、犯罪の訴追立証のハードルはかなり高いわけです。単なる思想ないし悪い意思を処罰するという批判は、法案には当たりません。

 以上のように、主体の限定に加えて、計画行為プラス実行準備行為という犯罪要件の二重の限定、あわせますと三重の限定がかかっているわけで、我が国の法体系において見たときには、相当に輪郭の絞られた犯罪になると思われます。法案の規定をごらんになるときに、そこには三重の限定が施されていること、その結果として、我が国の実務における法適用の場面においては立証のハードルは相当に高いものとなるであろうことを御理解いただきたいと思います。
 そうであるからこそ、テロ等準備罪の規定は頻繁に適用される規定にはならないであろうことも事実です。今の予備罪や陰謀罪と同様に、まれにしか適用されないであろうと想像されます。しかし、それは、捜査機関による濫用が危惧されるようなハードルの低いものではなく、その正反対のものであるからです。
 そうはいっても、オウム事件のような事件の可能性は常に存在しますし、外国の諸機関からの情報提供を受けて、日本国内でテロ行為の準備がされているということが日本の捜査機関に知られることになるといった可能性もないとは言えません。テロの問題を離れても、振り込め詐欺等の特殊詐欺の対策というものも、これにより可能になる場面が想定できると思われます。

 条約との関係についても述べたいと思います。
 TOC条約は、かなり大幅な処罰の早期化を各国に要請しています。そこで、どこまで条約に沿った形での法整備を行うかが問題となります。私の考え方を端的に申し上げれば、条約は、これを批准することによって現行法体系の一部になるのですから、これを通常の法解釈の方法に従って解釈して、それで説明がつく限りの法整備を行うべきだと思います。
 条約は、長期四年以上の自由刑を科し得る犯罪を重大犯罪とし、二人以上の者がそれを行うことを合意することを処罰の対象とすべきことを求めています。しかし、長期四年以上の自由刑を科し得る犯罪の中にも、およそ組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的には想定されないものもありますので、対象犯罪を限定するということは条約の解釈として許されるところであろうと思います。
 法案は、このような見地から、対象犯罪の数をかなり限定したものと理解しています。結論として、私は、それが特に広過ぎるという感じを持っておりません。

 最後に、法案のその他の内容についても簡単に触れたいと思います。
 テロ等準備罪を新設したことのほか、マネーロンダリング罪の前提犯罪を拡大して犯罪収益規制を強化したこと、贈賄罪について国民の国外犯の処罰を可能としたこと、証人等買収罪の規定を新設したことなども組織犯罪に対する有効な対応を可能にするものでしょう。
 特に私が注目するのは、提案されている証人等買収罪です。幾ら刑罰法規を整備しても、裁判を含めた司法活動を妨害する行為が行われて犯罪の立件、処罰が不可能になれば、刑罰法規はまさに絵に描いた餅になります。現行刑法の規定は、この点において相当に不備でありますけれども、法案に見られる対応により、そうした司法妨害行為に対処することが可能となります。
 今回の法案は、確かに、条約批准のための国内法整備のためのものであると言われていますけれども、このように、法案が組織犯罪に対する総合的な対策を用意するものであることも高く評価に値すると考えます。

 以上です。御清聴ありがとうございました。


<質疑>

○國重委員
 おはようございます。公明党の國重徹でございます。
 本日は、何かと御多用な中、五名の参考人の皆様に当委員会にお越しいただきまして、それぞれの貴重な御意見を賜りましたことを、心より感謝と御礼を申し上げます。二十分という限られた時間でございますので、もしかして参考人の皆様の中で質問を当てられない場合もあるかもしれませんけれども、どうか御理解、御容赦のほど、よろしくお願いいたします。
 早速質問に入らせていただきます。
 テロを含む組織犯罪を未然に防止する、そのために、国際協力、連帯、これをしっかりと進めていく、そのためのTOC条約、国際協力を進めていくためのTOC条約の締結、この早期締結の必要性、私も、五名の参考人の皆様とこれは同じ思いでございます。
 その上で、きょうは、ウィーンの日本政府代表部で大使をされていた小澤参考人にお越しいただいておりますので、現場の生々しい声というか、この委員会がコップの中の議論であってはならない、世界の中でどう見られているのかというようなことを具体的にお伺いしたいと思います。
 先ほど、意見陳述の中で小澤参考人は、日本の常駐代表として、二〇一二年の十月にウィーンで開催された第六回TOC条約締結会合に参加されたということでお伺いしました。その中で、その当時は百七十何カ国でしたか、締結がもう既にされていたんだと。世界のミニマムスタンダードであるこの条約を締結できないことについて、国内法の整備ができていない、このことを各国の政府関係者に説明をしたんだけれども、なかなか理解されなかったという旨のお話があったかと思います。
 そのときに、各国の政府関係者からどのようなことを小澤参考人は言われたのか、できるだけ具体的に教えていただきたいと思います。

○小澤参考人
 ありがとうございます。
 締約国会合、二〇一二年十月時点で百七十二カ国がこの締約国でありました。日本は、署名国として、ほかの署名国同様、最後列に座ります。その締約国会合の公式の場でどうこうという議論はございません。そもそも、署名国として非常に肩身の狭い思いをしているんですが、会合が始まる前に議長が私どもが座っているところに来て、ちょうど私とイランの常駐代表が並んで座っておりましたけれども、悪いやつが二人いる、私に向かってはあなたは財政問題について、イランに向かってはあなたはその他の問題全てについて悪い国だというような冗談を言ったりしたことがございます。
 また、この会合の場ではないんですが、そういう会合を経ていろいろな常駐代表たちと話し合う機会があるんですけれども、時折、なぜ日本は後ろに座ったままなのかということが話題になることがあるんです。そういうときに、日本の国内の状況、日本国内で行われている議論というものも説明しつつお話をするんですけれども、冒頭申し上げたように、その中身については全く理解されないでいる。ただ、日本の政治情勢については一定の理解はされる、こんなことでございました。
 中には悪い冗談を言う常駐代表もいて、日本はやくざが強いからではないかという、とんでもないことを茶化して言う人もおりました。
 犯罪防止について、日本は安心、安全ということを誇りにしている国だと思うんですけれども、世界レベルで見ると、非常に基礎的な、とても各国が重視している条約に入っていない国だ、何でなんだろうという点についての理解というのは全くないということを御説明いたします。

○國重委員
 今、小澤参考人から具体的なお話をるる述べていただきました。ありがとうございました。よくわかりました。
 次に、具体的な法案の中身に入ってまいりたいと思います。
 井田参考人にお伺いをいたします。
 まず、十年以上前に、いわゆる共謀罪、これは廃案になりましたけれども、これが国会に提出される前に、法制審、法制審議会があったかと思います。井田参考人はそのメンバーだったかどうか、まずお伺いします。端的にお願いします。

○井田参考人
 私、委員ではありません。幹事でありました。幹事として参加しておりました。幹事というのは、発言権はあるんですけれども、議決権がないということです。

○國重委員
 正確にお話しいただきました。幹事として参加をしていたということでございました。
 先ほど井田参考人は、今回の法案で最も重要なポイントというのは犯罪主体の限定なんだというようなことで言われました。
 これは、従前の共謀罪、法制審で議論されていた共謀罪においても、広くこの主体を一般人を対象にするのではなくて、組織的犯罪処罰法の団体ということにしていたわけですね。これについてはTOC条約の二条の(c)に書かれてあるんですけれども、ここで言われている「「組織された集団」とは、」云々ということで、「その構成員について正式に定められた役割、その構成員の継続性又は発達した構造を有しなくてもよい。」というふうに書かれていまして、これは最低ラインを書いているんでしょうけれども、組織的犯罪処罰法の団体というのはこれより厳格化されているというふうに私も認識、理解します。
 その法制審の議論において、こういった団体、今回は組織的犯罪集団ということでより限定しておりますけれども、その以前の団体においても、非常にこれは主体として厳格な要件であったからこそさまざま議論があって、実行準備行為、TOC条約でオプションとして採用することができる実行準備行為を団体概念との関係でとらなかったかと思うんですけれども、この実行準備行為をなぜとらなかったのか、団体概念との関係で述べるところがあればぜひ教えていただきたいと思います。

○井田参考人
 私は、先ほど申し上げたように幹事という立場でありまして、審議会全体がどういうふうな意見であったかということについては、私が言う権限といいますか、あれはない。私の個人的な当時の思いといいますか考えを、所見といいますか、述べさせていただきたいと思います。
 おっしゃるように、さっき申し上げたように主体による縛りというのはなかったわけですけれども、当時の案では、いわゆる団体性の要件、組織性の要件というような形でもって、そこでもやはり二つの観点から、団体性と組織性という観点から、要するに団体の活動として行われなければいけないんだということ、また、一定の組織というように行われなければいけないんだという形でもって、団体性と組織性という形で縛りがあったわけであります。
 先ほども私、意見表明の中でもるる申し上げたところなんですけれども、今言ったような意味での共謀ですけれども、共謀というのは、決してぽつんとそれがあるということではありませんで、単にぽつんと合意の関係がそこに認められればよいというのではなくて、現在の予備罪においても全くそのように考えられていますけれども、裁判の場においてきちっとそのことが立証できる、合理的疑いを入れない程度に立証できるということはなければいけませんので、予備罪であれば、予備行為の場合であれば、それはかなり実行に直接つながるような危険な行為が要求されるということになってきます。
 また、共謀罪の場合であれば、それは共謀があったということを関係者がみんな否認しても、それでも認定できるような状況、外的な状況がなければなりませんので、恐らくは何らかの実行準備行為なんかも当然なければならないだろうし、何と言いますか、全く真空のところでそういう共謀罪がぽこんとあるものではないというふうに考えるとすると、一定の外形的な実行準備行為のようなもの、そういうようないろいろな状況から見て、関係者が全員口をそろえて否認はしているけれども、間違いなく共謀があったんだという形でもって立証されていくのが現実であるだろうというふうに考えました。
 ですから、組織性とさっき申し上げた団体性の要件、そして現実の場における立証ということを考えれば、決してハードルはそんなに低いものではありませんで、今回確かに趣旨を明確にしたということでありますけれども、以前のものも、そんな、決して非常に低いハードルのものではなかった。
 もう一個、傍証を申し上げると、現行法に陰謀罪という規定があります。陰謀罪というのは、確かに犯罪の相談をして、合意をすれば陰謀が成立するんですけれども、しかし、数少ない裁判例を見てみますと、やはり実行に直近するような、実行に近づいた段階での非常に危険な外形的な状況というのはやはり裁判で要求しているんですね。やはりそれがないと陰謀そのものを立証できないからだというふうに考えているわけです。
 そういう意味で、従来の共謀罪の規定というのも、私は、少なくともそういう意味でかなりハードルの高い、ブレーキのかかったものだということで、基本的には賛成の気持ちであったということでございます。

○國重委員
 ありがとうございました。
 その上で、今回の本法案については、組織的犯罪処罰法がその適用のための要件としている団体を前提として、そうした団体のうちで、団体の結合関係の基礎としての共同の目的が重大な犯罪を実行することにある、そういった組織的犯罪集団に限定をしているということになるわけでございます。
 確かに刑法の原則としては、実行の着手があって処罰をする、これは原則なんだろうと。今回は、それより前の段階の計画プラス実行準備段階で処罰の対象にするので、刑法を大転換するとかいうようなことで、広く二百七十七の罪を対象とするのはちょっと行き過ぎじゃないかというような批判、主張がございますけれども、私はこれは、予備罪、一般の予備罪とかであれば広く一般人を対象にしているわけですね。でも、今回は、主体を組織的犯罪集団ということで法文上明確に限定をしているという観点からすれば、私は、確かに、刑法の実行の着手というところからすれば、原則の実行の着手ということからすれば、それは確かに変容しているところはある。でも、先ほど井田参考人もおっしゃったように、今の時代情勢とかさまざま考えた場合には、やはり処罰の早期化というのも組織的犯罪集団、組織犯罪に関しては必要なんじゃないか。
 そういうことをいろいろ勘案すると、私は、刑法の転換といっても、これは極めて影響は限定的に限られるんじゃないかというふうに思いますけれども、その御意見を聞きたいと思います。

○井田参考人
 今もう先生が全ておっしゃってくださったことにつけ加えることは特にございませんけれども、おっしゃるように、従来の刑法の中にも、例外的な存在ではありますけれども、予備罪、陰謀罪等々、早目の処罰を認める規定はあったわけです。その濃淡、色の違いというんでしょうか、今、やはり組織犯罪となると、その処罰の早期化の分クローズアップされてくるというだけのもので、何か全く違ったものが登場するとか原則を覆すということではないというのが私の認識です。
 それからもう一つ、大事なことは、やはり、そのいわば例外的な処罰の早期化というのを、いかに多方面に侵食していかないように範囲を限定していくかということが大事で、今回の法案は、さっき申し上げた主体の限定を前提として、二つの、さらに二重の限定、三重の限定によって、その囲い込みというのには基本的には成功しているのではないかというのが私の意見でございます。

○國重委員
 ありがとうございました。
 今回の本法案は、従前の共謀罪に比べて、主体を組織的犯罪集団に限定する、計画だけではなくて実行準備行為もつけ加える、さらには、対象犯罪、これは六百七十七ありましたけれども、これは組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定される行為、犯罪のみに限定をするということで、これを二百七十七まで減らしたということでございます。今後、この対象犯罪についていろいろ審議があるかもしれませんけれども、これは鋭意審議していけばいいかと思いますけれども、このように大分縛りをかけていっているという私の認識でございます。
 先ほど、小林よしのり参考人が、物言う市民が萎縮して民主主義が機能しなくなるんじゃないか、こういう趣旨のことをおっしゃいました。それで、権力に対して物を言うということを言われましたけれども、私はまさにそういう人が必要だと思います。ですので、そういう社会にならないように、私どもの使命としては、しっかりとこの構成要件の中身を一つ一つ、その内容、適用範囲、これをきちっと明確にして、拡大解釈されないような、濫用されないようなことにしていくことが私はみずからの責任だと思っております。
 そういった点で、次に髙山参考人にお伺いしたいんですけれども、髙山参考人に行って井田参考人にもしかして返すかもしれませんので、ちょっと準備だけしておいていただきたいですけれども。
 髙山参考人のいろいろ資料も少し事前に読ませていただきました。きょうもお話を聞かせていただきました。
 二〇一七年の二月一日、ことしの二月一日に、共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明というのが出されております。髙山参考人もその中心者のお一人であると思いますけれども、その中で、「「立法ガイド」第五十一項は、もともと共謀罪や参加罪の概念を持っていなかった国が、それらを導入せずに、組織犯罪集団に対して有効な措置を講ずることも条約上認められるとしています。」ということを言われています。
 まず結論だけ聞きたいんですけれども、先ほどの意見陳述を聞くと、今でもその見解を維持されているという理解を私はしたんですけれども、これを今なお維持されているということなのかそうでないのか、結論だけお願いします。

○髙山参考人
 維持しております。

○國重委員
 維持されているということでございました。
 これが、維持しているのであれば、国内の担保法は不要じゃないかということになるんでしょうけれども、先日、本年の四月十一日に、国連の薬物犯罪事務所、UNODC事務局から口上書の回答が来たんですね。これは、その前に日本政府がこのUNODCに対して口上書で照会をかけたわけですけれども、その中に何と書いているか。
 立法ガイドのパラグラフ五十一のところの意味についてここで明確にしてあるわけですけれども、締結国は共謀か犯罪の結社の二つのオプションのいずれかを選ぶことができるが、本規定の本質が義務的であることに変わりはない、すなわち、締結国は共謀のオプションまたは犯罪の結社のオプションのいずれかを選択しなければならない、また、締結国は両方のオプションを選ぶこともできると云々、これが二〇〇四年の国際組織犯罪防止条約及び補足議定書の実施のための立法ガイドのパラグラフ五十一の背景にある意味であるということで言っておるわけであって、私は、もはやこれは明確に、口頭だけではなくて文書でこのようなものが届いた以上は、やはり国内担保法は必要なんだ、だから、次の段階でしっかりと、この国内担保法の中身を議論していく段階で、鋭意この中身を真剣に議論すべきだというふうに思っております。
 これについて、井田参考人、どのようにお考えでしょうか。

○井田参考人
 私も国連の薬物犯罪事務所の口上書のことは若干存じ上げていますけれども、この場所というのはTOC条約の解釈に関する公式見解を表明する場所だというふうに承知しています。そういうところでもって、この立法ガイド、問題になっているパラグラフの五十一について、かなり明確な解釈指針といいますか、解釈の仕方についての意見が出されたというのは、かなり私は決定的なことなのではないかというふうに考えております。
 それとまた別で、私も意見表明の中で申し上げましたけれども、条約を締結しますと国内法の一部になるわけなので、ここにこう書いてあって、こっちにこう書いてあって、矛盾しているよというようなことがあっては、やはりこれは法治国家としてはよろしくないということも申し添えたいと思います。

○國重委員
 ありがとうございました。
 最後に、早川参考人に端的にお伺いしたいと思います。
 早川参考人、私は議員としても弁護士としても大先輩に当たる方でございます。ブログの方も昨日読ませていただきました。
 その中で、非常に我が党に対しても評価をしていただいております。水面下で公明党が相当頑張ったんだろうというようなことで書かれております。本当に、その評価に感謝をいたします。その中で、きょうは配慮規定と留意事項について触れていただきました。私、配慮規定とか留意事項というのは、これは法的効果としては実効的な意味は余りないかもしれないけれども、政治的な意味合いとか、国民の不安を払拭するとか、そういう観点での確認規定というか、そういうものだと思いますけれども、当時これを、配慮規定とか留意事項というのを法的効果と関係なくここに入れた思いについて最後語っていただいて、私の質問を終わります。

○早川参考人
 確かに、附帯決議とかあるいは通達等でいろいろ書くという手法もあることはあるんですけれども、大事なことは、やはり、国会で議論をした、その議論をした中身を法律の中に書くことによって、逆に言うと、運用の段階で、当然、行政庁を拘束させ、さらには裁判所を拘束させる。そういう意味で、配慮事項で、逆に言うと法律の趣旨というのが極めて明確になる。憲法に定められたさまざまな権利を侵害するようなものにならないようにみんなでチェックしましょう、こういうことになりますので、どうしても配慮規定とか留意事項は必要だろうと思っております。

○國重委員
 ありがとうございました。
 二十分というと非常に短い時間で、もっと深掘りして聞きたかったわけでありますけれども、きょういただきました御意見、意見陳述でもかなり詳細に言っていただきましたので、しっかりと、それを受けまして、今後の審議に生かしてまいりたいと思います。ありがとうございました。



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