活動報告

国会質疑

衆法務委・一般質疑で「テロ等準備罪」について質問

衆議院法務委員会における一般質疑で、「テロ等準備罪」について質問を行いました。

>> [外部リンク]公明ニュース「“監視社会”は非現実的 衆院法務委で国重氏」

↓ 質疑全文

○國重委員
 おはようございます。公明党の國重徹でございます。
 国会において与野党ともに共通した貴重な資源、これはいろいろあると思いますけれども、その大きな一つが私は時間だというふうに思っております。しかも、この質疑時間に関しましては、我々与党は野党の皆様に比べて時間がどうしても短くならざるを得ないということがありますので、その時間を無駄にすることなく有効に活用してまいりたいというふうに思います。
そこで、きょうは、一般質疑ではありますけれども、いわゆるテロ等準備罪を創設する組織的犯罪処罰法の改正案について質疑をさせていただきたいと思います。
 先ほど今野委員から、いわゆるTOC条約に関する質疑がありました。私の方からは、本法案の構成要件、その中でもテロ等準備罪の主体である組織的犯罪集団に関してお伺いしてまいりたいと思います。
 かつてのいわゆる共謀罪は主体を団体にしておりましたが、本法案では、主体を結合の目的が重大な犯罪を実行する団体である組織的犯罪集団に法文で明確に限定しております。本法案に対する先日の私の本会議の質問におきまして、一般の民間団体、労働組合などはその対象に当たらない、さらには、自然環境や景観の保護など正当な主義主張をアピールするためにその手段として座り込みを行うことを計画しただけの団体も、重大な犯罪を実行することを結合の目的としていない以上、その対象に当たらないと金田大臣に答弁をいただきまして、このことを明確にさせていただきました。
 では、林刑事局長にお伺いいたします。
 一般の事業を営んでいる会社が毎年脱税を繰り返していたような場合、この会社は組織的犯罪集団に当たるのかどうか、答弁を求めます。

○林政府参考人
 お答えする前提といたしまして、まず組織的犯罪集団の定義でございますが、これは組織的犯罪処罰法の二条と六条の二で定義されることになります。
 この組織的犯罪集団とは、組織的犯罪処罰法上の「団体」、すなわち「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織により反復して行われる」、こういったもののうちで、構成員の継続的な結合関係の基礎となっている共同の目的が改正後の組織的犯罪処罰法の別表第三に掲げる一定の重大な犯罪等を実行することにあるもの、これをいうことになります。
 したがいまして、国内外の犯罪情勢を考慮いたしますと、条文に例示しておりますテロリズム集団のほか、暴力団でありますとか薬物密売組織など、違法目的、違法行為を目的とする団体ということに限られることになります。
 そこで、御質問のところでございますが、あくまで一般論として申し上げれば、正当な事業活動を行っている一般の会社につきましては、通常、結合関係の基礎としての共同の目的、それは犯罪を実行することにあるとは認められませんので、御指摘のように、毎年脱税を繰り返しているというだけで組織的犯罪集団に当たるということはないと考えられます。

○國重委員
 一般論として、一般の生業を営んでいるような会社が毎年脱税を繰り返していたとしても、組織的な犯罪集団には通常当たらないという答弁でございました。
 一方で、政府の見解として、もともと正当な活動を行っていた団体についても、団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められる場合には組織的犯罪集団に当たり得るという旨、政府は繰り返し答弁をされております。
 これに対して、一般の方たちも処罰対象になるんじゃないかとか監視の対象になるんじゃないか、こういった批判の声、また主張が出ております。一部報道もそうですし、民進党の議員の先生方の中にも、そのようなことをおっしゃる方がいたようにお見受けいたします。
 ただ、平成十八年の第百六十四回の通常国会におきまして、当時の民主党は主体を組織的犯罪集団とする独自の修正案を出されておりまして、その修正案提案者は、次のようなことを言っているんですね。何と言っているか。
 「団体が当初正当な目的で結成されたとしても、その団体の性質が一変して、その主たる活動が重大な犯罪等を実行することにある団体ということになれば、共謀罪の適用対象とされる」。このように、「一変して」という言葉を使って、正当な団体の性質が一変した場合には共謀罪の対象になる、このように国会で答弁、説明されているわけでございます。
 当時の民主党修正案は、一般市民が対象になることを想定していたのか。よもや、一般市民を対象にしようとは思っていなかったと私は推察をいたします。
 これ以上、この点についてとやかく私は言うつもりはありませんけれども、ここにいらっしゃる見識ある委員の皆様、理事の皆様と、この法務委員会で、私はぜひ建設的な議論をやっていきたいと思っております。
 そこで、盛山法務副大臣にお伺いいたします。一変というのは、どのように判断するんでしょうか。

○盛山副大臣
 國重委員の御質問でございますけれども、一般論としてのお答えになりますが、具体的な事案が起こった場合におきまして、ある団体が組織的犯罪集団に該当するか否かは、当該団体の活動実態等を総合的に考慮し、当該事案の時点において、構成員の結合目的が犯罪を実行することにあるか否かにより判断することになると考えております。

○國重委員
 今、盛山副大臣から御答弁をいただきました。
 つまり、一変したということで、変化のプロセス、ここに着目するのではなくて、犯罪の成否が問題とされる当該事案の時点で、組織的犯罪集団に当たるかどうか、この判断をするということなんだと。プロセスではなくて、結果を重視しているんだというような旨の答弁をいただいたと思います。
 では、当該事案の時点で、組織的犯罪集団に当たるかどうかを判断する際に、かつて正当な目的で活動していたということは、その判断においていかなる意味を持つのか、これにつきまして、林刑事局長にお伺いいたします。

○林政府参考人
 副大臣が答弁しましたとおり、ある団体が組織的犯罪集団に該当するかどうか、それが当該事案の時点で判断されることになるわけでございますが、その場合の結合関係の基礎としての共同の目的が何であるかということについては、個別事案の事実認定の問題でございます。
 それで、その場合には、例えば、その当該団体が標榜している目的でありますとか、構成員らの主張する目的によってではなくて、継続的な結合体全体の活動実態等から見て、客観的に何が構成員の継続的な結合関係の基礎となっているかが、社会通念に従って認定されるものと考えております。
 もっとも、その団体が以前に正当な活動を行っていたということが認められる場合には、なお、その場合にも、結合関係の基礎としての共同の目的が犯罪を実行することにあるかどうかを検討する上で、その団体が有していた正当な目的の活動の実態なども踏まえまして、より慎重な認定が必要となると考えられます。
 そういった意味で、ある団体が過去に正当な活動を行っていたという事実、これは、当該団体が組織的犯罪集団であるという認定をする上で、有力な消極的な事情になろうかと考えます。

○國重委員
 ありがとうございました。今、林刑事局長から答弁をいただきましたけれども、かつて正当な目的で活動していたということは、組織的犯罪集団に当たるかどうかを判断する、また認定するに当たって、有力な消極的事情になるんだと、マイナス事情になるんだという答弁をいただきました。
 それでは、そのような有力な消極的事情がある場合でもなお組織的犯罪集団に当たるというのはどのような場合なのか、林刑事局長にお伺いいたします。

○林政府参考人
 一般的に申し上げれば、当該事案の時点において、構成員の結合の目的が犯罪を実行することにあると判断するためには、例えば、団体の意思決定に基づいて、それまでに犯罪行為を反復継続するようになっている、こういった事情が認められる。こういったような事情が認められない限り、組織的犯罪集団と認められないのが通常であろうかと考えております。

○國重委員
 今、犯罪を反復継続しているような場合ということが例示として挙げられたかと思います。
 それでは、さらに、林刑事局長、反復継続していれば必ずこの組織的犯罪集団に当たるのかどうか、これに関してお伺いをいたします。

○林政府参考人
 ただいま、団体の意思決定に基づいて犯罪行為を反復継続しているようになっているということを申し上げましたが、これ自体が組織的犯罪集団と認めるための要件ではございません。
 したがいまして、団体の意思決定に基づいて犯罪行為を反復継続するようになったとしても、そのことだけで常に当該団体が組織的犯罪集団と認められるものではありません。
 すなわち、組織的犯罪集団と認めるためには、まずはその団体の結合関係の基礎としての共同の目的が犯罪の実行にあると認められること、このことのほかに、団体とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体でありまして、その目的または意思を実現する行為の全部またはその一部が組織により反復して行われるものということでございますので、共同の目的、すなわち犯罪の実行を実現する行為が組織により反復されるという性質を備えることが必要となってまいります。
 その意味におきまして、やはり、その団体の意思決定に基づいて犯罪行為が反復継続されているという事実については、これは組織的犯罪集団と認めるための有力な考慮要素であろうと考えます。しかし、それだけで当該団体が組織的犯罪集団と認められるものではなくて、やはりこれは、委員、冒頭、会社の例で質問されましたけれども、通常の営利活動を行っている会社において、会社の活動として反復継続して脱税を行っていたといたしましても、そのことで、当該会社の結合関係の基礎が、その共同の目的が脱税、すなわち犯罪の実行となるわけではございませんので、それだけで組織的犯罪集団と認められるものではございません。

○國重委員
 ありがとうございました。
 今、組織的犯罪集団を認定するに当たっての有力な消極的な事情、また積極的な事情、こういったものを絡めて御答弁をいただきました。
 では、次の質問に移ります。
 テロ等準備罪の捜査の端緒をつかむためには、捜査機関が常時監視していないとできないじゃないか、だから監視社会になる、一億総監視社会をつくりかねない、危険きわまりない法案だというような批判、主張がございます。
 一億総監視社会にするためには一体どれだけのマンパワー、コストがかかるのか。本法案、また現行法によってもそのようなことができるわけがない。余りにも私は非現実的で荒唐無稽な批判だと思っております。
 そこで、林刑事局長、実際には、実務上、どのようにしてテロ等準備罪の捜査の端緒をつかむことができると考えられているのか、答弁を求めます。

○林政府参考人
 今回の法案につきましては、捜査手法というものについて新たに定めるものでは全くございません。したがいまして、テロ等準備罪についても、他に多く、ひそかに行われる犯罪、密行的に行われる犯罪というのがございますが、その犯罪の場合と同様の方法で捜査の端緒を得るということになると考えられます。
 例えば、実際に行われた別の犯罪の捜査の過程で、計画についての供述でありますとか、あるいは犯行手順が記載されたメモのような証拠が得られることがございます。こういったことが端緒になったり、あるいは、計画に参加した者の自首、計画の状況を聞いた者からの情報提供、こういったようなことから、計画行為や、あるいはそれに続く実行準備行為の存在というものが明らかになり、テロ等準備罪の捜査の端緒が得られる、こういったことが想定されるところでございます。

○國重委員
 ありがとうございました。
 何か盗聴等をずっとやっていて、常時監視して捜査の端緒をつかむというのではなくて、別の事件の犯罪の捜査等からそのような捜査の端緒をつかんでいくというような答弁をいただきました。
 そして、そのような捜査の端緒に基づいてテロ等準備罪の嫌疑が生じたと認められた、その後にテロ等準備罪の捜査が開始される、これで間違いないかどうか、林刑事局長にお伺いいたします。

○林政府参考人
 委員御指摘のとおり、このテロ等準備罪につきましても他の犯罪の捜査と同様でございまして、捜査機関が犯罪の嫌疑があると認めた場合に、初めて捜査を開始することとなります。例えば、特定の団体について、テロ等準備罪の嫌疑が生ずる以前から同罪の捜査の対象となることはございません。
 組織的犯罪集団というものが今回新たに定義されておりますが、これはテロ等準備罪の要件の一つでございまして、組織的犯罪集団であること自体が犯罪であるわけではございませんので、テロ等準備罪の嫌疑が生じていない段階で、ある団体が組織的犯罪集団になるか否か、こういったことが捜査の対象となることはないと考えております。

○國重委員
 ありがとうございました。
 つまり、捜査の端緒をつかむという点において、常時監視するということはない、一億総監視社会になるなどということはないということを申し上げまして、本日の私の質問を終わります。
 ありがとうございました。

 
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